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買収IT・ソフトウェア

東大起業家が4年で売却。SaaS『ビデオステップ』M&A体験談

2026/5/2株式会社ビデオステップ
東大起業家が4年で売却。SaaS『ビデオステップ』M&A体験談

目次

  1. 1.東大在学中の起業から4年でM&A成立
  2. 2.製造業の現場課題を解決する動画教育プラットフォーム
  3. 3.2度のピボットを経て現在の事業へ
  4. 4.500社超のヒアリングで磨かれたプロダクト
  5. 5.「決め打ち」だったJ-Streamとの資本提携
  6. 6.「東大受験と同じくらい大変だった」交渉期間
  7. 7.交渉で意識した2つのポイント
  8. 8.まとめ

東大在学中の起業から4年でM&A成立


株式会社ビデオステップ代表取締役の向氏は、東京大学経済学部在学中の2019年5月に起業。2023年5月に株式会社J-Streamと株式譲渡契約を締結し、同年7月にクロージングを迎えた。創業から約4年、サービスリリースからは1年半というスピードでのM&A成立である。


本記事では、向氏が語ったビデオステップの事業内容、2度のピボット、J-Streamを相手に決めた理由、そして交渉時に意識したポイントを再構成する。


製造業の現場課題を解決する動画教育プラットフォーム


ビデオステップは、動画を活用したDXを支援するSaaSプロダクトだ。主要顧客は製造業で、組み立て手順や部品製造のマニュアルを動画化し、現場での作業効率化と技術伝承を支える。


向氏は事業の背景をこう説明する。


> 文字のマニュアルを読み上げて組み立てを行うとミスが発生してしまう。ベテランの方が口頭で教えていくが、そのベテランもどんどん退職されていく中で技術伝承ができないという課題感がある。そこを動画を使って簡単に伝えていける仕組みを構築している。


単なる動画生成ツールではなく、製造業特有のニーズに応える機能を多数備えているのが特徴だ。


- 編集履歴の保存とバージョン管理

- 視聴履歴の記録

- 課長・部長による多段階承認のワークフロー

- 視聴者の作業習熟度の管理


こうした周辺機能まで含めて提供することで、競合に対する優位性を築いてきた。


2度のピボットを経て現在の事業へ


ビデオステップに至るまで、向氏は2度の大きなピボットを経験している。


創業事業はアクセサリーのD2C。当時のトレンドに乗って参入したものの、うまくいかず、本人も熱を入れられなかったという。コロナ禍に突入したタイミングでITによる社会課題解決へ方向転換し、店舗向けのSaaSに参入した。しかし店舗向け事業も思うように伸びず、コロナ禍でも成長している産業に向けたサービスへと再びピボット。それが現在のビデオステップである。


向氏は事業選定の基準について次のように語る。


> 自分がやりたいと思えるかも判断基準にはあるが、基本的にはマーケットを詳細にリサーチし、その中で1番伸びている市場、今後需要が伸びるであろう市場に対してプロダクトを作っていくことを意識している。


500社超のヒアリングで磨かれたプロダクト


リモートワークの波の中で、法人向けの動画活用度合いが明らかに低い——この市場の歪みに着目した向氏は、「対法人 × 動画」という軸でサービスを検討した。


当初はマニュアル動画以外にも、営業用動画、就活向けの動画面接など複数の方向性を検証していた。その過程で実施したヒアリング件数は500〜600社にのぼる。


結果として、製造業を中心にマニュアル動画への圧倒的なニーズが浮かび上がり、ビデオステップのコンセプトが固まった。徹底した顧客ヒアリングが、買い手のいるプロダクトを作る原動力となったわけだ。


「決め打ち」だったJ-Streamとの資本提携


ビデオステップは累計5,000万円ほどの資金調達を実施しており、当初は上場を目指して資金を集めていた。コロナ禍の影響で資金調達環境は厳しかったものの、シリーズAでの調達は可能な状況だったという。


そんな中、別の会社から「100%もあり得る」というオファーを受けたことがM&Aを意識し始めた契機となった。最終的に契約相手として選んだのは、動画配信プラットフォームを手掛ける株式会社J-Streamだ。


> 動画に特化しているソフトウェアを作っている会社はそんなに多くない。J-Streamさんはうちと提携するべきして提携している、弊社もJ-Streamさんしかいないと思って交渉していた。


シナジーの大きさを最重視し、ほぼ決め打ちでの交渉だったと向氏は明かす。20〜30%の出資では相手も本気で支援しづらいだろうという判断から、100%譲渡という選択に至った。


ファーストコンタクトは2023年1月末、初回会議を経て契約締結に至ったのが5月。およそ4ヶ月の交渉期間だった。


「東大受験と同じくらい大変だった」交渉期間


交渉期間中の負荷は相当なものだったという。1日4件のクライアント商談に加えてM&A交渉の会議、提案資料やデューデリジェンス対応資料の作成が重なり、土日もほぼ稼働していた。


会社自体は黒字でキャッシュフローには問題なかったが、心理的な不安は大きかった。


> 2ヶ月くらい交渉にすごいリソースを割いているものが急に破談してしまうと、めちゃめちゃ頑張ってきたのにということになる。これうまくいかなかったらどうしようという思いはやっぱりあった。


M&A契約を締結できたときの喜びは、東大に合格したときと同じくらいのアドレナリンが出たと振り返る。


交渉で意識した2つのポイント


向氏が交渉時に特に気をつけたのは次の2点だ。


1. 株主との丁寧なコミュニケーション


ビデオステップにはVC2社、エンジェル投資家8名ほどが株主として参加していた。上場を前提に資金調達していた経緯があるため、方針転換に際しては株主との合意形成が不可欠だった。交渉前、交渉が進んだ段階、基本合意の前と段階ごとに全員と電話でコミュニケーションを取り、丁寧に合意を取りにいったという。


2. 事業計画の説得力を高める


スタートアップは現時点の売上・利益で評価すると規模が小さく見えてしまう。そこで、なぜ将来うまくいくと考えているのかという感覚を言語化し、資料に落とし込むことを徹底した。


チャーンレートの推移、月次成長率、マーケティング投資のタイミングなどを詳細にモデル化し、「だからこれくらい伸びる」と説得力のある事業計画書を作り上げた。


> 現時点での売上だけで評価されると小さくなってしまう。いかに1年後、2年後の売上で見てもらえるかがM&Aにおいて大事なことだと思う。


この再現性のある事業計画こそが、ディール成立の決定打になったと向氏は語る。


まとめ


東大在学中の起業から、2度のピボット、500社超のヒアリング、そして決め打ちでのJ-Stream売却。向氏のM&A体験は、市場選定とプロダクト磨き込み、そして交渉準備の徹底ぶりが印象的なケースだ。現在はロックアップ期間中でPMIに取り組んでおり、後半パートでは売却後の実情が語られる予定である。


※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです

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