映像クリエイター・大川優介氏の「事業を伸ばすか、自由に生きるか」という悩みを起点に、DMM創業者・亀山敬司氏、ライター・ヨッピー氏が交わした未来の働き方論。承認・稼ぎ・人間関係のどれを優先するか、AI時代の独自性、SNS時代の幸福の尺度について本音で語り合った対談を再構成する。
映像クリエイター・大川優介氏は18歳からYouTubeで動画制作を始め、現在チャンネル登録者数20万人を超える人気クリエイターとなった。一方でスタートアップを経営する起業家としての顔も持ち、お台場に大きなオフィスを構え、社員を抱えて事業拡大を目指していた時期もある。
しかし最近の大川氏は、京都への移住を経て、再び東京に戻ってきたばかり。会社の規模を拡大することよりも、自分自身の哲学や「本当の思い出とは何か」という問いに向き合う方向にシフトしている。その象徴的なプロダクトとして、9秒間の動画しか撮影できないというカメラを開発した。「無制限に撮れるからこそ、どこを切り取ればいいかわからない」という未経験者の悩みに対し、あえて不便さを設計することで世界観を重視するという思想が込められている。
そんな大川氏が抱える悩みは、「事業を頑張って伸ばすか、自由に生きるか」という意思決定の迷いだ。同席したライターのヨッピー氏も、人を雇うことへの違和感を語る。
「僕は人を雇ってた時期があるんですが、優しすぎて、雇ってるくせにそいつに仕事を一切発注してなかった。半年で解散しました」
お金を使って他人の自由を買い上げているような感覚が拭えなかったという。大川氏もこの感覚に共感を示し、「お金を使って他人の自由を買い上げてる感じがある。そう、罪悪感なんですよ」と応じた。
対談に加わったDMM.com創業者・亀山敬司氏は、人を雇うことについて別の角度から語る。
「俺もちょっとプレッシャーがあって苦手だから、自転車かタクシーにするんだけど、ただその人から言わせると、結局その人の仕事を作ってるって話なんよね」
そして亀山氏は、働く動機を3つに整理する。承認を求めるパターン、稼ぎを求めるパターン、社員と一緒に仕事をした思い出(人間関係)を求めるパターン。「どれを優先するのか」という問いに、それぞれが自分なりの答えを示した。
ヨッピー氏は「自分が時間を合理的に使えてるなと感じたらいい」と答える。何かを成すために軸を持つという考え自体を捨てているという。一方で「好きな人と好きなことだけする時間が取りたいから、人を雇わない」と人間関係を最重視する立場も明かした。仲間ではなく「同士」と呼べる人たちが周りにいるため、孤独感はないという。
亀山氏については、ヨッピー氏が「事業をここまで伸ばした本質は責任感だ」という仮説を提示。亀山氏自身も「損得を切り詰めて何が得かと考えたら、周りを助けることが結構倍返しされるから、利他的に見えて利己的なのかもしれない」と返した。短期的な満足を積み重ねた結果、長期的なリターンも自然についてくるという感覚だ。
ヨッピー氏は、人にはそもそも向き不向きがあると指摘する。
「フェラーリを乗り回したいというドーパミン的な報酬回路を求める人もいれば、焚き火を見てホッと落ち着くセロトニン的なものを求める人もいる。セロトニン型なのにドーパミン型の世界に飛び込むと、ギャップでしんどくなる」
この分析を受けて、大川氏は自身がクリエイター気質である自覚を語る。本来は表現することが楽しい。しかし大学時代に学力コンプレックスから起業マインドを持ち、その手段として動画クリエイターになった経緯がある。「自分が表現したいこと」と「お金を稼ぐこと」が常にせめぎ合ってきたという葛藤だ。
ここで大川氏が口にしたのが、業界では知られたある問題だった。
「YouTuber全員うつ病問題ってのは、最近どうすればいいですか?」
