1社目を社員ゼロで約3.5億円で売却した勝木氏が提唱する「ソロプレナー」という働き方。生成AI時代における1人起業のリアル、向いている人の特性、そして資金調達の選択肢まで、ダイアリー俊氏との対談で深掘りする。
社員ゼロで1社目の会社を約3.5億円で売却し、2社目もソロプレナーとして起業している勝木氏。M&A CAMPの俊氏が「1人でできることには限界があるのではないか」という疑問をぶつけることから、対談は始まった。
勝木氏の答えは明快だった。
「生成AI時代においては、ソロプレナーは多分全員に向いています。下手な社員よりもAIの方が本当に優秀です」
ただし、AIを使いこなすには日本語能力と要件定義能力が必要だと勝木氏は指摘する。「こうしたらこう返ってくるだろう」と仮説を立て、思った答えが出てこなければ問いを変えてみる――そうした試行錯誤力こそが、AI時代のリテラシーだという。
OpenAIのサム・アルトマン氏も「社員ゼロのユニコーン企業がどんどん作られていく」と発言しており、勝木氏は5年ほど前からこの流れを提唱してきたと振り返る。
勝木氏が引用したのは、ロンドンビジネススクールのリンダ・グラットン教授による世界的ベストセラー『ワークシフト』だ。同書では、2025年の世界は「超ビッグ企業+ミニ企業家」が支配するという未来像が描かれていたという。
「テクノロジーが進化することによって個人でできることが増え、スモールビジネスでスケールする人がどんどん増えてくる。これはテクノロジー社会の当然の帰結です」
勝木氏は、自社事業を運営しつつ他社のコンサルや友人の手伝いをする中で、「社員はいればいるほど大変」だと感じることが多いと語る。意見が一致しない、タスクの境界線にあるボールを誰も拾わない、拾った人が「なぜ私だけ」と不満を抱く――こうした摩擦はあらゆる会社で起こり得る。
逆説的だが、社員を増やしても売上や利益が伸びないどころか、むしろ下がるケースも最近見かけるという。横社会化が進み、社員のマネジメント自体が難しくなっていることも背景にある。
勝木氏は、ソロプレナーに特に向いているのは次のような人だと整理する。
- 言語能力が高い人
- ややADHD気味で、個人プレーが得意な人
- ハイスペックな会社員で「商売は向いていない」と思い込んでいる人
「経営者はサッカーで言えば監督。ピッチの外から指示を出す役割です。一方ソロプレナーは選手兼監督。ややクリエイター・タレント気味なところもありながら、自分でマネジメントもやる」
世の中には「経営者になろうとしているが経営者適性がそこまでない人」が一定数いる、と勝木氏は指摘する。事業欲そのものが最上位にある孫正義氏のような起業家は実は少数派で、「自分らしい人生を切り開きたい」という承認欲求の手段として事業を選ぶ人が多数派だという。
そうした層にとって、ソロプレナーは「経営者にもなれそうにないし会社員にも向いていない、という微妙な層への救済」になり得ると勝木氏は語る。
ソロプレナーの最大の懸念として挙がるのが「M&Aで売却できるのか」という問題だ。これに対し勝木氏は、自身が社員ゼロで売却を成立させた経験から「意外と社員がいてもいなくても属人性は指摘される」と語る。
「俊さんも仮に会社を売却したら、社員がたくさんいて仕組み化されていても『俊さんがいないと辞めちゃうでしょ』と必ず言われますよ」
ロックアップ(売却後の経営者拘束期間)の有無に社員数はさほど関係ない。むしろ最初から仕組み化を狙うと事業が立ち上がらない。一旦は属人的でもいいから利益を作り、その後に属人性を徐々に減らしていくほうが現実的だという。
勝木氏が印象的に語ったのが、生成AI時代の新しい価値観だ。
「キャッシュも大事ですが、それ以上に日本語能力 is KING。生成AIを使いこなす基本インターフェースはチャットベース。ここに日本語を打ち込むという構造は当面変わりません」
日本語能力が高く、欲しい結果から逆算してプロンプトを設計できる人――それはまさにハイスペック系コンサル出身者が得意とするスキルだ。アメリカではホワイトカラーの仕事がソフトウェアに置き換えられ、ブルーカラーの方が給料が高いという現象も起きている。能力の発揮の仕方を少し変えるだけで、ハイスペック人材は再びめっぽう強くなる――勝木氏はそう見立てる。
対談の後半は、俊氏の悩み相談に切り替わった。動画コンテンツ事業を運営する俊氏は、タイアップ案件に依存しない資金調達を模索しているが、M&AもIPOも今は最適解ではないと感じている。「オーナーシップを持って作りたい世界観を作り続けたい」というのが本音だ。
勝木氏が提示した選択肢は次の通り。
- エンジェル投資家からの調達(金銭以外のリターン提供も可能)
- 普通株での調達(優先株と異なり手残りが出やすい)
- CVCや事業会社の自己資金からの出資(投資件数自体が目標化しているケースも)
- 既存事業の一部売却による資金調達
- 資本業務提携プラットフォームの活用
「2〜3億円というロットだと、エンジェルでは難しい。シナジー目当ての事業会社や、上場しているが知名度が低い会社との資本業務提携は意外と相性がいいかもしれません」
顧問制度による収益化の話題では、俊氏が「自分の美学に合わない」「信用の切り売り感がある」と漏らした。これに対し勝木氏は、文脈作りの重要性を語る。
「魂を売らないことを徹底すると何もできません。0か100かで捉えがちですが、絶妙なところがあります。同じことをやっていても、大義名分の作り方や文脈の持ってき方で見え方は大きく変わります」
例として挙げたのは、地元・高崎のだるまをパリコレに持ち込もうとする若手起業家のエピソードや、都市伝説というニッチなテーマを高クオリティの映像で「テレビ以上テレビ」に仕上げるYouTuber・直木まん氏の事例だ。「うさん臭いものをうさん臭く見せない方法」を考えることが、プロデュースセンスの本質だという。
対談の最後、勝木氏が放った一言が印象的だ。
「資金調達というと銀行融資やエクイティファイナンスを思い浮かべますが、シンプルに自分で稼ぐというのが最強の資金調達ですよ」
俊氏は、ダイアリーチャンネルを100万人まで伸ばしつつ、属人性に頼らないコンテンツチャンネルを量産することも視野に入れていると語った。「自分の会社の社長がスキマ時間でゆっくりチャンネルを量産して資金を作ってきたら、感動しますよ。立派すぎる」と勝木氏もエールを送った。
社員ゼロでも数億円の事業が作れる時代。マウントの軸が「社員数」から「利益・時価総額・自由度」へとシフトする中で、ソロプレナーという生き方は新しい選択肢として民主化されつつある。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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