分断と格差が叫ばれる時代に、私たちはどう生きればいいのか。DMM創業者・亀山敬司会長が語ったのは「強い側から避ける」「接点を持つ」「年を取っても新しいことに飛び込む」という極めてシンプルな処方箋だった。SNS、政治、世代、エリート層──さまざまな分断の正体に切り込む対談記事。
SNS上の罵り合い、ロシアとアメリカの対立、貧富の格差、世代間ギャップ──「社会が分断されている」という言葉を耳にしない日はありません。私たちはこの時代をどう生きていけばよいのでしょうか。
M&A CAMPでは、DMM.com創業者である亀山敬司会長に「社会の分断の解決方法」というテーマで話を聞きました。お金儲けの話ではなく、強者と弱者、グローバルとアンチグローバル、SNSとオールドメディア、若者と高齢者──さまざまな対立軸に対する亀山会長の見解は、極めてシンプルかつ実践的なものでした。
社会の分断をどう乗り越えるか。亀山会長が冒頭で示した答えは、意外にもシンプルなものでした。
「強い側から避けることですね。強い側って大体いい気になってるから」
収入による分断、メディア(オールドメディア対SNS)の分断、政治(極右対極左)の分断──現代社会には数えきれないほどの対立軸があります。SNSでは攻撃的に話したほうが視聴数を稼げるため、誰もが煽り合いに加担しやすい構造になっている。テレビ局は「SNSは騙されている人ばかり」と言い、SNSは「テレビは偏向報道」と言う。お互いを学ぼうとしない姿勢こそが、分断を加速させていると亀山会長は指摘します。
さらに、YouTuberの問題点として「自分で体験したことではなく、他のSNSや情報を元に煽り立てるコンテンツが多い」ことを挙げました。「外国人がどうとか」「日本人ファースト」といった政治的トピックは、まさに分断を煽る典型例だといいます。
アメリカではLAやシリコンバレーといった海岸エリアがグローバル派、内陸部がアンチグローバル(アメリカファースト)派に分かれる傾向があります。この差は何から生まれるのか。亀山会長の答えは「接点があるかないか」でした。
海外との取引があったり、外国人の友人がいたり、エリート層との関わりがある人は、相手を一括りに敵視することができません。「どの世界でもいいやつもいれば、そうでないやつもいる」という当たり前の事実を、接点を通じて体感しているからです。
一方、ずっと部屋の中にこもってYouTubeを見ているだけの人は、誰とも会っていない。中国人にもエリートにも会わず、情報だけで世界を判断するため、極端な見方になりやすい。
聞き手も、先日中国とオーストラリアを訪れた経験から「意外と中国人でも大人しい人がいっぱいいる」と気づいたといいます。亀山会長は「裸で会えばわかる。中国人にろくでもないやつが多いと思っていても、実際に会ってみたら違ったということもある」と語り、接点を持つことの重要性を強調しました。
しかも、海外に行く必要すらありません。街で会った中国人を避けるのではなく、コミュニケーションを取ろうとすればいい。それだけで世界の見え方は変わるというのです。
話題は、過激な発言で注目を集めるインフルエンサーにも及びました。亀山会長は、ある人物について「あるエリアからすれば『意外といいおっちゃん』『正論を言っている』とも見える。煽るのがテクニックだとわかるんだけど、すごい」と評価しつつ、「煽ったのを真に受けてもいけない」と釘を刺します。
そして、こう自戒もしました。「自分も4000億行ったこともないのに、4000億の景色とか、人生のバランスとか語っている。そう言ったほうが見る人は増えるけど、中身は大したこと言ってない」
見ている側がリテラシーを持つこと。それが、煽りに流されないための唯一の方法だといいます。
「戦争ってなくならないものなんですか?」という問いに対し、亀山会長の答えは率直でした。
「一生なくならないよ。なくならないんだけど、少しでも起きるのを遅くするとか、減らすとかっていう努力はできるんじゃないかと思う」
諦めずに、しかし過度な理想にも陥らずに、できることをやる。その姿勢が滲む言葉でした。
亀山会長は最近、Instagramのストーリー更新を始めたといいます。きっかけは、Facebookが使われなくなってきたこと、そして女子高生から「LINEはオワコン、今からはインスタです」と言われたこと。