ヨッピー氏も「みんなうつ病になりますよね」と即座に同意する。数字で評価され続ける仕事の特性、他のクリエイターとの比較で消耗してしまう構造的な問題が背景にある。大川氏自身も「同じようなYouTuberを見て、明確に比較することで萎える経験があったので、最近はあまりYouTube自体を見ていない」と打ち明けた。
大川氏には、起業家としての出発点で17歳の頃に強く影響を受けたモデルケースがある。孫正義氏やスティーブ・ジョブズ氏といった、いわば「雲の上」の存在だ。
この話を受けて亀山氏が示したアドバイスは示唆に富む。
「上昇志向が強いんだと思うんですよね。無理にそこを抑えて悟った方がいいと言うのは、モテたい男が『俺は別に女に興味ないんだけど』と無理に言ってるようなもの。憧れているものを一回掴んでから減滅するのも大事」
つまり、捨てきれない上昇志向があるなら、まず事業を伸ばす方向に振り切ってみる。その経験を経て初めて、本当に降りるかどうかの判断ができるという考え方だ。
大川氏はこのアドバイスに対し、自分にとって懸念があるのは「属人性」だと応じた。AIが進化する時代において、自分自身であるという独自性はむしろ価値が高まる。属人性を保ったまま事業を成長させるモデルケースを模索したいという。
話題は、ヨッピー氏が数日前に投稿していた「一流経営者とは」という動画に及んだ。あるリアリティ番組に並ぶ経営者たちが「一流経営者」と称されていることに違和感を覚え、批判的に語ったという内容だ。
「いじめっぽいのが嫌だなと思って。志願者で来ている人たちをボロクソ言って、それを切り取って拡散させて再生回数を回って喜んでいるのは、どうなんだろうと」
ヨッピー氏によれば、メディアに出てくる「経営者的な経営者」はどこかサイコパス的な要素がある。一方、亀山氏については「最初はサイコパスかと思ったが、結論はサイコパスではない」と評する。
亀山氏は50歳になるまでメディアに出なかった人物だ。元々イメージのよくない会社だったため、マイナスを0に戻すために自ら表に出始めたという経緯がある。ロックフェラーが自分のことを語らなかったエピソードを引き合いに、自分自身を消していくことが企業経営にとって有効である可能性も示唆された。
対談の終盤、ヨッピー氏は資本主義とSNSという2つの「成功の物差し」について言及する。
「資本主義という分かりやすい成功の尺度に加えて、SNS主義みたいな成功の尺度も最近増設された。でも世の中にはもっといろんな幸せの尺度がある。家で育てているミニトマトがいっぱいなった、という尺度を自分で持ってもいい」
この発言を受けて、亀山氏は冒頭の「3つの優先順位」を問うた自分自身を振り返る。
「俺、俺よりも上のあれだ。私が反省いたしました」
承認・稼ぎ・人間関係のどれを優先するかという問い自体を超えて、そもそも優先順位をつけなくてもよいという視点だ。仕事を頑張ってもいい、SNSに注力してもいい、家に帰って配偶者と過ごす時間に重きを置いてもよい。幅は自分で決めるしかない。
大川氏は最後に、自身のスタンスをこう振り返った。「実質、社員はずっと作らずに役員だけでやってきたので、京都にもさっと引っ越せた」。事業を大きくする方向に振り切ることと、自由を確保することの両立を、彼自身のやり方で模索し続けている。
本対談は、クリエイターと経営者の境界が溶け合う時代の働き方を考えるうえで、3者それぞれの異なる立場からの示唆に富んだ内容となった。承認・稼ぎ・人間関係のいずれを優先するかという二者択一ではなく、自身の気質(ドーパミン型かセロトニン型か)を見極めること、上昇志向を一度掴んでから判断すること、そして資本主義・SNSの外側にも無数の幸福の尺度があることを認めること。AI時代において属人性が価値を持つ一方で、その属人性に縛られない「もう一つの軸」を持つことの重要性が浮かび上がった対談だった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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