DMM.com会長・亀山敬司氏が語る、信頼していた仲間に裏切られた時の対処法。100%信じすぎないこと、ガバナンスと信頼のバランス、そして経営者自身が襟を正すことの重要性について、自身の体験を交えて率直に語る。
会社を経営していると、信頼していた役員や仲間に裏切られるという経験は決して珍しくない。DMM.com会長の亀山敬司氏は、若い頃にそうした経験をした際の心境をこう振り返る。
「最初は若くて多感な時期だから、ドーンとショック受けて1年立ち直れない時もあった。怒るというよりも悲しさというか、損害額よりはその人間を失う方が痛い」
裏切る側の多くは、本物の悪人ではない。むしろ「弱さでやっちゃう」ケースがほとんどだという。目の前にお金があれば持っていってしまう、それだけの話だと亀山氏は語る。
権限を持つようになると、必ず外部から悪い誘惑が近づいてくる。亀山氏はそのパターンを次のように説明する。
「悪いやつが『一杯飲みましょうか』から始まって、接待していって、だんだんそれが回数が多くなってきて『この商品券どうぞ』とか『お元気ですか』みたいになって、だんだんエスカレートする」
そして万が一会社をクビになったら一緒にやりましょう、と耳触りの良いことを言われる。しかし実際に不正が発覚して地位を失った後にその相手を頼っても、「何のことですか」と切られてしまう非情な世界だという。
「目先の中で『仲間だな』とか勘違いしたりすると、はしごを外される。素直すぎても良くない」
では、なぜ手を出してしまう人と、出さない人がいるのか。亀山氏の答えはシンプルだ。
「自分がどこまで大きいものを目指すかという話。1000万ぐらいの男じゃないよ、将来10億100億の男だと思ったら、多分手を出さない。むしろその信用のためなら、できたとしてもやらない。善悪以上に、目指すものが大きいかどうか」
100万円を目の前にしても、それで失う将来の信用や家族の信頼が見えていれば、人は踏みとどまれる。逆に言えば、その大きな絵が見えなくなった瞬間、人は誘惑に負ける。
かつての亀山氏は、管理を厳しくすることに否定的だった。しかし組織が大きくなるにつれ、考えを改めたという。現在DMMグループには内部監察室があり、年に1回程度、各部署を回って財務状況などをチェックする仕組みが整えられている。
「10年何も来ないと『まいっかな』みたいに、だんだん緩んでくるのも人。毎年税務署が来たらみんな税金ちゃんとしようと思うかもしれないけど、10年来なかったら緩む」
人間は楽な方に流れる生き物。だからこそ、定期的なチェック機能が組織を健全に保つ。
一度過ちを犯したメンバーを雇い続けるか、退場させるか。経営者が必ず直面する判断だ。亀山氏はその基準についてこう語る。
「ただだらしなくてやっちゃうケースなら、もうやらない可能性もある。でも、ちょっと手の混んだずるさがあると、また同じことをやりそう」
ずるい中でも頭が切れる人間は、「こうやれば分からないんじゃないか」と能力を悪い方向に使う。これを更生させるのは極めて難しい。
「ある人間を更生させられるかというのは結構悩みどころ。少年院でも、更生させようとして切れない時もあるし、逆に跳ね返ってくることもある。一緒に闇落ちしちゃうケースもある」
裏切られた側が「こいつのために頑張ってきたのに」と性悪説に振れてしまうと、純粋すぎた経営者ほどダメージが大きい。
では、どうマネジメントすればいいのか。亀山氏の結論は明快だ。
「100%信用しちゃいけないというのが、ざっくりした結論。10%ぐらい残しとくと、10人のうち1人ぐらいそんなことあったなと思っても、残り9人が信じられると思える」
誰かに任せなければ何もできない。だから9割は信じる。それが基本スタイルでなければ、決裁を与えられず人も育たない。ただし「100%」ではなく「90%」にすることで、何かあった時の心の備えになる。
もう一つ、亀山氏が強調するのが経営者自身の振る舞いだ。
「社長自身が公私混同して、会社の金で女の子にマンション買ったり旅行に行ったりしていたら、何も言いようがない。自分が公私混同していて、他のやつに『やるな』と言うのは説得力がない」
亀山氏自身、家族経営の飲食店時代は「適当だった」と認める。レンタルビデオ事業の頃から襟を正そうとし、人が増えるにつれて自分自身を律してきた。それでも、社員数が増えれば必ず公私混同するエセ幹部は出てくるという。
「税金を安くごまかしたら、他のやつが真似して同じことをやったら意味がない。だったらちゃんと自分の儲かった分は会社に入れて、税金かかってもそっちの方が特」
万が一の事故が起きた時の対応にも、亀山氏の哲学がある。
「いきなり管理体制を厳しくするとかはやらない方がいい。それが過剰になりすぎると、全体に張りが出てこなくなる。経営者がブレすぎると、現場が大ブレになる。なるべく平常で経営できたらいい」
微調整はする。しかし方針が大きく揺れれば組織全体が揺れる。一定の信頼ベースを保ちながら、必要な仕組みだけを淡々と整える。それが亀山流のマネジメントだ。
年を取って短気になる人は多いが、亀山氏自身はむしろ昔より穏やかになっているという。
「年取って短気になる人は、自分の中での自信がなくなる、ご機嫌でなくなることへの苛立ちがある。能力が落ちたり周りから必要とされにくくなったりすると、自分のアイデンティティを保つために意固地になる」
目指したいのは怒らない、穏やかなおじいちゃん像。それは経営者として、人間として、最後にたどり着きたい姿でもあるのだろう。
人間は強い生き物ではない。だからこそ9割は信じ、1割の余白を持ち、自分自身が襟を正す。亀山氏が積み重ねてきた経験から導き出された、シンプルで実践的な信頼関係の作り方である。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
