DMM亀山会長が2025年の抱負やビジネス予想をテーマに語る。1年単位の目標を立てない経営スタイル、AIがもたらす社会変化、オールドメディアとネットメディアの行方、そしてAI時代における仲間や人情の意味について率直に語った対談を再構成しました。
2025年の幕開けにあたり、M&A CAMPがDMMの亀山会長を迎えて行った対談。冒頭、聞き手から「今年の抱負は?」と尋ねられた亀山会長の答えは、意外なものだった。
「ないです、特に。発展とか考えませんでした」
年末年始は紅白を見たり、おせちを食べたり、麻雀をしたりと普通に過ごし、1年の抱負のようなものは考えなかったという。聞き手が「1人で経営していた時や、社員が数十人だった頃も目標を立てなかったのか」と重ねて問うと、亀山会長は「立ててないかもしれない」と答えた。
社員から「目標を出してください」と言われることはあったが、「どれぐらいいけると思う?」「これぐらい」「じゃあそれでいい」というやり取りで終わっていたという。むしろ亀山会長が考えていたのは、5年ほど先の大きな方向性だ。「これからインターネットかな」と思えば、今のうちから準備を始める。1年単位ではなく、もっと長いスパンで時代の流れを読み、その時その時で打ち手を判断するスタイルだ。
現在は、現場のメンバーが立ててくる予算や計画を「合衆国みたいな形で」受け止め、予定通りに進まなかった時やトラブルが発生した時の対応に注力する役回りだという。
一方、聞き手は今年の抱負として「コンテンツで突き抜ける」ことを掲げた。昨年はYouTubeに付随するエージェント事業や複数チャンネルの立ち上げなど、いろいろなことに手を広げすぎたという反省がある。
「動画コンテンツ1本に一旦絞って、組織も全集中させる」
動画やメディアはあくまで拡張機能であり、それぞれのチャンネルごとにビジネスモデルがあって、それを拡張させるためにYouTubeメディアを突き抜けることが大事だ、というのが今年の方針だ。資金調達も予定しており、1年かけてコンテンツを作り続ける構えだ。
5年ほどの時間軸で注目している領域を尋ねられ、亀山会長が真っ先に挙げたのはAIだった。2〜3年でかなり来ると見て、すでに社内外で手を打っているという。
「これから変化を起こすとすれば、そこは大きい。AIの事業というか、社会全体に影響を与えるから、インフラ全体的にね」
価値観も変わってくるし、ある意味で揺り戻しもあるが、大きな流れとしてはAIに対する拒絶感が減っていくと見る。「AIか分からない、使ってる状態がわからない状態」も出てくるという。
人々がAIに馴染むまでの時間軸は、5年ほどで社会的に実感されるようになるのではないか、というのが亀山会長の見立てだ。
動画やメディア事業に関わる二人にとって、AIは脅威でもありチャンスでもある。動画を量産する必要があれば、テロップ生成などにAIを使って効率を上げることになる。さらに、亀山会長のように顔を出していない発信者であれば、過去の動画を学習させたボットがコンテンツを回すことすら考えられる。
ただし、AIによって毎日100本、200本と動画がアップされる時代になれば、コンテンツは埋もれてしまう。AIが踊る可愛い女の子の動画と、リアルな人物の動画が混在し、やがて比率が逆転する可能性もある。
「コンテンツという、今うちがやっている事業自体も大きい変化機なのは間違いない」と亀山会長。だからこそ、流れに逆らうのではなく、変化をチャンスと捉えて乗ったほうがよいという立場だ。
「時代の流れは自分で変えられるなら変えてもいいんだけど、変えられないだろう。みんな便利なものや効率のいいものを求めるのは、経営者だけじゃなく一般のユーザーもそう」
話題はメディアの構造論にも及んだ。最近はオールドメディア(テレビ・新聞)よりもYouTubeなどのネットメディアのほうが自由度が高く見え、「オールドメディアは信用できない」という空気が広がっている。しかし、亀山会長はそこに警鐘を鳴らす。
