AIや ChatGPT の活用が企業経営に与えるインパクトは年々大きくなっている。ゴールドマン・サックスの調査では「2/3の仕事が自動化される可能性」が指摘されるほどだ。AI活用支援を手がける新社(シンシャ)代表の國本氏が、経営者がAI時代を生き抜くために身につけるべき「指示力」と、これからの組織・人材戦略について語る。
AIやChatGPTの登場により、企業経営の前提が大きく変わりつつあります。マーケティングの外注費が99%削減されたり、人材紹介で10万人規模のマッチングが一瞬で完了したり——これまで人手で行ってきた業務がAIに置き換わり始めています。
本記事では、AI活用支援を手がける新社(シンシャ)代表でSAPやAIスタートアップでの経験を持つ國本(チェルシー)氏に、経営者がAI・ChatGPTをどう経営に取り込むべきかを伺いました。
ゴールドマン・サックスの調査では、今後2/3の仕事がAIによって自動化される可能性があると言われています。3人いれば2人は影響を受ける計算で、誰もがAIを使うのが当たり前の世の中になりつつあります。
この変化のインパクトはすでに現れており、大手企業はもちろん中小企業でも、生成AIやChatGPTの導入が進んでいます。マーケティング領域では外注費の大半をAIで代替できるケースも出てきており、プレスリリースやキャッチコピー、広告画像の生成までAIで完結できるようになっています。
國本氏は「2〜3年後にはもう、取り返せないぐらいの差がついている」と指摘します。日本企業のうちAIを実際に活用できているのは中小企業全体の10%程度にとどまり、なかには「使うな」と禁止している企業もあるのが現状です。それでも「今からでも遅くない、今日から始めるべき」というのが國本氏のメッセージです。
AIの活用効果がはっきり見えているのがメディア業界と人材紹介業です。あるメディア企業の事例では、ライターを10人雇っていたものの、AIを使えば1人で十分という判断に至ったといいます。業務委託であれば調整も比較的容易ですが、正社員の場合は配置転換や評価の見直しなど、組織側の対応が必要になります。
人材紹介業界では、マッチング精度の向上が顕著です。10万人規模のプール人材から条件に合う候補者を抽出する作業が、AIを使えば一瞬で完了します。これまで難しかった「文脈の理解」も、自然言語処理の精度向上によって解決しつつあります。
たとえば「YouTubeの動画編集者を経営者向け案件にアサインしたい」といった文脈を、以前のシステムは正確に拾えず、単に「経営者」というキーワードで関係のない人材を引っ張ってくることがありました。生成AIはそうした文脈を理解した上で、マッチングだけでなく社内向けのまとめと顧客向けの推薦文という、出力の出し分けまで担えるようになっています。
経営者がAIを活用する上で最も重要なスキルは「指示力」だと國本氏は語ります。ChatGPTを使ったことがある人の多くが「うまく出ない」「よくわからないから使わない」と感じており、その割合は9割ほど。良いアウトプットを引き出せるかは、正しい指示が出せるかにかかっています。
たとえば「YouTubeのタイトル案を出して」と漠然と頼むのではなく、「M&AのYouTubeチャンネルを運営している」「視聴者に響き、登録者数が増えるようなタイトルを20個」といった背景や条件を添えると、的を射た案が返ってきます。
指示力を高める鍵となるのは、要件定義力とAIマネジメント力です。マニュアルを作るのが上手い人、教えるのが上手い人——「100人に聞けば100人が同じ仕事を100%再現できるように落とし込める人」は、生成AIを使いこなせると國本氏は言います。逆に「いい感じにやって」と曖昧な指示を出してしまう経営者は、思った成果物が出ずに不満を抱えがちです。
ポイントは、最初から完璧な答えを期待しないこと。「もっとこういう風にしてほしい」と追加で軌道修正できるのが生成AIの強みであり、何度も角度を変えて指示を繰り返す姿勢が求められます。
AIの普及は採用要件にも直結します。プレスリリース執筆、企画立案、メルマガのタイトルや本文作成といった業務はAIで代替可能になりつつあります。今後は「人を1人雇う」よりも「AIをマネジメントできる人を雇う」方がニーズが高まる、というのが國本氏の見立てです。
ただし、AIは100%完璧なアウトプットを返してくれるわけではありません。理想を具体的に描き、的確な指示を出し、最終アウトプットを評価できる——そんな人材が必要になります。業務とAIの両方を理解し、両者をマネジメントできる人こそ、これからの組織で求められる存在です。
スタートアップの伸ばし方も変わりつつあります。これまでの教科書的な成長戦略は「資金調達して数十人〜数百人を採用する」というものでしたが、AIを活用すれば6〜10人程度の少数精鋭でも大きなインパクトを出せる可能性があります。
アメリカでも「人を増やして組織を膨らませるよりも、AIを開発・活用して小さな企業をどんどん作るほうが重要だ」という議論が広がっており、より少ないリソースで高い売上・利益を出すという経営の理想が、AIによって現実味を帯びてきました。
生成AIは「ゲームチェンジャー」と呼ばれており、既存のビジネスモデルを根本から変える可能性を持っています。これまで人手を大量に抱えていた事業を、AIによって1/10のコストで再現できるなら、それ自体が新たな事業として成立します。
古い企業ほど組織や事業モデルを変えるハードルが高いため、新規参入者にとってはチャンスです。國本氏は「AIを活用した新しいビジネスはどんどん生まれている」と語ります。
ピボット番組でホリエモン氏が語っていたように、動画の時代が終わり、AIに置き換わるという議論もあります。これまでYouTubeで観ていた料理やトレーニングのコンテンツが、ChatGPTやAIに直接尋ねる形へ移行し、音楽やBGMも生成AIで作るようになる。実際に米国ではCMの構成・ターゲット設計・モデルの画像生成・動画生成・ナレーションまでをAIで完結させる事例があり、従来は数百万円・1ヶ月かかった制作が、2時間ほどで仕上がるケースも出てきています。
TikTokやYouTubeでも、AIだけで制作したコンテンツがマネタイズに成功する事例が増えています。プラットフォームの特性を理解した制作者が、ローコスト・ワンオペでコンテンツを量産しているのです。
生成AIといえばChatGPTが代名詞になっていますが、選択肢はそれだけではありません。GoogleのGemini(旧Bard)、Microsoftが提供するモデルなど、各社が独自のサービスを展開しています。學習データやモデルが異なるため、用途に応じて自分に合うツールを見極めることが重要です。
UI/UXの差も無視できません。AI時代のサービス作りではUXが極めて重要で、音声入力に対応しているか、アプリで使いやすいかといった点が選定の決め手になります。國本氏自身は最近Geminiを使うことが増えており、「入力すらも面倒に感じる経営者には音声入力の活用がおすすめ」と語ります。
画像生成についても、商用利用では著作権の観点からMidjourneyなどでオリジナル画像を生成する方が安全な場面も増えています。一方で人物のリアルな生成にはまだリテラシーが必要で、研修やトレーニングを通じて社内に習熟者を育てる動きも広がっています。プロンプト不要で使える簡易ツールも続々登場しており、これ自体が新しいビジネスチャンスになっています。
AIによる業務代替は、すでに始まっています。重要なのは、経営者自身が「指示力」を磨き、AIをマネジメントできる組織を構築することです。AIを活用した少数精鋭の経営、新規ビジネスの創出、複数ツールの使い分け——いずれも今日から取り組める領域です。
「2〜3年後には取り返せない差がついている」という國本氏の言葉は、決して脅しではありません。AI活用は経営の選択肢ではなく、これからの経営者にとっての必修科目になりつつあります。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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