クラウドワークス創業期に役員としてジョインし、上場後8年にわたり経営を担った成田修造氏が登場。スタートアップとスモールビジネス、それぞれの稼ぎ方の違いと、若手起業家が現実的に選ぶべき戦略オプションを語る。
本記事では、クラウドワークス元取締役副社長の成田修造氏をゲストに迎え、「自力でのお金の稼ぎ方」をテーマに、これから起業を志す方やスモールビジネスから事業を大きくしていきたい方に向けたヒントをお届けします。
成田氏は2008年に慶應義塾大学に入学後、ビジネスコンテストの運営団体に所属したことをきっかけにビジネスの世界へ。最初に入ったベンチャーで上場を目指すも頓挫、学生起業も思うようにいかず、3度目の挑戦として大学4年生のときにクラウドワークスの創業期に役員としてジョイン。同社は3年ほどで上場を果たし、その後は取締役・副社長として約8年間経営に携わりました。通算約11年クラウドワークスで経営を担った後、1年ほど前に退任。現在は知人の会社支援や、自身の新たな起業の準備に取り組んでいます。
成田氏はまず、「起業」とひとくちに言っても種類があると指摘します。
氏自身が学生時代から憧れ、追求してきたのは「スタートアップ起業」。世の中に革新的なサービスを作り、それを大きく普及させ、結果的にビジネスとして成立させていく道です。ただし、この道は簡単に儲かるものではありません。サービス開発や普及には早いスピードと多額の資金投下が求められ、激しい競争の中で資金調達を繰り返す必要が出てきます。
一方で、「スタートアップよりもしっかり儲けたい」という起業家も数多く存在します。むしろ世の中的にはこちらの方が圧倒的に多数派。日本に企業は約400万社あるのに対し、上場企業はわずか4,000社程度。すでに普及しているビジネスモデルに参入し、他の人より少しうまくやることで市場シェアを取っていく──スモールビジネスや中小企業はこうした考え方で営まれているケースが多い、と成田氏は説明します。
成田氏は「若い世代がいきなりスタートアップで勝負するのは大変」と率直に語ります。理由はシンプルで、資金力は年齢が上がるほど集まりやすく、経験のある人ほど成功確率が高いと判断されてお金や人が集まりやすいからです。
さらに、Webサービスやアプリで一発当てるという世界はほぼ終わりつつあるといいます。視聴者が毎月新しいアプリをほとんどインストールしない時代に、ニッチな需要を100個試して1個当てるような戦いになっており、若手にはハードルが高い。BtoB領域も業界知識が前提になるため、若さだけでは戦いにくい領域です。
ではどうすればよいのか。成田氏が示す戦略オプションは3つです。
1つ目は、それでも果敢にリスクを取り、「針の穴を通すような」革新的サービスに挑むこと。失敗しても若いうちならやり直せます。
2つ目は、Web3のような「まだ理解しにくい」未開拓領域にベットすること。リスクは巨大ですが、当たれば大きいフロンティアです。
3つ目は、まずはきちんと稼いでキャッシュと経験、業界知識を積み、そのうえで面白いと思えるテーマに出会ったら挑戦するという段階的アプローチ。成田氏は「3番目の選択肢は非常にあり」と語ります。
大きな資金調達をして事業を作るということは、いずれ「上場するか、会社を売却するか」で投資家にリターンを返す必要があるということ。たとえばユニコーン(企業価値約1,000億円以上)の水準で資金調達した場合、それ以上の価値で売却または上場しなければなりません。
「上場はあくまでもスタートライン」と成田氏は強調します。死ぬ気で会社を大きくして上場を果たしても、その先には四半期ごとの決算開示が待っています。掲示板では「この会社はクソだ」「こんな株を買わなきゃよかった」「社長は戦犯だ」といった書き込みに何十年も晒され続ける──それでもなお経営を楽しみ、社会に大きな価値を還元したい人だけが上場企業の経営をやるべきだ、というのが成田氏の見解です。
そうでない人はやる必要がないし、やるべきでもない。とはいえサラリーマンよりはリスクを取って稼ぎたい、生活水準を上げたいという人にとって、スモールビジネスは現実的かつ有力な選択肢になります。
中小企業と上場企業では、求められる「成長」のレベルがまったく異なります。
中小企業であれば、売上規模で利益2億円が出る会社をつくれば、それは立派な事業です。来年が10億円でも、その翌年がまた10億円でも構いません。一方、上場企業の場合、10億円の会社なら翌年は15億円、その翌年は20億円と、毎年の成長が当然のように求められます。成長が止まれば「この会社は終わった」「潰れる」「売れ」と容赦なく評価されるのが資本主義のルール。
成田氏自身は「全社(スタートアップ)の路線」を志向しつつも、「校舎(スモールビジネス)側の友人の方が人生を楽しんでいるように見える」と率直に語ります。常に追われ続ける上場企業の世界と、自分のペースで成長を選べる中小企業の世界。メディアで華やかに取り上げられるのはスタートアップばかりですが、実態をきちんと見て自分に合う道を選ぶことが何より重要だといいます。
若手の成功事例で目立つジャンルとして成田氏が挙げるのは「メディア系」です。
メディアは巨大な資本を必要とせず、カメラ1台と部屋一つあれば始められる。YouTubeやTikTokといったプラットフォームの発達により、上手な動画を作れば資金力ではなくセンスと行動力で広げていけます。さらに、メディアの一般視聴者の感覚は若い人ほど鋭く、年齢を重ねるほど鈍ってしまうもの。視聴者と距離が近い若手こそが取り組む意義のある領域だ、と成田氏は語ります。
もう一つ有力なのが、専門スキルを活かした“代行業”や“代理業”です。
- Google・Yahoo!の検索広告やInstagram広告の運用代行
- 営業代行業(成果報酬型のポイント営業など)
- BtoB企業向けの営業代理
- 人事系コンサルティング、広報代行
これらは「個人の信頼関係」で受発注が回りやすく、特定企業に縛られないため独立しやすい領域。中小企業にとっては「フルタイムの広報担当を1人雇うほどではないが、メディア対応は誰かに任せたい」というニーズがあり、複数社の広報を兼任で受ける形で活動している人も増えているといいます。
起業のハードルは思っているほど高くない、と成田氏は語ります。会社に依存し続けるよりも、こうした個人で完結できる事業を組み合わせながら、当事者意識を持ってキャリアを築き、その延長線上で1つのビジネスをきちんと作っていく──それは十分に有力な選択肢です。
大切なのは「かっこいいから」「キラキラしているから」ではなく、自分の志向性と覚悟を冷静に見極めること。スタートアップで社会に身を投じるのか、スモールビジネスで自分のペースで価値を積み上げていくのか。自分のことを認識し、戦うレースを決めることこそが、自力でお金を稼ぐ第一歩なのです。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
