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総合>ビジネス動画>DMM亀山敬司が語る「情と合理」の経営論──社員・取引先との距離感をどう取るか

DMM亀山敬司が語る「情と合理」の経営論──社員・取引先との距離感をどう取るか

2024/10/10
M&A CAMPチャンネル
M&A CAMPチャンネル運営局

DMM創業者の亀山敬司氏が、経営における「情」との向き合い方を語る。社員、取引先、顧客との距離感をどう取り、合理性とのバランスをいかに保つか。ホリエモンとの出会いで考え方が変わった経緯や、暴力事件を起こした社員への対応など、具体的なエピソードを交えて語る経営哲学。

M&A CAMPによる亀山敬司氏(DMM.com会長)へのインタビュー第2弾。今回のテーマは、経営者が常に向き合う「情」と「合理」のバランスについて。社員、取引先、顧客との関係において、どこまで情を優先し、どこから合理的判断に切り替えるべきか。亀山氏自身の40年近い経営経験から導き出された答えを聞いた。


「情に流されて即採用」その後に起きたこと


インタビューの冒頭、聞き手側から「自分も情に流されることが多い」という告白があった。最近の例として、採用候補者と1日かけて面談した結果、その場の盛り上がりで即決採用してしまったが、稼働がうまくいかず短期間で離職してしまったケースが2回続いたという。


生来「人を性善説で見てしまう節がある」ため、過去の職歴が短い候補者に対しても「ここでやっと見つかった」と言われると、つい「自分のところで変えられるかもしれない」と勢いが入ってしまう。だが結果的に、その判断が裏目に出ることが多い、と振り返る。


亀山氏もこの感覚には強く共感する。さらに、入社した社員が「良くないことをしたが判断に迷うギリギリの線」だった場合、自分が逆の立場だったことを思うと毎回判断に迷う、と語った。


飲食・ビデオレンタル時代は「義理人情」のウェット経営


亀山氏は、自身の経営スタイルの変遷を振り返る。飲食店やビデオレンタルをやっていた頃は、典型的な「家族経営」だった。一度雇った人間の生活はずっと見ていかなければならない、という意識が強く、IT事業を始めた頃も「うちは義理と人情の相手企業だ」とメンバーに伝えていたという。


このウェットな経営スタイルが続いたのは、亀山氏が38歳前後まで。転機となったのは、堀江貴文氏(ホリエモン)や岡田斗司夫氏など、まったく別のタイプの経営者との出会いだった。


ホリエモンとの出会いで知った「情のない経営」の合理性


亀山氏が堀江氏らと出会ってまず驚いたのは、彼らに「情がほぼない」ことだった。


「彼らは友達もいないようなタイプ。だが、その分だけ忖度もない。誰かに媚びることもなく、知り合いだろうが違うものは違うと言う。それが彼らの誠実さであり、みんなからリスペクトされるところでもある」


ライブドアとの仕事で「エンジニアも30過ぎたらちょっと使えないですよね、じゃあどうするんですか」というドライな会話が交わされたとき、亀山氏は内心「これでみんなついてくるのか」と驚いたという。だが実際には、ライブドアはM&Aを繰り返しながら優秀な人材を集め、急成長を遂げていった。ライブドア事件さえなければ、さらに伸びていたかもしれない。


「自分が今までやってきたことは違ったのか、と考えさせられた。会社の経営ってこういうものじゃない、と思ってたのが揺らいだ」


「情」とは人と人をつなぐ接着剤


亀山氏は「情」をこう定義する。


「情というのは、ちょっと分かりやすく言うと接着剤みたいなもの。人と人をくっつけるもの」


昭和の日本企業は「同じ釜の飯を食う」文化があり、慰安旅行、運動会、家族ぐるみの付き合い、上司との飲み会など、会社が仕事の場であると同時にコミュニティとして機能していた。


しかし今の若い世代は、むしろ会社にコミュニティ性を求めない。「情はうざい」「飲み会には行きたくない」「友達は会社の外で作る」という価値観が広がっており、会社に求める情の濃度が世代・業界によって大きく違ってきている。


