5年半前にTikTokの可能性を見抜き、クリエイターネットワーク事業を立ち上げた小島氏。コスメや日用品でのインフルエンサー活用、中小企業の採用活用、ライブコマース、ミームによるバイラルなど、TikTokをビジネス成長に繋げるための具体的な活用法と勝ち筋を語ります。
縦型ショート動画プラットフォームとして急成長を遂げたTikTok。コスメや日用品のプロモーションだけでなく、採用活動やライブコマースにまで活用領域は広がっています。今回は、TikTokクリエイターをネットワーク化した会社カナティを率いる小島氏に、企業がTikTokをどう活用し、どこにビジネスチャンスがあるのかを聞きました。
小島氏が代表を務めるカナティは、TikTokのクリエイターをネットワーク化し、ブランドや広告主のプロモーションを支援する会社です。最近では「ワウズ」という事務所を立ち上げ、クリエイターの所属事業も開始。クリエイター起点でのビジネス展開も進めています。
もともとエンジニアだった小島氏がTikTokの可能性を確信したのは5年半ほど前。きっかけは「世の中は技術がアップデートしていく」という視点でした。4Gから5Gへ移行し、誰もがスマートフォンを使う時代において、ユーザーが撮影し視聴している動画は縦型なのに、プロが作る動画はなぜか横型のまま。この違和感が出発点になったといいます。
さらに、親指でスワイプ・いいね・保存をするだけで自分好みの動画がレコメンドされるTikTokのUXに衝撃を受けたとのこと。検索を起点に能動的にコンテンツへたどり着くYouTubeとは異なり、受動的に情報が届く体験が「技術トレンドにマッチしたサービス」だと直感したそうです。
TikTokの企業活用にはいくつかのパターンがあると小島氏は整理します。最も進んでいるのが、クリエイターにタイアップ投稿を依頼するインフルエンサーマーケティング。特にコスメ、日用品、フード・ビバレッジ(飲料メーカー)などで活用が一般化しています。
一方、自社でTikTokアカウントを運用する取り組みは、インスタグラムやXに比べると大手企業ではまだハードルが高い段階。むしろタクシー会社や小規模ホテルなど、中小規模の企業が採用目的で活用する事例が昨年あたりから急増しているといいます。
他のSNSと比較してTikTokが伸び続ける理由について、小島氏は2つのポイントを挙げます。1つ目は、AIをベースにした縦型動画エンジンとしてUXが極めて洗練されていること。アプリ起動から1本目の動画が表示されるまでが速く、スワイプ体験の心地よさが他を圧倒しているといいます。
2つ目は、動画編集アプリ「CapCut」をTikTokの運営元であるバイトダンスが提供していること。コンテンツを作る側のツールも自社で押さえているため、制作からプラットフォーム流通までの相乗効果が生まれているのです。
初期は「パンケーキを食べたい」「JKがダンスをする」といったコンテンツが目立っていたTikTokですが、いまではビジネス系・教育系も増え、コンテンツの多様化が一気に進みました。
小島氏は5年ほど前に中国へ渡り現地でTikTokを調査しています。当時すでに中国版TikTokは大手企業が全面活用する状態で、人民日報のような国民放送局がアカウントを開設しニュース配信を始めていたといいます。「これを見た瞬間、日本も絶対にこうなると確信した」と振り返ります。
さらに、TikTokは1セッションあたりの視聴時間を伸ばすフェーズに入っており、8〜10分の動画も増加。「短尺動画」という枠を超えつつあるのが現在地だといいます。
TikTok運用に取り組む企業が増えている一方で、うまくいかないケースも多いのが実情です。小島氏が最も大きな壁と考えるのは「1本目の動画を投稿するハードルの高さ」。まずはプライベートアカウントでも構わないので、とにかく1本投稿することからスタートすべきだと助言します。
そしてバズらせるための鍵は「人を効果的に出すこと」。会社の宣伝を前面に押し出した動画はユーザーの親指を止められません。社内の面白い人物にフォーカスし、その人を魅力的に映すフォーマットを作れるかが勝負どころになります。「面白そうな人を好きになり、その人が所属する会社のことを好きになる」という順番でファンが生まれるのです。
