500億円のビットコイン流出事件を経験したDMM亀山会長と、編集者・箕輪厚介氏が語り合う「40代以降の幸福論」。不幸や失敗をネタに変える視点、A面・B面・C面という人間関係の捉え方、そして地図を捨てて生きる哲学とは。
DMM.com会長の亀山敬司氏と、編集者の箕輪厚介氏による対談。テーマは「40代以降の幸福論」だが、話は二人独自の人間関係論から始まった。
箕輪氏が語る「A面・B面・C面」という分類が興味深い。
- A面:上場企業経営者など、いわゆるホワイトな人たち
- B面:オーナー社長、インフルエンサー、YouTuberなどダーティーなキャラ
- C面:スピリチュアル系
箕輪氏は自身を「B面の中でも一番A寄り」と位置づける。一方の亀山氏については「50歳までブランディングがなかったため、無言でB面に分類されていた」と振り返る。実態としては「A寄りのB」だという。
「結局、人のなんとなくの印象ってかなり正しい」と箕輪氏。SNSや動画の時代、喋り方や雰囲気から滲み出るものは隠せない、という観察である。
話題は、亀山氏が経験した約500億円相当のビットコイン流出事件へ。堀江貴文氏のチャンネルで箕輪氏が「カメっち、盗まれた行ってらっしゃい」という動画を出した件について、改めて振り返る。
驚くべきは亀山氏の冷静さだ。
「1000円落としたら『しまった』と思うけど、500億ぐらいになるとビジネス上のリスクの範囲。むしろ金があってよかったって感じ」
さらに当時、DMMで持株会が始まり社員が株を買っていたタイミングだったため、亀山氏は社員分の株価下落を個人で補填したという。
「神様っているね。完全に大丈夫って思った時に何かが来る」
亀山氏はこう語り、不幸があった方が「その後また頑張って稼ぐぞ」という気持ちになると続ける。「10年笑い取れるネタになる」と語る姿勢は、起業家としての胆力そのものだ。
箕輪氏は1年ほど前、ミドルエイジクライシスのような虚無感に襲われた経験を語る。「俺この先何やろうか」となった時期があったという。
対して亀山氏は「そこまでのブランクはない」と語る。
「人さえあれば、会社がどうなろうが、人と関わってるだけで面白い」
50代までメディアに一切出ず、それでも楽しめていたという亀山氏。共通するのは「結局、人間が一番興味の対象」という感覚だ。
慣れによって何事も日常化してしまうことについて、亀山氏はこう表現する。
「許容の範囲が広くなる。500億がうっすら飲み込めてたら、もう怖くなくない?」
話は経営者の人付き合いに及ぶ。亀山氏は接待や会食について「いらんだろうね」と一刀両断する。
ドワンゴ創業者・川上量生氏のエピソードが象徴的だ。Twitterで暴れることで、銀行や行政の「まともな人」が会いに来なくなり、結果として時間ができてプロダクトに集中できる——それがいいと思った、と川上氏は語ったという。
亀山氏自身、市長や政治家が来ても素で対応してしまうため、社員から「出ない方がいい」と言われ、引きこもりになったエピソードを明かす。
「嘘の尊敬、ウェットのためのウェット——そういう付き合いに興味がない」
会食ゼロでも会社は伸びる。むしろ、伸びる会社の特徴かもしれない、というのが二人の見解だ。
箕輪氏は40歳を意識して、資産プランや仕事のプランを一度書き出し、S&P500を始めたという。だがその瞬間「ゴールが見えてしまって萎えた」。
そんな時に出会ったのが、冒険家・角幡唯介氏の著書『地図なき山行』だった。
「エベレストでも何でも、地図がある。でも地図が全くない中だと、北海道のしょぼい川や山でも超怖い。この滝を登った後にまた滝が続いてたらテントが張れず死ぬかもしれない。地図がない時に初めて自然が自分に迫ってくる」
これを読んで、箕輪氏は「地図を捨てよう」と思ったという。
カジノで106億円を溶かした井川意高氏の言葉も引用される。「カジノで一番興奮するのは勝ってる時じゃなくて、負けた20億をゼロに戻す時」。失った状態から復活するまでの時間こそが、生きている実感をもたらすのだ。
亀山氏も箕輪氏も、共通して「ミスっている人間」に魅力を感じるという。
「絶好調の時の話よりも、ミスってるところにその人間の一番のコアがある。それを『いいじゃん』って言いたい」(箕輪氏)
人を殺してしまった人ですら、それは何かの事情があってそうなっただけで、その人本来の精神性とは別物——そんな視点で人間を見る。嘘や、自分を実態以上によく見せようとする姿勢には、二人とも違和感を持つ。
アイスバスやエクストリーム体験、藤田晋氏が馬主として興奮している姿——いずれも「認知をバグらせる」体験だと箕輪氏は分析する。
「臨死体験みたいなものがないと、日々生きてる感覚がない」
登山家がエベレストを登り続けるとそれもルーティンになる。すべてが日常になってしまう人間にとって、刺激の温度差こそが「気持ちよさ」を生む。
65歳になった亀山氏は、もはや「やってみたいこと」も少なくなったと語る。昔は宇宙旅行に申し込んだこともあったが、今は興味がない。想像がついてしまうからだ。
それでも楽しみはある。元運転手がラーメン屋を頑張っていること、今の運転手が格闘技を頑張っていること——身近な人の挑戦を応援することに喜びを感じるという。
そしてA面・B面が混ざった飲み会への興味。A面の集まりでは「B面とは絡まない方がリスクがない」「無視するのが一番」という結論になりがちだが、亀山氏はそれに違和感を持つ。
「人と人が出会うには金と勇気がいる。インテリの正義は0.1%。区の常識は世間の非常識」
ヒルズ的な世界とヤンキー的な世界、A面とB面——両者を行き来できる人間こそが、これからの時代に必要な視座を持てるのかもしれない。
500億円の流出を「10年ネタにできる」と笑い、地図を捨てて毎日を未知にする。亀山会長と箕輪氏の対話から浮かび上がるのは、不幸や失敗を「生きてる時間」に変換する技術だ。
許容範囲を広げ、人間のミスにこそ本質を見出し、認知をバグらせ続ける——40代以降の幸福論は、安定の追求ではなく、むしろ予測不能性の中に身を置くことにある。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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