IT業界とリアル業界、年齢層によっても考え方は異なる。エンジニアやAI領域は「バーチャル空間でコミュニケーションすればいい、ここはあくまで仕事として合理的に」となりやすく、一方でクリエイターや物作りに近い業種は依然としてウェットな関係性が必要になる。


DMMのような複合企業の中でも、義理人情で動く営業組織もあれば、それぞれが個人で勝手に動くドライな部署もある。「うちは社会の縮図みたいなものが小さくいっぱいある」と亀山氏は表現する。


経営も政治も「中道」が大事


「情に流されるのは良いことか悪いことか」という問いに対し、亀山氏は明快に答える。


「俺はね、結局やっぱり中道かな。政治も経営も中道が大事。右にも左にも行きすぎてはいけない。ウエットもドライも、どっちに振り切ってもいけない」


アメリカ型の経営はレイオフが簡単にできるドライな仕組みだが、日本の文化はウェットな関係性が前提で、それが法令化されたのが現在の雇用制度(解雇が難しい仕組み)でもある。働く側も「面倒を見てもらうのが当たり前」と思っている人もいれば、「会社のために忠誠は尽くしません、自分の職務分の給料をください」というドライな人もいる。仕事に家族的な要素を持ち込むかどうかで、考え方は大きく分かれる。


暴力事件を起こした社員──「俺の権限ではない」と引っ込めた話


亀山氏が経営の難しさを痛感したエピソードとして語ったのが、ある飲み会で社員同士の喧嘩が起き、酔った勢いで殴ってしまった事件だ。


亀山氏自身は「飲みの席だし、お互い謝って中で終わりでいいんじゃないか」と考えた。だが、その担当責任者は「暴力を振るうやつは首です」と判断した。


亀山氏は「あいつも普段ちゃんとやってるじゃないか」と擁護したが、責任者からはこう返された。


「それを通すということは、会長がたまたま目に触れたところだけ恩情をかけることになります。ルールはそういうものじゃない。暴力を振るったら首と決められたとき、会長がこの人間はOK、こいつはダメと決めるんですか」


この指摘に亀山氏は「結構しんどいな」と感じたという。確かに自分の意で「許してやるよ」と言えるなら、自分の目に触れない場所では、許されるはずの人間も辞めさせられているかもしれない。


結局、亀山氏は直属上司の判断に従い、その社員は解雇された。「給料を決めるのも、左遷も降格も彼の権限。なんでそこは俺は引っ込めた」


取引先と社員、どちらを守るか


次に話題は、取引先との関係に移った。10年来お世話になった取引先が100円で出してくる中、別の業者が90円で提案してきた場合、どう判断するか。


亀山氏の優先順位は明確だ。


「家族、社員、取引先、その他、という順番をつけている。会社にとっては10円安くするのが職務に休日。会社の社員である以上は、外部の友人よりも組織の仲間を守れ、ということ。だから職務的には90円を選べと言っている」


亀山氏自身、地元・石川の同級生が経営する印刷工場と長年取引してきたが、東京で入札制度を導入したところ、同級生の会社では価格が合わなくなり、取引を終えた経験があるという。


顧客との関係についても同様だ。「お客様と社員、どっちかと言ったら社員。お客様は神様と言うけれど、後回し。ただし、ちゃんとした仕事をしないと会社が信用をなくして社員が食っていけないから、お客様は大事にする、という順番」


この順番を間違えると、お客様の無理な要求に対して社員に「とにかく謝れ」となってしまい、社員が辞めていく。昭和の「お客様神様」の時代とは状況が違う、と亀山氏は指摘する。


経営者は「人としての生き方」と「経営者としての生き方」を背負う


聞き手から「創業期に助けてもらった取引先と別れなければいけない場面が最近重なっている」という相談が出た。コストを取るか、情を取るか。


亀山氏はこう答える。


「経営者は常に、人としてどう生きるかという問題と、経営者としてどう生きるかという問題を、背中合わせでやらなければいけない」


これは取引先だけの話ではない。一緒に創業したメンバーがいて、優秀な新人が後から入ってきた場合、長年苦楽を共にしてきた創業メンバーの上に新しい上司をつけなければいけないこともある。


