物価高で実質賃金が目減りする中、サラリーマンはどうすれば給与を上げられるのか。DMM.com会長の亀山敬司氏が、転職の見極め方から経営者視点でのキャリアアップ戦略まで、雇用主側のリアルな本音を語った。
物価上昇により実質賃金が目減りする昨今、サラリーマンは「もう少しもらってもいいのではないか」と考える機会が増えている。一方で、経営者側からすれば「払いすぎではないか」というずれが必ず生じるものだ。
今回M&A CAMPでは、DMM.com会長の亀山敬司氏に、雇われる側の立場でどう給与を上げていくべきか、経営者から見たリアルな評価軸を語ってもらった。
物価上昇局面では、ベースアップで最低でも5%程度は上がる年もある。それ以上であれば「評価されている」と捉え、満足できなければ「DMMでこういう事業をやっていました」とアピールして転職する、というのがよくあるパターンだ。
しかし亀山氏は、転職活動が必ずしもうまくいくわけではないと指摘する。アピール時にはいいことばかり言うため、入社後に「思ったほどではない」となれば伸び悩み、場合によっては給与が下がることもあり得る。
さらに見落とされがちなのが、給与決定側の保守性だ。
「給料って上げても下げにくいんですよね。だから、今年たまたまよかっただけかもしれない、もう1年様子を見ようと、保守的になりやすいのが給与を決める側の立場です」
本来なら10%上げてもいい人材でも、「来年もよければもっと上げよう」と判断が遅れることがある。働く側はすでに期待値が高まっているため、ずれが生じやすい。
だからこそ、思ったほど上がっていなくても1年程度は様子を見るという選択肢がある、と亀山氏は語る。次の会社に行けば信用・信頼の積み重ねはゼロからやり直しになるため、「めったやたらに転職すればいいというものでもない」という。
起業せず社員として働く場合、評価を受けるしか道はない。問題はどんな会社で評価を受けるかだ。
亀山氏が警鐘を鳴らすのは、上司との飲み会で出世が決まるような会社の構造である。
「『あの人、仕事できないのにいつも飲みに行ってたから出世した』みたいな会社は見限ったほうがいい。そういう出世の仕方は他の会社で通用しないんです。人脈みたいな話になってしまう」
一方、実力で評価される会社にいれば、たとえ評価が薄いと感じても、そこで身につけた能力は転職先でも活きる。社員として働く以上、「持ち運べる能力」を育てる視点が欠かせない。
給与の上げ方を具体的に考えるとき、亀山氏はキャリアのステップを段階的に説明する。
営業職の場合、まずは売上を伸ばすことでホープになれる。しかし次のステップに進むには「粗利」の概念が必要だ。
「10%値引きして売上げました、と言っても売上は上がります。でも値引きしないで100万売った人と、110万を10%値引きで売った人なら、粗利では前者のほうが高い。売上と原価という概念を持たないと次のステップに行けない」
ここまで理解すると営業部長クラスまで上がれる、と亀山氏は言う。引いてでも取るべき仕事か、引かずに売れる仕事かの判断ができるようになるからだ。
さらに上のレイヤーを目指すなら、自分がかけた交通費・人件費・交際費まで差し引いて「自分はいくら利益を残したか」を考える視点が必要になる。ここまでくれば担当役員クラスだ。
そしてその先には、家賃の妥当性、資金繰りまで含めた視点がある。
「売掛金で3ヶ月後に入金される取引と4ヶ月後の取引は違う。資金繰りまで含めてCFO的な話まで頭に入ると、ほとんど幹部レベルになれる」
亀山氏が示すキャリアの階段は明快だ。
- 売上が見える人
- 粗利が見える人
- 販管費を引いて営業利益が見える人
- 金利等を含めて経常利益が見える人
- 税金まで見て純利益が見える人(社長レベル)
この順番でポジションが上がっていくという考え方である。
通常の昇給はせいぜい5〜10%が限界だ。銀行員でも保険でも建築でも、いきなり倍になることはない。しかし亀山氏は、現代だからこそ大きく飛び級できるチャンスがあると語る。
それは「自分から提案する」スタンスだ。
「テレビCMばかり打っている会社にSNSをやったほうがいいと提案できる。AIを導入したら人員を半分にできると提案できる。そういうのはむしろ若い人のほうが理解していたりする」
DMMでもそうした提案は実際にあるという。「SNSマーケティングを僕にやらせてください」「中国向け販売をやらせてください」と理屈が通った提案を実行し成果を出す社員には、一気にその領域を任せることもある。
「半年やらせてください、結果が出なかったらやめますから、と言ってくれば、比較的チャンスをくれる経営者は多い。実力で結果を出した実績は、その会社で評価されなくても、次の転職で必ず受ける」
勤めている側と雇用している側では、考え方が大きく異なる。社長はうまくいこうが悪く行こうが全部自分に返ってくる。一方、社員は基本的にそれに左右されない。
だからこそ、給与を上げる側としては「自分の考えに近い人」に上げたいと思うのが自然だ。
「経営者視点で考えられるメンバーが増えれば増えるほど、会社全体も伸びる」
大手企業であればあるほど、提案による経費削減や効率化のインパクトは大きい。月1,000万円の経費を削減できれば、年間数億のインパクトになる。
亀山氏のメッセージは明快だ。
会社のルールの中で決まる昇給は、せいぜい5〜10%が限界。一方、自分から提案して仕組みを変えられる人材になれば、レイヤーが一気に上がる可能性がある。
まずは1年、信頼を積み重ねながら様子を見る。その上で、売上→粗利→営業利益→経常利益→純利益と、経営者の視点に近づいていく。そして時代の変化に合わせた提案を、自分から発信していく。
「言われたことしかやらない人間は、その中の限界でしか上がらない。500万が550万、600万でとどまる」
物価高と早期離職が当たり前になった時代だからこそ、サラリーマンが給与を上げる本道は、経営者マインドを身につけ自ら提案することにある。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
