元ゴールドマン・サックスの田中渓氏と「プロ飲み師」おくりバント高山氏が、ハイエンドな飲みの場で語る本音対談。忙しさへの対処法、SNSとの距離の取り方、そしてメディアでは見えない素顔まで、肩肘張らない夜の会話を記事化。
元ゴールドマン・サックス出身で投資家・メディア活動家の田中渓氏と、広告会社「おくりバント」を率いる高山氏。M&A CAMPの企画で実現した、ハイエンドなワインと料理を囲む対談である。冒頭、聞き手が打ち明けたのは「忙しすぎてどうしようかと思っている」という悩みだった。
田中氏の答えは明快だ。
「それはもう断捨離するしかないですね。書き出すしかない。一回全部やらなきゃいけない、バーっと書いて優先順位をつける。それでもダメなら、断捨離するか人を増やすしかない」
高山氏もこう続ける。
「不要不急って、僕はかわいそうで悪い言葉だと思っていたんですよ。飲食店の人がすごく虐げられて。でも今は、不要不急の人生が一番幸せだっていう感じですね」
効率化や生産性が叫ばれる時代に、二人は揃って「余白」と「捨てる勇気」の重要性を語る。
田中氏は自身のスケジューリング術についてこう明かす。
「似たような予定をちゃんと詰めるようにしているんですよ。作業、人と会う、作業、人と会う、というのが一番ダメなんですよ。すごく疲れる。人と会った瞬間に作業し始めても、ぼやぼや考えて手につかない。次に人と会うってなると20分前から考え始めて、結局この作業ほとんどできていない」
さらに、1日に会食を入れるなら、その間に必ず2時間ほどの「余白」を作るという。合わない予定はしょうがないが断捨離する、と語る。
高山氏は対照的に、自身を「暇」と表現する。
「俺、暇なんですよ。基本暇。打ち合わせも、暇を潰してくれてありがとうございますぐらいのテンション」
ただし、おくりバントの社内では「1日に2件入っていたら忙しい、3件で超忙しい」とのこと。人と会うのが好きな高山氏でも、過剰な予定は心身を削るというのは共通認識のようだ。
田中氏のYouTubeでの露出は急速に拡大している。最近では関連動画にも頻繁に登場する状態だ。しかし当人は、こう警戒している。
「一番怖いのが、猛信してくれちゃう人なんですよ。話を半分、いや3分の1に聞いてくれっていう。あなたが思っているような大層な人間じゃないから」
高山氏も自店に来る客について同様の感覚を語る。
「YouTubeを見た人が来てくれるんですよ。でも信じてくる人がいるから、話1/3に聞いてくれっていう。そんな人間じゃないんですよ」
田中氏はメディア活動でお金を直接受け取らないことで防御線を張っているが、それでも「画面が回っていれば緊張感で普段の100%は出せない。切り取られたところだけ見て想像で埋めるから、勝手に1500ぐらいの僕みたいなやつを作っている人がたくさんいる」と語る。
会話はSNSとの距離感にも及んだ。聞き手はSNSアプリを消したことで「心が安定した」と語る。田中氏も同調する。
「ドーパミンが気軽に手に入るので、本当に気をつけないといけない。SNSと核兵器は人類には早すぎるんじゃないかと」
高山氏はラーメン動画やセクシー系投稿のレコメンドにハマってしまうと笑いつつ、アルゴリズムの強さを認める。一方、田中氏はXを見るのは「朝・昼・夜の3回くらい」と決めているという。
「1日中返信が来るとかって言われるんですけど、実は決まった時間帯にやっているだけ」
金融出身の田中氏と広告/カルチャー系の高山氏。一見正反対に見える二人だが、共通項は多い。
田中氏は学生時代にDJとしてタトゥーも入れていた経歴を持ち、ジャズからヒップホップ、クラシックまで幅広い音楽愛好家。高山氏は現役DJで、外国人女性メアリー・スミッツ氏との楽曲制作も行う。
「家族でどこか行く時、運転する人が音楽をかけられる。コストコに行くならコストコのプレイリストを作る」と高山氏。シチュエーションごとのプレイリスト作りに、田中氏も「めっちゃ楽しい」と共感する。
飲みについても二人とも筋金入りで、高山氏は「去年、外で飲みに行ったのが360日」と語る。家では飲まず、外で飲む「場」を楽しむのがポリシーだ。
高山氏は子供から「父親の仕事は何か」と聞かれた際、こう答えるという。
「基本広告屋なんですけど、最近はちょっと文化人って答えています」
田中氏は自身を「単にネクラなだけ」と評する。
「淡々としているし、すごくインキャ。ラジオは結構ネクラな人が聞いているんですよ」
二人とも、世間が抱く華やかなイメージとは裏腹に、書籍や映像コンテンツを一人で楽しむ時間を最も大切にしているという。
本対談は明確なテーマも結論もない。だが、忙しさに追われ、SNSに時間を奪われ、過剰な期待に晒される現代人にとって、二人の語る「断捨離」「余白」「猛信させない距離感」「ドーパミン依存からの脱却」は、それぞれが等身大のヒントを差し出している。
田中氏は最後にこう語った。
「人生の豊かさのほうを優先してやっているので、取りこぼしているのも一応あります」
何もかもを追わず、不要不急の時間を肯定する。それこそが、二人の生き方に通底するメッセージなのかもしれない。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