接着剤としての情──危機のときに効く


では、徳を積み続けることと、合理的な経営はどう両立するのか。


亀山氏の答えは、ベースは合理的判断、しかし情も完全には捨てられない、というものだ。


「うまくいくときは合理性が優先で良い。だが本当にやばいときには、『今しんどいけど、なんとか守りましょう』と支え合えるかどうか。これは接着剤である情が働くかどうかにかかってる」


一方で、情が多すぎても問題が出る。「昔からいたから上にいるけど能力ないよね」と言われる人材が組織に残ると、下が育たなくなる。やはりバランス、つまり「中道」が重要になる。


ビジネスモデルによって最適な情の濃度は違う


情と合理のバランスは、業種・ビジネスモデルによっても変わる。


大工の現場で情が薄ければ組織は成り立たない。一方、AI事業のように「多くの雇用をなくすことを進める仕事」では、情が濃すぎると事業そのものが成り立たない。


「AIは業の深い仕事。自分たちが動画制作を自動化してテロップも入れますと言えば、テロップを入れる人間の仕事がなくなる。それを進めている仕事でもあるけれど、社会的にやるべきことでもある」


だからこそ「あんまり凝り固まってはいけない」と亀山氏は語る。


自分の会社が自分の会社でなくなる感覚


組織が大きくなると、亀山氏自身の「情」が会社全体に反映されるわけではなくなる。各部長に責任があるため、亀山氏の言葉が現場のマネジメントの邪魔になることもある。


「『会長がダメと言うんですか』と全体方針として持ち上げられると、現場としては辞めさせられなくなる。だから結果的に、俺の思いが会社全部に反映されるわけじゃなく、それぞれの文化の中で『こっちは情が熱い、こっちは薄い』ということができてくる」


それを亀山氏は「ある意味、自分の会社が自分の会社でなくなる感覚」と表現する。多くのオーナー企業の社長はそれでも自分の意を押し通すが、亀山氏は権限を委譲し、各部署の判断を尊重する道を選んでいる。


退職率で見る「健全な組織」のバランス


亀山氏は、情と合理のバランスを数字で示す例として「退職率」を挙げる。


退職率10〜20%の会社は対処に問題がある可能性が高い。一方で退職率0%の会社も「これはこれで変」だという。


「数%くらいが常に辞めて10%が入ってくる、というのがある意味、健全。極端に0とか30%とかは、どっちも何か違うんじゃないかと注意した方がいい」


経営は青春、答えは出ない


インタビューの最後、亀山氏は経営について次のように締めくくった。


「経営はずっと考え続けなきゃいけない。自分の今やってる仕事自体が、社会にとっていいか悪いかさえも、未だに答えが出ない」


聞き手が「それは振り返ったら青春ですね」と返すと、亀山氏は「振り返らなくても、ずっと青春してる」と笑った。情と合理のバランスを取り続ける姿勢は、仏教の悟りに似ているかもしれない、とも。執着せず、判断を急がず、中道を歩む。それが亀山氏が40年近い経営の中で得た一つの答えである。


※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです

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目次

  1. 1.「情に流されて即採用」その後に起きたこと
  2. 2.飲食・ビデオレンタル時代は「義理人情」のウェット経営
  3. 3.ホリエモンとの出会いで知った「情のない経営」の合理性
  4. 4.「情」とは人と人をつなぐ接着剤
  5. 5.経営も政治も「中道」が大事
  6. 6.暴力事件を起こした社員──「俺の権限ではない」と引っ込めた話
  7. 7.取引先と社員、どちらを守るか
  8. 8.経営者は「人としての生き方」と「経営者としての生き方」を背負う
  9. 9.接着剤としての情──危機のときに効く
  10. 10.ビジネスモデルによって最適な情の濃度は違う
  11. 11.自分の会社が自分の会社でなくなる感覚
  12. 12.退職率で見る「健全な組織」のバランス
  13. 13.経営は青春、答えは出ない
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