広告運用面では、2年前と比べてCPCは上昇傾向。一方でユーザーの年齢層が上がり、子育て中の主婦層など多様な層に広がったことで、ROIが合うようになってきたといいます。「オールターゲット化」が進んでいる感覚です。
中国ではTikTokのライブコマースが普及し、ほぼすべての企業が活用していると言える状況。アメリカでは若者向けのD2Cブランド(小島氏は一例として「DESPO」のような事例に言及)が、TikTok起点でブランドを成長させる事例が目立ちます。
日本でも、アパレルブランド「ゆとり」が展開する「9090(クオクオ)」がTikTok経由で大きく伸びた例を紹介。クリエイターとのコラボや自社アカウント運用で集客チャネルとしてTikTokを活用したといいます。
また、TikTok特有の現象として注目すべきが「ミームカルチャー」です。楽天ポイントの歌のように、プロモーションでもないオーガニックな動画が10万本・20万本単位で模倣され、海外まで波及することもあります。YouTubeにはない、TikTokならではのバイラル構造です。
コンテンツの「切り抜き活用」も主流化しています。象徴的なのが格闘技イベント「ブレイキングダウン」。本丸はAmazonでのペイパービュー、アーカイブ・オーディションはYouTube、認知獲得はTikTokの切り抜き――というメディア戦略が計算され尽くしているといいます。「TikTokでバズったコンテンツはX(旧Twitter)でも広がりやすい」と小島氏。プラットフォームの掛け算を意識した設計が重要です。
小島氏は、インターネットの動画コンテンツは「プロが作る長尺の強コンテンツ」「短尺ショート」「エンゲージメントが最も強いライブ配信」の3つに収斂していくと予測します。
ライブ配信の事例として、保育士の就職を支援する会社が毎日TikTokライブを行いリアルタイムで相談に乗っている例や、身長150cm前後向けのブランド「ひなさん」がインスタライブを毎日決まった時間に行っている例を紹介。エンゲージメントを取るツールとしてライブ配信は不可欠になりつつあります。
動画というメディアは「嘘がつきづらい」のが特徴。質感や雰囲気が伝わりやすく、本物が強化される時代に入っているといいます。だからこそ、メディア企業もメーカーも「コンテンツを磨き、その良さをネジを持って伝えていく」ことが本質だと小島氏は強調します。
動画運用代行は参入企業が急増し、競合過多の領域になりつつあります。小島氏は「クライアントワークではバリュエーションが上がりにくい」と指摘した上で、TikTokやYouTubeを集客チャネルにし、人材紹介などのバックエンドビジネスに繋げるモデルが今後伸びると予測します。
検索広告やチラシで集客していた領域が、今後10年単位で動画にシフトしていくのは確実。「集客できる場所を強く押さえている会社が強くなる」と小島氏は語ります。新聞よりテレビの方がチャンネルを回せばコンテンツに出会えるマスメディアであったように、インターネットも能動的検索から受動的レコメンドへ変わりつつあるのです。
動画を活用するなら早ければ早いほどよい。コンテンツIPやキャラクターでの成功事例だけでなく、まだ表に出ていない構造的に伸びる勝ち筋がある――小島氏はそう示唆しました。最後に小島氏は「サイバーエージェントやリクルートのようなグレートカンパニーを作りたい」と語り、現在の事業はまだ創業期。技術トレンドの中でポジションを取りながら、新規事業を次々に生み出していくと締めくくりました。
TikTokは「踊ってみた」のプラットフォームから、企業のプロモーション・採用・ライブコマース・ミームバイラルまでを担う総合動画メディアへと進化を遂げています。重要なのは、運用代行に留まらず、動画を集客チャネルとして自社のビジネスモデルに組み込むこと。コンテンツの質を磨き、人を主役に据え、プラットフォーム同士の掛け算を意識する。ショート動画時代の波に乗るための視点が、小島氏の言葉に詰まっていました。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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