
役員報酬は業績に合わせて下げるべきか、据え置くべきか。会計のプロが語った「純資産」を軸にした判断基準と、銀行が役員報酬の増減から読み取っていることを、M&A CAMPの動画をもとに整理しました。
※本記事は、M&A CAMPで公開した動画・記事の内容をもとに編集部で整理したものです(2026年9月時点)。税務・会計の個別の判断は、顧問税理士にご確認ください。
役員報酬を上げるか、据え置くか、下げるか。多くの経営者が毎期悩むこのテーマについて、M&A CAMPに出演した会計のプロ・森尾氏の答えは一貫して「純資産次第」でした。
役員報酬を判断する軸は、今期の利益ではなく「会社にどれだけ純資産が積み上がっているか」です。
純資産の目標額(たとえば5,000万円、1億円)を先に決め、そこに届くまでは会社に利益を残す。届いたら個人側に資産を移していく。この順番で考えると、報酬額の迷いは大きく減ります。
意外に知られていないのが、銀行員が役員報酬の変化を経営者のメッセージとして受け取っているという点です。森尾氏は動画の中で次のように説明しています。
「役員報酬が前年より下がっていれば、今期は厳しいんだなと一発で分かる。社長が何かネガティブな要因を抱えているサインに見えます」
業績への不安から報酬を下げた会社が、同時に「来期は売上を伸ばします」という計画を出しても、説得力が弱くなってしまいます。
純資産が十分でない段階で役員報酬を小刻みに下げると、銀行には「社長自身が先行きに自信を持てていない」と映りやすい。
もちろん資金繰りが本当に厳しいときは別です。ただ、「なんとなく不安だから少し下げておく」という判断は、節約できる金額に比べて失う信用のほうが大きくなりがちです。
役員報酬と赤字の関係も、純資産の規模によって評価が変わります。
つまり、銀行が見ているのは赤字の金額そのものより「赤字を吸収できる体力」です。役員報酬をしっかり取ってよいかどうかは、この体力で決まります。
赤字の決算書をどう組み立てるかについては、1000万円の赤字でも銀行融資は通る。会計のプロが語る「繰延資産」活用と決算書の作り方で詳しく語られています。
会社から社長個人への貸付(役員貸付金)は、一般に銀行の印象が悪いと言われます。ただしこれも一律ではありません。
注意したいのは「役員報酬を下げながら、役員貸付金が増えていく」組み合わせです。報酬を減らした分を会社から借りているように見え、決算書全体の信頼を損ねます。
純資産の目標に届いた後は、「どこに資産を持つか」が次のテーマになります。森尾氏は、事業会社の株式や運用資産を個人で直接持つより、資産管理会社を間に置く考え方を紹介しています。
資産管理会社で投資をする場合は、銀行から借りた運転資金を投資に回すと資金使途の問題になりうる点にも注意が必要です。具体的な設計は「社長の給与ダウンは銀行から嫌われる」会計のプロが語る役員報酬・資産管理会社・キャッシュリッチ経営の正解と、ホールディングス経営×不動産投資の「お金の動かし方」で掘り下げています。
純資産に余裕があるなら、据え置いて事業に集中するほうが評価されるケースがあります。純資産が薄く資金繰りが厳しい場合は、下げる判断も必要です。どちらの場合も、赤字の中身(売上減なのか、先行投資なのか)を説明できることが大切です。
法人税の計算上、役員報酬は原則として事業年度の開始から一定期間内に決めた金額を毎月同額で支払う必要があり、期中の変更には制約があります。変更を検討する際は、事前に顧問税理士に確認してください。
森尾氏によると、銀行員が経営者を評価するポイントのひとつは「半年先の預金残高を社長が答えられるか」です。売上・利益・毎月の返済・投資の4つを押さえておくと、資金繰りの見通しを語れるようになります。