DMM.com会長・亀山敬司氏が「最初の1億円の稼ぎ方」をテーマに語る。商売の難しさ、属人化からの脱却、そして経営者が持つべき教養と長期視点とは。20代から起業し続けた亀山氏ならではの本音トークをまとめた。
M&A CAMPの収録合間に行われた本企画のテーマは「最初の1億円の稼ぎ方」。聞き手が改めて商売の難しさを実感したという問題意識から、DMM.com会長の亀山敬司氏に率直に切り込んだ。
亀山氏の答えは明快だった。
「1億稼ぐの結構大変よ」
亀山氏自身が売上1億円に到達したのは24〜25歳の頃。19歳で事業を始めてから約5〜6年を要したという。当時はビデオレンタル店を複数店舗展開していたタイミングで、それまでの飲食店ではなかなか1億円には届かなかった。
しかも当時、亀山氏は「1億円」という数字を目標にしていたわけではない。売上が立った瞬間に特別な感慨があったわけでもなく、淡々と店舗を増やしていった結果としての到達だった。
亀山氏は、若い起業家がイメージしがちな「売上1億円」のリアルを冷静に解説する。
飲食店で売上1億円を立てたとしても、原価と固定費を引けば、手元に残る利益は1,000万円に届かないことも多い。そこから自分の生活費を出し、人を雇えば、社員に500万円、自分に500万円を払って、ほぼゼロになってしまう。
「勤めて4〜500万円稼げる人でも、金用すればゼロになることもある。むしろ借金を抱えることもあるんだから、金用なんてギャンブルよ」
うまくいくのは10人に1人もいないというのが亀山氏の体感。しかも、そのうまくいくかどうかも「8割は運」だと言う。
勤めていた頃の2〜3倍働いても、給料が2倍3倍になるとは限らない。それが起業家の現実だ。
亀山氏は、仕事の種類によって「頑張りの効き方」が違うと指摘する。
- 飲食店のような地道な商売は、自分が現場に入って徹夜してでも回せば、なんとかなる側面がある
- 一方、ビデオレンタルやインターネットビジネスは、思惑通りには進まない
- 「求めているうちは報われない。9割型は報われないことのほうが多い」
起業家としての労働時間は実質的に勤め人の2〜3倍になることもあるが、その分の対価がすぐに返ってくるわけではない。最初の1〜2年は給料を下げてでも耐え、徐々に積み上がっていくものだという。
亀山氏が語る重要なポイントが、「自分がやらなくても回る仕組み」をどう作るかだ。
雀荘や飲食店時代の亀山氏は、完全なプレイヤーだった。夜中までパイを磨き、カウンターで接客し、自分の笑顔と人柄で客を呼んでいた。だからこそ、誰かに任せた途端に半年で潰れてしまうこともあった。
「人についていた」状態のビジネスは、その人がいる間だけ1店舗が回る。しかし2店舗目に展開しようとすると無理が出る。いわゆるパパママショップの限界である。
亀山氏が脱却できたのは、ビデオレンタルへの業態転換だった。
- 在庫の品揃えやシステム・データで運営できる
- アルバイトでも回せる業務に分解できた
- だからこそ多店舗展開が可能になった
「自分よりも力が半分しかない人間がやっても、給料を払ってもいくらか残るモデルにできた時、初めて組織として会社が回る」
これが亀山氏の語る「事業化」の本質である。
ビデオレンタルが伸びた背景には、マーケットそのものの成長があったと亀山氏は振り返る。利益率の高さは、業界の成長フェーズに乗れたからこそ実現したものだった。
そしてこれからの時代について、亀山氏は警鐘を鳴らす。
「AIとかチェンジがあるとか言うけど、あくまでこの業にこだわっていると、その業ごと消える可能性があるから」
一つの業種に固執するのではなく、広く様々な業界を見ておくこと。さらに踏み込めば、ビジネスだけでなく、サイエンスや歴史といった分野まで含めた「リベラルアーツ」的な教養が、長期的な経営判断に効いてくるという。
亀山氏が情報源として挙げるのが、NHKスペシャルだ。ビジネス番組はもちろん、恐竜・歴史・数学・人体・宇宙といったテーマの番組まで幅広く視聴している。
なぜか。
「儲からなくなったら無茶苦茶不安だけど、恐竜に比べたら大したことないなとか思える。何億年の世界から見れば、こんなもんは知れているよなと」
業績が下がっても不幸せにはならない自信があるか、という問いに、亀山氏は「宇宙とか恐竜の映画を観ればなんとかなる」と笑う。スケールの大きな視点を持つことで、目の前の事業の浮き沈みに振り回されなくなる。これは肩の力を抜いて長期で戦うための、亀山氏なりの知恵である。
また、YouTubeはレコメンドによって世界が狭くなる構造があるが、NetflixやNHKは興味のないテーマも入ってくる。意図的に「自分の関心の外」を浴びることが、思考を硬直させない処方箋になっているという。
孤独と向き合うこと、現実から目を背けないこと。亀山氏はこの点も強調した。
ゲームやYouTubeで気を紛らわせるのは簡単だ。しかしAIによる地殻変動が現実に起きている今、怖いからといって考えるのをやめてしまう経営者も少なくない。
「最近やっぱり色々考えると頭痛いのもあるんだけど、現実は見なきゃ」
王道の答えだが、これを淡々と続けてきたことが、亀山氏の経営者としての持続力を支えていると感じさせる。
対談の最後、亀山氏は「最初の1億円の作り方」というテーマそのものに対して、本質的な問い直しを行った。
「1億とか目標は作らないで、食っていくように商売をやるのが大事」
初期の経営者にとって最も大切なのは、売上の派手な数字ではなく、自分の生活費が出せること、社員の給料が払えること、そして事業が続けられること。少なくとも自分の手元に500万円が残るような構造を作って生きていけば、波はあっても勝手に増えていく。
- 1億円という数字を追わない
- 食っていける状態を維持する
- 属人的な仕事から、人に任せて残るモデルへ転換する
- マーケットの変化を広く見る
- 教養と長期視点で「肩の力を抜く」
「ちゃんとやっていれば、長期で見ればちゃんとなる」
亀山氏のシンプルな結論は、起業の入り口に立つ人にとって、過剰な期待を冷ますと同時に、続けることへの勇気を与えるものだった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
