M&A売却で数億を手にしても「お金がない」と口にする若手経営者が増えている。DMM亀山会長が語る、人と比べるほど不幸になる現実と、20代・30代でやるべき自己投資のリアル。資産形成の本質に迫る対談。
M&Aで数億円を手にした若手経営者や、数千万円規模の資産を持つ経営者へインタビューを重ねるなかで、最近強く感じることがあります。それは、彼らの口癖が決まって「お金がない」だということです。
昔と比べれば十分な資産を持っているはずなのに、周りの友人がさらにお金持ちになっていくと、自分が1億円持っていても周囲が3億円持っているからお金がないと感じてしまう。そんな相対的な貧困感がキラキラした世界の裏側で広がっています。
そのなかで唯一、その種の発言をしないのがDMM.com会長の亀山敬司さん。今回は亀山会長に「お金の不安」とどう向き合うべきかを伺いました。
亀山会長が振り返る一番お金がなかった時期は、20歳ごろ。最後に予定していたアクセサリー販売が失敗し、預金が10万円だけ残った状態でした。それでも「とりあえずそこで何とか食いつなげる」と思っていたといいます。
旅をしていた時期にアメリカでカジノに通い、3日間寝ずにルーレットやバカラを続けて30万円を負けた経験も。駐車場でフラッと意識が遠のき、車と車の間で寝てしまった隙に荷物を漁られたものの、ストッキングに入れて腹巻きのように巻いていた現金とパスポートは無事だったそうです。
その後はニューヨークで日本食レストランの仕事やデリバリーで食いつなぐ。「ない時って言っても最低10万はあった」と振り返ります。
何億持っていても不安な人は不安になる。亀山会長はその理由をこう説明します。
資産はそのままにしていると毎年5%ほど目減りしていく。徐々に減っていけば「あと何年持つのか」という不安に変わる。逆に、現状の資産額そのものよりも、これから先いくらずつ毎月入ってくるかが見えていれば不安にはならない。
つまり鍵はキャッシュフローです。経営者が不安になりやすいのも、自分の会社が傾けば自分も潰れるという構造があるから。亀山会長自身、飲食店を営んでいた頃は「不安な時は、もっと営業時間を延ばしていた」と語ります。物理的に働く時間を増やすことで稼ぎを伸ばす。これは経営者ならではの発想です。
勤め人は収入がある程度決まっているため、ポイ活や節約に時間を使うことに合理性があります。一方で経営者の場合は、節約に時間を割くより営業時間を1時間延ばすほうが利益が増える。
亀山会長のアドバイスはシンプルです。
- 月30万円の収入があるなら、生活費は10万円ほどに抑え、20万円を投資やビジネスに回す
- 失敗もあるが、基本的にお金があればあるだけ利益も取りやすい
- トラック1台でやっていた事業を2台に増やすように、規模を少しずつ拡大する
- 利益が増えたらまた投資に回し、生活費は10万円→15万円→20万円と緩やかに上げる
亀山会長が特に強調するのが、20代の過ごし方です。
「20代の間はお金よりも本当に自分に投資して、稼げる力をつけたほうがいい。消費は我慢してもいいんじゃないか。我慢した分だけ、30代になったら2倍3倍買えるようになる」
たとえばリボ払いで年15%の金利を払うのは、0よりもさらにマイナス。少し我慢すれば4〜5年後に2〜3倍いいものが買えるのに、早く欲しいからと使ってしまうのはもったいない。これは経営者だけでなく勤め人にも当てはまる発想です。
英会話やジムなど、自分への投資はそのまま将来のリターンになる。「ワークライフバランスは月単位ではなく、30年単位で考えろ」というのが亀山会長の提言です。
話題は資金調達にも及びました。聞き手は昨年初めて資金調達を行い、自社株比率が81%になったといいます。残り19%を他の株主が持つ状態をどう捉えるか。
亀山会長の答えは明快です。
「半分くらい他の株主がいると微妙。100%だったら一体化するから迷いがない。でも10数%程度なら、もう100%自分のものだと思ってやっていくのが理屈としていい」
中途半端に株主を意識するとサラリーマン的なマインドになってしまう。資金調達するなら覚悟を決めてやるべきで、調達したお金で派手なオフィスにしたり個人の趣味的なインテリアに使ったりする経営者は本末転倒だと指摘します。
「人のお金が入っているというのは、5%でも責任重大」というのが亀山会長の感覚です。
亀山会長自身は、個人で貯金や資産運用をほとんど意識していないといいます。生活費だけは気にするが、「いくら貯めよう」と思ったことはない。資産は基本的に会社に貸し付ける形で持ち、自社に投資するのが最も合理的だと考えています。
「自社株が一番伸びる」と信じる経営者の自信そのものです。AppleやAmazonの株を買うのも一つの選択肢だが、それは自分の能力に限界を感じてからでいい。若いうちは自分自身と自社が最大の投資先になる、というのが亀山会長の哲学です。
人と比べて不幸になる感覚に対して、亀山会長は「コミュニティを変えること」を勧めます。
キラキラした起業家コミュニティだけでなく、地方でワンオペで飲食店を回している人や、親の介護を抱えながら家で頑張っている人など、別の世界に触れる。発展途上国を旅するのもいい。
「同じ年代層の中でも結構差はある。介護で何千万、何億と負担している人もいる。そういう状況を知ってもなお『お金がない』と言うのはどうなのか」
そして、抜け出したいなら根性論的にでも今は我慢して、時間を使ってでも稼ぎ、勉強し、できることから始めるしかない、と語気を強めました。
最後に亀山会長が示したのは、「希望」の話でした。
10万円の貯金が11万円、12万円になっていけば成長している実感がある。それが希望になる。いきなり100万円にしようとしなくていい。1万円でも5万円でも上積みしていく。時給1000円が1200円になる。そうした小さな前進こそが大切だといいます。
身体も同じで、鏡の前で腹が出てきたなと思えば辛いけれど、少しずつ凹んでくれば嬉しくなる。英語が少し話せるようになれば進化を感じられる。
「興味のある方向でいいから、自分を成長させること。誰にも迷惑をかけずに筋肉をつけているだけでも幸せじゃないか」
資産の額や他人との比較ではなく、自分自身がちょっとずつ良くなっている実感を持つこと。それが「お金がない」という呪縛から抜け出す本質的な方法だと亀山会長は語りました。
資産10億円でも「お金がない」と感じてしまう現代。その正体は、額そのものではなく他人との比較と、減っていく不安にあります。亀山会長が示したのは、20代は消費せず自己投資せよ、経営者なら自社に100%投資する覚悟を持て、そして他人ではなく過去の自分と比較して成長を実感せよ、というシンプルな指針でした。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