「もうLINE、X、WeChatと3つも4つもやっているから、これ以上やりたくなかった。でも、しょうがないからやってみた」
やってみて気づいたのは、Instagramの「ゆるさ」だったといいます。ストーリーを上げると、普段あまりコミュニケーションがない人からも「面白いね」とコメントが来る。LINEは用事がないと打たないが、Instagramは「これ可愛いね」「元気?」「久しぶりに遊びに行こう」といった会話のきっかけが生まれやすい。
「実際にやってみることで、体感としてわかる」──この姿勢こそが、亀山会長の強さの源泉のようです。
この「自分でやってみる」姿勢の話は、政治の話につながりました。亀山会長によれば、多くの政治家はSNSをほとんど自分ではやらない。だから、なぜ人々がSNSに惹かれるのかが理解できず、選挙で負ける。トランプ元大統領やイーロン・マスクが自分で投稿しているのは、その意味で「偉い」のだといいます。
「マスト(必須)だとわかっていても、大抵やらない。『誰か雇ってくれ』『舞台を作ってくれ』と言うけれど、自分でやらないから街の感覚がつかめない」
これは政治の世界に限った話ではありません。年を取るほど、人は「失敗が怖い」「危ない目にあったら怖い」と新しいものを避けがちになります。
年齢と新しいテクノロジーの関係について、亀山会長は印象的な比喩を使いました。
「iPhoneも今16が出ているけど、年取ってくると、人間としてはiPhone10ぐらいで終わっている。ハードは変えようがないから、せめて中のソフトだけでも16をインストールしておく」
60歳を過ぎてもInstagramに挑戦するのは、まさにこの「ソフトのアップデート」を実践しているからこそ。30代40代でビビっているばかりの人に対しては、「もうちょっと失敗していいんじゃない?」と背中を押します。
失敗を恐れて何もしなければ、世界はどんどん狭くなる。狭くなった世界の中で「なんでインスタなんかが流行ってるんだ」と怒る老人にはなりたくない──そう思うなら、若いうちから新しい体験を重ねるしかないのです。
亀山会長自身、最近はやったことのないことに次々と飛び込んでいます。銀座のクラブに行ってみたら「みんな背が高い」「年賀状を書いてくれる礼儀正しさがある」と発見があり、DJのイベントやブレイクダンスの大会にも観客として足を運んでいるといいます。
「見かけによらず礼儀正しいやつもいる。本当にやばいやつもいるけど、その時は『あいつとは合わないほうがいい』と逆に守ってくれたりする」
会ってみないとわからない。これが亀山会長の一貫したスタンスです。
格差や分断の文脈で、聞き手は「学歴の高い人のほうが大手企業に行きやすいなど、数字としても格差は存在する」と指摘しました。亀山会長はこれを認めつつ、解決の方向性を示します。
「無難に行けば、エリートはエリートのコミュニティに留まる。アメリカでも『ここのエリアから出るな』『ダウンタウンには関わるな』というのがあるし、日本にもある。港区のやつが株(かぶ)──下町には行かない、みたいな」
そして、こう続けました。「頭のいいやつやエリートで集まっているところは世間を狭くしている。気持ちだけ切り替えて『ガバッ』と行けばいけるんじゃない? なんとしたら、勝ち組と言われている奴らがそっち(外)に行くべき」
分断を埋める責任は、むしろ強者の側にある。これが亀山会長の結論でした。
対談の最後、聞き手は「分断は自分の心の中にあって、自分次第でなくせるのかもしれない」とまとめました。亀山会長も同意します。
「もし敵がいるとするなら、それは自分の中にあるんだから、だったら(相手のところに)行ってみろよ、っていう話。分断しているのは自分かもしれない」
強い側から避けること。接点を持つこと。年を取っても新しい世界に飛び込むこと。エリートこそ外に出ること。──亀山会長が示した処方箋は、シンプルですが、誰にでも実践できるものばかりです。
価値観を広げる小さな一歩から、社会の分断は少しずつマシになっていくのかもしれません。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
