DMM亀山会長と田端信太郎氏が、競争の本質、経営者の倫理観、そしてビジネスメディアが抱える構造的課題について本音で語り合う。資本主義の現実とメディアの果たすべき役割とは。
M&A CAMPに、DMM.com創業者の亀山敬司会長と、メディア業界の論客として知られる田端信太郎氏が登場。司会の進行のもと、ビジネスにおける「怖さ」や競争の倫理、そしてメディアビジネスの未来について踏み込んだ議論が交わされた。
冒頭、話題に上ったのは亀山会長の「強引な経営手法」について。競合企業を買収できなかった場合に、その会社の人材を引き抜いたり、買収か競合化かの選択を迫ったりする手法は、ソフトバンクの孫正義氏や米国スタートアップ投資の世界でも見られる定石だが、世間的には「えげつない」と評されることもある。
この指摘に対し、亀山会長は率直に答える。
「正直、当たってる部分もある。例えばアベマ会話(オンライン英会話事業)の買収ができなかった時に、現場が結果として人材引き抜きをやったとしたら、俺が止めなかった以上、実質的に共有していたということ。やっていいよと言ったのと一緒だ」
そのうえで、亀山会長はビジネスにおける戦いの本質をこう説明する。
「ビジネスにはどうしても戦いという側面がある。ライバルがいた時にどう戦うか。0から始めるか、買収するか、結果的に人が引き抜かれてくるか、すべては手段の話。違法じゃなければ別にいいんじゃないか」
亀山会長は、ビジネスの本質について踏み込んだ表現を使った。
「ビジネス界ってやっぱり弱い者いじめみたいなところがある。戦いの時に強い者と戦うかと言ったら、俺は戦わない。逆に、これは戦って勝てるなと思ったら戦いを挑む。勝てる戦いをしてちゃんと勝つ、という考え方になってしまう。弱きをくじき強きを助ける、というのが資本主義の基本になってしまうんだよね」
アベマ会話の事例も具体的に語られた。当初は2年で黒字化する計画だったが、亀山会長が「これでは1位になれない」と判断し、料金を半額にして広告を打ちまくる戦略に転換。5年の赤字を覚悟して進め、4年目でようやく黒字化した。しかし黒字化して2年経った頃にAIの台頭という新たな波が押し寄せている。
「成長が止まってきて、今までの損を取り返せないかもしれない。そうなると今度はAI英会話をやらなきゃいけない。そこでまた自社でやるか買収するかの判断になる。だから正直言って、経営者なんてロクでもないもんよ」
司会から「ご自身では悪人だと思いますか、善人だと思いますか」と問われた亀山会長は、含蓄ある答えを返した。
「こういう時に大目に見て『俺は善人だ』っていう人ほど悪人な気もするし、『悪人じゃないかな』ぐらいが、ある意味正しい善人な気もする」
娘が将来弁護士になりたいと言っていることに触れながら、亀山会長は経営者の倫理観についてこう続けた。
「子どもが小さい子をいじめたら『お前もいじめするなよ』と言うのが俺。でも資本主義の世界に入ったら、現実問題そういう世界だ。だから自分がやっていることが、ある意味最低だと思わなきゃいけない。そこに罪悪感もなくやっているやつはロクでもない」
対する田端氏は、自身のスタンスをこう述べる。
「ビジネスの世界はみんなやりたくてやってきている。フェアプレイという前提なら、相手が弱いからといって変に気を遣う必要はない。ビジネスは金の奪い合いで、政治と違って命の奪い合いじゃない」
話題は本題のメディア論へ。司会が、ビジネスメディアが売上のためにタイアップ広告に依存する構造について問いかけると、田端氏が口火を切った。
R25、ライブドア、コンデナスト、LINEと、メディアビジネスの第一線を歩んできた田端氏は、近年話題のビジネスメディアの収益モデルに対して厳しい視線を向ける。
「『ロングタームグリード』という言葉がある。長期的な強欲という意味。目の前でよくわかっていないお客さんをはめ込んでテイクして儲けても、せいぜい1年。でも長期的には『あそこの会社、そういうことするらしいよ』という噂が立ち、本当にいいお客さんも来なくなる」
さらに田端氏は、メディアビジネスの本質を「お金で買えない価値」のマスターカードのCMに例えた。
