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「売上が全てじゃない」MBOで悟ったイケてる企業の価値観|ウルシステムズ漆原氏が語る創業からIPOまで

2026/5/7ウルシステムズ
「売上が全てじゃない」MBOで悟ったイケてる企業の価値観|ウルシステムズ漆原氏が語る創業からIPOまで

目次

  1. 1.エンジニアがエンジニアのための会社をつくる
  2. 2.数億円規模の初期調達――最初から大型案件を狙った理由
  3. 3.ニッチに刺さる採用――書籍メディアで「物好きエンジニア」を集める
  4. 4.80人体制への急拡大とトラブルの連鎖
  5. 5.MBOという決断――外部の期待値と内部の理想のギャップ
  6. 6.経営者のための「憲法」――やらないことを決める
  7. 7.経営者次第で組織は変わる

エンジニアがエンジニアのための会社をつくる


ウルシステムズ代表の漆原氏は、生まれも育ちも生粋のエンジニア。「エンジニアがエンジニアのための会社を作りたい」という想いで起業した。現在はITコンサルティングとシステム開発を手がけ、次世代のDXと呼ばれるキレキレのプロジェクトだけを扱う「匠のエンジニア集団」を率いている。


創業当初から経営者でありながらプレイヤーとしても現場に立ち続けた。「最初は1人から始めて、やるしかなかった」と振り返る。創業から6年でIPOを実現したが、本人にとっては「当初の想定より少し遅かった」というのが率直な感想だ。


数億円規模の初期調達――最初から大型案件を狙った理由


漆原氏が手がけたかったのは、超大型のクライアントの「ど真ん中の最も重要な部分」を担うプロジェクトだった。当然プロジェクトは大型化し、人もお金も先に必要になる。


> 「最後にお客さんに納めて納得いただいて、初めてお金が戻ってくる。だから1回沈んでから上がるモデルなんです」


資本金1,000万円でスタートしたものの、事業パートナーやベンチャーキャピタルから一気に数億円規模の調達に踏み切った。理由は明快で、「売上20億円・100人〜200人体制をすぐに実現したいなら、1,000万円で始められるわけがない」という現実的な算段があったからだ。MBO(マネジメント・バイアウト:経営陣による自社買収)を視野に入れる前から、最初に大きく投資する必要性を見抜いていた。


ニッチに刺さる採用――書籍メディアで「物好きエンジニア」を集める


2000年代初頭、まだネットメディアが今ほど発達していなかった時代。漆原氏は技術書の中に技術者向けの記事を書き続け、その中に「技術屋にだけ分かる採用メッセージ」を仕込んだ。


「分かる人には分かる、分からないやつは来なくていい」というニッチな打ち出し方が功を奏し、ど真ん中ストライクの人材が集まった。本当に開発が好きなエンジニアたちこそ、漆原氏が必要としていた人材だった。


初年度の売上は約1.5億円、2年目に約4億円弱、3年目には7〜13億円と急成長。BtoBの業務システムという領域で、ノウハウのある人間からすれば3,000万円の案件も億単位の案件も営業コストは変わらない。「獲得は同じでも、仕上げるのが大変」と語る。


80人体制への急拡大とトラブルの連鎖


コアチーム20〜30人から始まり、50人、80人と一気に組織が拡大した。フルアクセルでの採用と、暗黙の了解で現場に投入していくスタイル。だが、ここで歪みが出始める。


4期目あたり、漆原氏は自問自答していた。「自分たちは本当にお客さんの満足度を120%でやり切れているのか?」「いや、100%ではない」――できない言い訳を自分でしてしまっている状態。それは、トラブルを抱えながら走り続ける普通の受託開発のSI会社と何も変わらなかった。


MBOという決断――外部の期待値と内部の理想のギャップ


外部の投資家からの期待値は明確だった。「売上が倍々で伸びてきたなら、そのまま倍でしょう」という見方は当然のこと。しかし、漆原氏が目指していたのは規模の拡大ではなく「内容がやたら濃く、すごくいいチームでキレキレの仕事をしている舞台」だった。


2003年12月、MBOを実行。ベンチャーキャピタルから株式を買い戻し、後ろ盾を失った状態で再スタートを切った。MBOの資金は個人で調達するしかなく、銀行を回って頭を下げ続けたという。


買い戻した直後、会社にいた全員を集めてこう告げた。


> 「後がなくなりました。だけど、ここにいるメンバーを信じて資本構成を変え、僕たちの実力でやることにします。不安なら出ていっても止めません」


結果、誰も辞めなかった。むしろ「良かったですね」と言ってくれるメンバーばかりだった。「このチームさえあればお金はなんとかなると確信した瞬間でした」と漆原氏は語る。


経営者のための「憲法」――やらないことを決める


MBO後、同じ失敗を繰り返さないために、漆原氏は会社に「憲法」を制定した。これは経営者自身を縛るためのルールだ。


憲法に書かれた「やってはいけないこと」の例:


- 数字だけを求めた意味のない受託開発は絶対に受けない

- どこかに丸投げして間に入るだけの仕事はやらない

- 人を何も考えずに派遣して終わるような仕事はやらない

- どこかから仕入れて売って間で稼ぐようなビジネスはやらない


「やりたいことはいっぱいある。でも何をやってしまうと文化が壊れるか――このガードレールのほうがよっぽど重要なんです」


経営者が自分自身に課した約束があるからこそ、現場のメンバーは思い切って働ける。たとえばクライアントが間違っていれば「間違っているのでやめましょう」と断言していい。それで失注しても構わない。むしろ褒めるという。


経営者次第で組織は変わる


MBO以降、ウルシステムズの売上は爆発的に伸びるわけではないが、キャッシュフローは常にポジティブを維持。先端技術でキレキレのチームができあがると、案件の方からやってくる状態になった。


漆原氏は若い起業家へのアドバイスとしてこう語る。


> 「資金調達は重要だが、空想と妄想だけで数字を引いても良いものにはならない。自分たちがどこまで本気でやれる自信があるのか、改めて問い直すべきだ」


そしてもう一つ、チームビルディングへの時間投下と、濃くて価値の高いプロジェクトを最初から狙う設計があれば、苦労はもっと減ったはずだという。


「やらないこと」を決めて経営者側に楽な儲け方をさせないことで、逆に現場はフルスイングできるようになる――これが漆原氏が体験から導き出した結論だ。経営者がどこまで正しいことを言えるか、メンバーは敏感に見ている。


※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです

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