社会学者・加藤諦三氏が著書『無理をして生きてきた人』の内容を語る。なぜ3人兄弟のうち1人だけが狙い撃ちされるのか。家庭から始まるいじめの心理構造と、不幸の連鎖を断ち切るための処方箋を解説する。
社会学者の加藤諦三氏が、自著『無理をして生きてきた人』について語った。本書は、家族の中で我慢を強いられてきた「不幸な良い子」だった人へのメッセージとして書かれたものだという。
加藤氏はまず、家族内で起こる心理的構造を次のように説明する。
「例えば、ある人がうつ病になったとすると、その人自身に問題があると言う人がいます。しかしそんなはずはありません」と加藤氏は語る。
3人の子供がいる家庭を例にとると、表面上は3人とも同じように育てられているように見える。しかし実際には違う。
- 3人の中に1人、心が優しい子がいる
- 親が心理的に健康でない場合、その1人の子供をいじめる
- 夫婦関係に問題がある場合、お互いへの憎しみを直接ぶつけ合えば家族が崩壊する
- そこで、3人のうち1人を「いじめる対象」にすることで、夫婦間の心理的問題を解決しようとする
これを加藤氏は「攻撃性の置き換え」と呼ぶ。
なぜ3人のうち1人が狙い撃ちされるのか。加藤氏は「ずるさは弱さに敏感である」という言葉を引く。
この場合の「ずるい人」とは、心理的に問題を抱えている親自身のことだ。自分たち夫婦が不安定であることから目をそらすために、攻撃性を子供に向ける。そして集団の中で最も弱い者を攻撃すると、反応が最もはっきりと表れるため、ターゲットとして選ばれてしまう。
さらに問題なのは、その子が何らかの問題を起こしても、家族という集団の中でその問題が「隠されてしまう」ことだという。
一度狙われた子は、他の2人の兄弟からも自分たちの負の感情を向けられる対象になる。加藤氏はこれを「集団の中の感情の吐きだめ」と表現する。
この構造はやがて家庭の外にも広がっていく。
- 家庭でいじめられた子は、小学校でもいじめを受け入れてしまう
- 中学校では、欲求不満な子がいじめる相手を探し、また同じ子が標的になる
- 学生時代にいじめられた子は、会社に入ってもいじめられる
「いじめは家庭から始まる」と加藤氏は明言する。そしていじめられる子は、たいてい「良い子」なのだという。ただしそれは、自分らしさを抑圧して生きてきた「不幸な良い子」である。
学校現場では「いじめは悪いことだからやめましょう」という教育が繰り返されてきた。しかし、いじめはなくならない。
加藤氏はその理由を次のように指摘する。
「いじめる側は、いじめが悪いと分かっているんです。分かっているのに『いじめは悪い』という教育をやっても、効果が上がらないのは当たり前です」
では、どうすればよいのか。加藤氏が提示するのは、いじめられる側からのアプローチだ。
調べてみると、いじめられる側が「自分がいじめられるのは当然」と思い込んでしまっているケースが非常に多いという。
しかしそれは当然ではない。加藤氏はこう訴える。
「いじめる側があなたを狙っていじめてきているのだから、しっかりとファイトバックして、自分の幸せを掴まなければいけない」
本書『無理をして生きてきた人』は、自分の不得意な領域で努力をして生きてきた人が、さまざまな問題を跳ね返して幸せな人生を生きていくためのメッセージが込められた一冊である。家庭で我慢してきた人、いじめを受け入れてしまっている人にこそ手に取ってほしい、と加藤氏は語った。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