国内の伝統メディアには外資規制があり、外国人が一定割合以上を持てない構造になっている。一方、YouTubeもFacebookもInstagramも、運営は外資100%資本だ。仮に国内メディアが消滅すれば、情報流通の主導権ごと国外に渡る恐れがある。
「下手すると、日本の自主権を失う可能性もある。そんな中で僕が『ちょっと危険かもよ』みたいなことを言ったら、僕の動画が表示されなくなることもできるわけで」
だからこそ、亀山会長はNHKを含むテレビ局には「もう少し頑張ってしっかりしてほしい」と語る。世間ではテレビや新聞の中立性に疑問が持たれているが、ネットも決して中立ではない。むしろ偏見にまみれた情報が、過激な発言ほど目を引いてしまう構造がある。
「だから、むしろこっちが頑張って生き残って、こっちの部分の声もちゃんと拾い上げて、なるべく中立的なものを出してくれるメディアがあってほしい」
聞き手は、自身の世代経験を振り返る。小学生の頃はテレビの言うことを全部本当だと思い、高校生でYouTubeを見始めるとYouTuberの言うことが本当だと思うようになった。今ではテレビが作ったコンテンツも個人が作ったコンテンツも同じ画面に並び、「誰でも、それっぽいことを言えばそれっぽく聞こえてしまう」状態になっている。
亀山会長も同意する。「正直、何も間に受けられない。みんな迷子になっちゃう」。言い切ってしまう発信者ほど説得力があるように見え、結果として過激な人ほど稼げてしまう構造があるという。
聞き手は自身が目指すメディア像を、こう語った。「自分の偏見を前提に、言いたいことをちゃんと言えるメディア。出てくれた人の本質や本音を引き出せるメディアにしたい」。
これを受けて亀山会長は、「テレビに洗脳されてきたからネットへ、と言うけれど、これからはネットの中で洗脳されていくこともある。それも含めて、みんなが次を自分でどう生きるか決めてほしい」と語った。
話題は、AI時代の働き方にも及んだ。最近アメリカから入ってきた「ソロプレナー」(1人で起業し、アントレプレナーシップを持つ働き方)という言葉に触れながら、聞き手は「1人で何億も稼ぐプレイヤーが増えている」と紹介する。
亀山会長も、AIを使いこなせば「俺1人でいいわ」という社長が出てくる可能性を認める。マーケティング会社や航空会社のような事業ですら、1人でAIを使いこなしながら整理する会社が出てくるかもしれない。社員100人を抱えるよりも、1人で経営したほうが収入が大きいケースもあり得る。
そうなった時、義理や人情はどうなるのか。亀山会長の答えは明快だ。
「俺は必要だと思うけどね。生きていく意味で。効率だけ求めるなら1人でも生きていける。でも、人類に1人だけ、自分1人だけの人生が楽しいかと言われると」
仮に1人で豊かな生活ができたとしても、共有する相手がいなければ、何のためにやったのか分からなくなる。お金もただの数字でしかなくなる、と。
ただし、これからは「プライベートで人情、仕事は合理的に」という切り分けが進む可能性がある、とも見ている。AIに任せれば1日8時間働く必要すらなくなるかもしれない。それでも亀山会長自身は、緊張感と温かみが同居する仕事の人間関係を「結構好きだ」と語った。
対談を通じて亀山会長が繰り返したのは、「時代の流れは変えられない。その中でどう自分を保つかが大事」というスタンスだった。AIが社会のインフラを書き換え、メディアが外資のプラットフォームに集約され、ソロプレナーが台頭する。そのすべてを「いい世界かどうか」と判断することは難しい。それでも、変化をチャンスとして捉え、長いスパンで方向性を見定めながら、その時々で打ち手を選んでいく——亀山会長の経営観は、抱負を立てない代わりに、変化を観察し続けるしなやかさに支えられているようだ。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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