DMM.com亀山敬司会長が、27歳経営者の悩みに答える形で新規事業立ち上げの方法論を伝授。ビジネスモデル設計、若手抜擢の判断基準、本業と逆張りの事業を作るリスクヘッジ、内部留保ではなく人への投資を選ぶ理由まで、450以上の事業を生んだ経営者の哲学を凝縮。
本記事は、人材領域で4事業を展開し今期売上35〜40億円を見込む27歳の経営者(株式会社右斜め上)が、DMM.com会長・亀山敬司氏に新規事業立ち上げと組織づくりについて相談した対談を再構成したものです。
相談者の会社は19歳で起業し、現在8期目・正社員約180名。SES、人材紹介、採用コンサルティング、キャリアコーチングの4事業を、すべて自己資本で運営しています。各事業のリーダーには採用権限・ビジネスモデル設計・マネジメントまで任せており、「主体性をどれだけ早期に持たせられるか」を組織運営の軸にしているといいます。
そんな相談者が亀山会長にぶつけたのは、「これから全く異業種の新規事業を立ち上げる際、誰にどう任せるべきか」というテーマでした。
亀山会長がまず示したのは、新規事業立ち上げの基本フローです。
「自分の中でビジネスモデルが見えているなら、そこは自分でやっておけばいい。モデルまで自分で考えてから、運営を任せるパターンが基本」
亀山氏自身も、ビデオレンタル事業を立ち上げた際は自分でモデルを設計し、店長に運営を任せる形を取ってきたといいます。事業数が450を超えてくるとネタが出尽くすため、他人が作ったものに乗っかる形に変わっていったが、それまでは「自分で構築してから任せる」が原則だったと振り返ります。
そのうえで、人材の集め方には2パターンあると説明しました。
- **公開型**: 社内に該当領域の人材がいない場合、「3Dプリンター事業を始めます」とSNSで発信し、応募者・提携希望者を集める
- **隠密型**: 社内人材だけでいける見込みがある場合、真似されないよう水面下で進め、ある程度形になってから一気に公表する
メルカリのような事例も「最初は目立たない形でプロダクトを磨き込み、タイミングを見て一気に広告を打つ」典型例だといいます。
相談者が抱えていた「若手抜擢のバランス」という問いに対し、亀山会長は明快な答えを示しました。
「事業が似た領域で広がっていくなら、立ち上がった事業の副部長を上に上げて、元部長を新規事業に回す。これが一番崩壊しにくいパターン」
さらに事業が増えていくと、うまくいっている事業部のナンバー2を別事業に横展開するという循環が回り出すといいます。
外部人材の登用については慎重な姿勢を示しました。
「外から来た人間は、行ったほど実力がない場合もあるし、実力があってもすぐ辞める可能性がある。社内に何年かいる人間は『社内にいる』というだけで信用がある。基本は社内人材を育てながら次のチャンスを与えるのが、組織として一番正常に働きやすい」
対談の核心となったのが、新規事業選定の戦略論です。亀山会長は「全く別の異業種、つまり本業が不景気になったときカウンターになる事業を持っておく」ことを強調しました。
DMMでいえば、英会話に対するAI英会話のような関係です。一方は海外スタッフとのコミュニケーション人材が中心、もう一方はエンジニア中心と、必要な文化も人材も全く異なる組織になります。
「片方が不調になっても、もう片方で何とかなる状態を用意しておく。利益の10%程度を、そういう先行投資に回しておくイメージ」
リスクの取り方についても、「撤退しやすい規模で別業種に行ってみる」ことを推奨。店舗ビジネスを試すなら、まず小さく出してスタッフの回転率やオペレーションのノウハウを掴み、勝算が見えてから大きく展開する、という段階的アプローチです。
亀山会長の経営哲学が最も色濃く出たのが、資金の使い方の議論でした。
「上場会社が内部留保を厚く持つのは、赤字でも生き残れるという発想。でもそれは消極的で、衰退していけば会社の先はない。内部留保するくらいなら、未来のありそうな事業に投資して、現業がゼロでも稼げるビジネスが生まれ続ける状態にしておく方が、長い目で生き残りやすい」
ライブドアのような急成長企業の動きを引き合いに、「10年後20年後に生き残るためなら、今からやっておかないと間に合わない。後発ではユニクロやニトリのような先行者に勝てない」と語ります。
相談者も、自社が創業以来「人への投資」に張り続けてきたことが、年収水準の高さと人材定着、若手のロールモデル形成につながったと共感を示しました。
亀山会長もこれに同意し、「インターネット事業もほとんどが人件費。人に張る方が、社会的にも事業的にも新しいものが生まれる」と人材投資の正当性を語りました。
相談者が「仕事を面白いと主体的に感じる人をどれだけ社内に増やせるか」をテーマにしていると話すと、亀山会長はやや踏み込んだ反論を展開しました。
「主体性と言っても色々ある。営業の主体性は完全インセンティブで売上を追うこと。でもマネージャーの主体性は、原価も人件費も含めて利益率を上げること。同じ会社でも立場で主体性の意味は変わる」
さらに、完全インセンティブ型は実質的に業務委託に近くなり社員としての安定性を失うため、固定給+インセンティブのバランスが現実的だと指摘。そのうえで本質的な問いを投げかけます。
「全員にモチベーションを持たせるのは、俺は難しいと思っている。ガリガリ稼ぎたいやつもいれば、人を支えたいというやつもいる。マイペースでやりたいというやつも、人数が増えれば必ず出てくる。それを許容しないと、経営者として人が増えるほど辛くなる」
主体性のある人材は自然と力をつけて上に上がってくるため、その文化を上から広げてもらう。一方で全員に同じ熱量を求めない。これが亀山会長の組織観でした。
対談の終盤、相談者は「終身雇用は目指したいが、年功序列ではない」という亀山会長の言葉に強く共感を示しました。今の仲間と10年後も会社を成長させたいという思いと、活躍する人が正当に評価される組織を両立させたいという経営観が重なった瞬間でした。
相談者は最後に、「似たカルチャーの組織を伸ばす発想が中心だったが、逆張りの組織を同じ目標に向けて作るという発想は模索してみたい」と感想を述べ、対談を締めくくりました。
450以上の事業を生み出してきたDMM亀山会長の哲学は、新規事業の立ち上げ方、人材抜擢、リスクヘッジ、資金配分、組織における主体性の捉え方まで、スタートアップ経営者が直面する論点を一気通貫で照らすものでした。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
