DMM.com会長の亀山敬司氏が、ドライブ中の対談で語った経営哲学。オンラインサロンの値付けの考え方から、Netflix『極悪女王』をきっかけにした正義論、家族・社員・社会への愛の優先順位、そして「自分は最低かも」と疑い続ける姿勢まで、30年潰れない経営者の思考習慣に迫る。
M&A CAMPの福田氏とDMM.com会長・亀山敬司氏のドライブトーク企画。オフィス移転で自宅からの距離が遠くなったことを逆手に取り、移動時間そのものをコンテンツ化する試み。雑談の延長線上にこそ、経営の本質が滲み出るという発想だ。
福田氏は自身が運営するオンラインサロンの月額を、当初の1.2万円から3万円に値上げしたものの、罪悪感から1.3万円に戻したと打ち明ける。これに対し亀山氏はビジネスの合理性から解説する。
「3万円と1万円で迷ったら、3万円にして1人になっても得は得。2人で2万円より1人で3万円の方が大きい」
しかし亀山氏は単純な値上げ論には立たない。重要なのは「未来に伸びていく構造」かどうかだという。
- 入会と退会の推移を見て、徐々に減るなら価格が見合っていない
- 倍に値上げして会員が半減したら、金額は同等でも未来の成長余地は失われる
- ビジネスは科学の実験のようなもので、仮説を立てて反応を見ながら調整する
「何が正しいかなんて答えはない。需要と供給だから」と亀山氏。エルメスやプラダのバッグが100万円する一方、ユニクロが2,000円で素材の良い服を出す。価格に絶対的な根拠はなく、ストーリーやブランドが目に見えない価値を支えている。
福田氏のサロンに集まるのは、孤独な経営者が同規模・少し上の規模の経営者と繋がりたいというニーズ。ギラギラしていない、安心安全な空間を求める層だ。
亀山氏はこう指摘する。
「コンテンツで集めて、集まった人たち同士が繋がる。それがオンラインサロンの基本。最初は中心人物で物事を運ぶけれど、途中から運営者がいなくても団体として自立的に成長していく」
さらに月額とは別に、ホテルを借り切ったオフ会のような体験提供を組み合わせると喜ばれるのではないか、というアドバイスも。福田氏は売上5000万円以上の創業者に絞り、200人規模を目標にコツコツ育てる方針を固めた。
話題はNetflixのドラマ『極悪女王』『9-9-9』へ。福田氏は「正義は世の中にそもそも存在しないのではないか」と感じたという。
亀山氏の視点は独特だ。風俗街を「サザエさんのような世界」と表現し、自身がキャバレーを営む家庭で育ち、住み込みのお姉さんが2階に住む環境で育った経験から語る。
「自分よりかわいそうな人を助けるという発想自体が、警察と同じ目線にあることもある。『こいつらダメだ』と差別する人と『かわいそう』と同情する人は、実は近い場所にいる。当事者からすれば『毎日定期的にやってるあなたたちの方がかわいそう』と思っていることもある」
壊して「いいことをした」と立ち去るのではなく、業界に良いところも悪いところもある前提で、少しでもマシなものにしていく。それが亀山氏のフラットな姿勢だ。
福田氏が「自分には強い信念がない」と漏らすと、亀山氏はこう応える。
「信念は無理に持つものじゃない。色々経験していくと、これは気持ち悪かった、これは良かったと肌感覚で感じるようになる。それに素直に従えばいい」
そして警鐘を鳴らす。家から一歩も出ずにYouTubeばかり見て、政治や社会を分かった気になる風潮への危惧だ。
「本であろうが映画であろうが、人の人生を聞いて学ぶのはいい。でも自分の体験と照らし合わせる部分がないと、嘘を取り入れて間違った方向に行くこともある。体を動かして街に出て、仕事して、友達と喧嘩したり裏切ったり愛されたりする中で、ようやく自分の言葉になる」
福田氏が「愛があれば人は道を外さないのでは」と問うと、亀山氏は自身の優先順位を明かす。
1. 家族
2. 友人
3. 社員
4. その他(社会)
「旅をしていて、自分にとって誰が大事かと考えると、やはり家族がいてよかったと思う。でも旅ができるのも社員のおかげだと気づく。最低限のことが行き届いたら、次は社会のことも考えざるを得なくなる」
亀山氏が社会的なことを考え始めたのは「会社が潰れないな」と思えた段階から。それまでは余裕がなく、考えられなかったという。突き詰めれば全ては自己満足だが、自己の範囲が広がっていく感覚に近い。
「世界平和のために」と語る人について、亀山氏はこう述べる。
「パフォーマンスとして言うならいい。でも本気でそう思っているとしたら、それは違う。社会起業家でも補助金で回っている人もいる。それで『社会貢献している』と言うのは少し楽だよね、と思うこともある」
割り切って「結果的にいいことになるからやる」というスタンスならいい。問題は自分を「いい人」だと勘違いしてしまうこと。最後に行き詰まった時、社会と自分の生活のどちらを選ぶのか。
対談のクライマックスで亀山氏が語ったのは、30年潰れない経営者の思考習慣だ。
「自分は最高だというのは全然いい話で、そうじゃないとやる気にならない。『俺は何でもできる』と思っていい。でもその後に『いや、でもやっぱり最低かも』『俺ってこういうところ醜いな』と疑う視点もいる。両方必要なんだよ」
自分を呪文のように疑い続けるスタンスこそ、世の中をより良くするために必要な要素だ、と福田氏も同意する。
織田信長型のマネジメント(カリスマで引っ張る)が時代に合わなくなり、徳川家康型(人を生かす経営)でなければ長期繁栄は難しい、と福田氏。亀山氏も同意する。
「カリスマが引っ張る時代から、ちょっと緩めな感じが今時になっている。途中からどんどん任せていったおかげで、今は楽。たまたま時代に合っただけだけど、自然体でやった方が、時代に合わなくても自分が楽でいられる」
無理に流行のキャラを演じても剥がれてしまう。自分が好きでやっていることを続けるうちに、たまたま時代と合致してヒットする──宗次郎の『シルクロード』の例えのように、長く続く秘訣は自然体にあった。
DMM.comには、亀山氏が香川でレンタルビデオ店を営んでいた頃のアルバイトの娘が新卒入社してきたという。
「二世代に渡って俺と付き合ってくれる。三世代に渡っていけるようになりたい」
商売を続け、振り続けることで、人と会社は静かに大きくなっていく。ドライブの最中に交わされた何気ない言葉の中に、30年潰れない経営者の哲学が凝縮されていた。
値付けは実験、正義はフラットに、愛は身近から、そして自分を疑い続ける──亀山会長の言葉はどれも派手さはないが、深く根を張った経営者の思考習慣そのものだった。自然体で在ること、両極の視点を持つこと、二世代三世代の長期視点で考えること。経営の本質は、案外こうした静かな日常の対話の中にあるのかもしれない。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