「メディアはある意味、欲を扱う商売。形のないものと欲望を交換するビジネスだ。アイドルの事務所が10億円積まれて枕営業させたら、その瞬間にダサくなる。値札がある世界になった瞬間に、本当の意味でホレ込んでもらえなくなる」
そして田端氏は、特定のビジネスメディアを名指しせずも、こう批判する。
「クライアントに目配せすること自体は当然。でも本当はみんなのアイドルなのに、安いお水の姉ちゃんみたいにペコペコしてご機嫌取りをしてしまっては、自分の価値を最大にマネタイズできていない」
亀山会長も、かつてメディア事業に手を出した経験から語る。
「一般的なエンタメ系メディアを立ち上げたが、結局やっていたのは芸能ネタの内々で書く記事ばかり。ビジネスとして成立させようとすると、こういうことしかやることがないと気づいて手放した。俺みたいな人間がメディアに手を出すべきじゃない」
そのうえで亀山会長は、メディアと金融という2つの業界の特殊性を指摘する。
「ビジネスメディアって、自動車業界、食品業界、何でもあらゆる他の業界に対して『こうあるべきだ』と説教するポジションを取る。同じことをやれるのは金融業界だけ。証券会社や銀行の調査部が、他の業界に偉そうなことを言う。情報と金は世の中で一番強いものだから、そこを抑えている2つの業界はメタな位置からマウントを取れる」
しかし、その権力性ゆえに自浄作用が必要だとも。
「医者と弁護士は、自分のためにプロフェッショナルの能力を使ってはいけないとされている。メディアもそういう一つのモラルがないと長続きしない」
田端氏は、現状のビジネスメディアの収益モデルについて、踏み込んだ予言を示す。
「PIVOTのあのやり方を続けていると、あと3〜4年ぐらいで保たなくなる気がする。だからこそ今のうちに少し軌道修正して、保険をかけておかないと、賞味期限が3〜4年で燃え尽きるよね」
そして同世代の佐々木紀彦氏や山田俊浩氏への敬意を口にしながら、こう付け加えた。
「同世代でめちゃくちゃ尊敬しているからこそ、わざわざマジレスしている。ただ、その方法だけはちょっと考え直してほしい」
議論の最後、司会者は自らの番組「M&A CAMP」の収益化について率直に相談する。田端氏が提案したのは、メディアにリアルコミュニティをくっつけるモデルだった。
「古典的だけど、メディアにコミュニティをつけて『MA CAMPクラブ』のようなものにする。配下の中で自然発生的に生まれた出会いは手数料を取らない。トランザクションでフィーを取ろうとすると、お互いに無理にマッチングさせようとして長続きしない」
さらに田端氏は、ブランドビジネスとしてのメディアの本質を強調する。
「メディアで大事なのは長続きすること。金とメディアは究極的にブランドビジネス。三井住友、三菱だって、桜銀行とわざわざ変えたのに結局戻った」
田端氏は、司会者がそもそもM&A CAMPを始めた原点に立ち返るべきだと助言する。
「若いやつが変にイグジットして、一瞬お金に目がくらんでバイアウトしちゃうんだけど、それは必ずしも成功でも幸福でもない。そういう変なM&Aの結果、人生が悪い方向に変わっちゃった人を少しでも減らしたい——そういう志、大義を最初に頭の枕詞として打ち出した方がいい」
司会者自身、過去にロックアップ期間中に病み、田端氏に相談したエピソードも紹介された。「全額返金して喧嘩しろ」というアドバイスを受けて立ち直り、結果的にロックアップを早めて返金し、本チャンネルを立ち上げた経緯がある。
最後に亀山会長は、メディアに対する自身の立場を笑いながら締めくくった。
「メディアの使命のもとに、メディアの道を行ってください。商売人の僕は手出ししませんから」
弱肉強食の現実を直視しつつ、長期的な信頼とブランドを築くこと——亀山会長と田端氏が示した経営とメディアの本質は、競争のただ中で意思決定を続ける経営者にとって示唆に富むものとなった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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