年商1億・利益2000万円の若手経営者が抱える「会社のビジョンがない」という悩み。DMM亀山会長が語ったのは、立派なビジョンを掲げることよりも大切な、社員一人ひとりが自分で考える組織のあり方だった。
メディア運営会社を営むレッツゴーなぎら氏。自身のYouTubeチャンネルや不動産系チャンネルで登録者数10万人規模を抱え、3期目で売上1億円・利益2000万円を達成した。メンバーは6名、都内のシェアハウスにクリエイターたちと住み込みで事業を回している。
数字としては順調に伸びているはずなのに、夜も眠れないほど悩んでいることがあるという。それが「会社のビジョンが出てこない」という問題だ。
「3期目でようやく組織が回るようになり、未来のことを考えた時に、びっくりするぐらいビジョンが出てこなくて、俺大丈夫かなって」
なぎら氏は前職でコーチング会社「ライザップ」系列の創業メンバーとして働き、7年で23〜30億円規模まで成長させた経験を持つ。ゴール設定とビジョンのパワーを目の当たりにしてきたからこそ、自社にビジョンがないことへの焦りが大きい。
この悩みに対して、DMM.com会長の亀山敬司氏は意外な答えを返した。
「俺もそうだったからね。みんなビジョン作ってくるって途中から言われたもん」
現在DMMが掲げる「誰もが見たくなる未来を作る」というビジョンも、亀山氏自身が作ったものではないという。社員側から「自分たちで作っていいですか」と提案され、社員たちが主体的に決めたものだ。
「俺のビジョンにみんな従えじゃなくって、みんなが自分たちでやりたいビジョンを考えろみたいな方が、俺的にはありなんじゃない」
この言葉に、なぎら氏は「その選択肢を持っていなかった」と驚きを見せる。
なぎら氏が前職で見てきたのは、ビジョンに共感した社員が一丸となって突き進む姿だった。売上目標が「人々に可能性を提供した数」として神聖化され、給料を聞かずに入社する社員までいたという。
亀山氏はこれに対し、明確な指摘をする。
「短期的には船長が『行くぞ』と言った時に、こっち行きたい・あっち行きたいと言われたら戦えない。だから速さは出る。でも、そこから次のステップに行くのが逆に狭くなると思う」
ビジョンに共鳴して集まる組織は強い推進力を持つ一方で、ある種の宗教性を帯びる。亀山氏が求めるのはむしろ逆のタイプだ。
「世の中のことに対して疑問を感じながらも、自分で考えて結論にたどり着こうねって人。先輩に『絶対です』じゃなく、『いや先輩、これ違うと思うんです』と言ってくれるやつに来てほしい」
亀山氏は組織のあり方を、家族や兄弟に例えて語る。
「6人の中でちゃんと喧嘩しながらみんな育っていく。ある意味兄弟みたいな関係。自分の子供だったら『言われたことだけやってろ』とは思わないでしょう。『パパ、こうしてもいいんじゃない』って言ってほしいんじゃない?」
なぎら氏には2人の子供がいる。「本当にそう育ってほしいと思う」と深く頷いた。
「万が一、俺が死んだってお前たちやっていかなきゃいけない。だから俺がいなくなってもちゃんと生きていけよって。社員に対しても同じじゃないかって」
何でもかんでも信じて言われたことをやる人材ばかりでは、極端な話、カルトに引き込まれても疑問を感じない人間になりかねない。むしろ反抗期のある子供のように、自分の意見を持って動ける人材こそが組織の長期的な強さになるという考えだ。
なぎら氏自身の事業内容を整理すると、「YouTubeで多くの人にいろんな業界や生き残り方を見せる」「シェアハウスでクリエイター同士がコミュニケーション力と創造性を高め合いながら助け合う」というものだ。
亀山氏は言う。
「それで十分じゃない。もっと大きい、社会を変えますみたいなものがないんだから、しょうがないよね」
なぎら氏は最後にこう語った。
「ビジョンを聞かれて『お前考えろよ』で終わりでいいんだと。逆ギレするのはちょっとおかしいけど、堂々と『ない』って言えばいい。飯食って、今日全力で生きて、俺たちのできることをやるんだと伝えていくことに自信を持とうって思いました」
キラキラしたビジョンを掲げるスタートアップが脚光を浴びる時代だからこそ、自分の経営スタイルに合わないビジョン経営に無理に寄せる必要はない。社員一人ひとりが自分の頭で考える組織をつくることこそが、長期的には経営者にとっても社員にとっても「愛」のある選択なのかもしれない。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
