180万人超のチャンネル「アメンボプラス」を運営する御松氏が、複数チャンネルを同時に伸ばす制作体制、企業チャンネルが伸び悩む理由、ショート動画からロングへの3段階展開戦略、そしてエンターテインメント文化への信念を語った。
株式会社一松エンターテインメント代表の御松氏は、180万人超の登録者を抱えるYouTubeチャンネル「アメンボプラス」で監督役を演じながら、100本企画を担当している。さらに「サラリーマンな日常」「悪が今は青春中」など、複数のYouTube・TikTokチャンネルを同時に運用し、新人作家として小説や漫画原作にも挑戦中だ。
YouTubeを始めたのは大学3〜4年生の頃。就職活動を前に「自分は何がしたいのか」を真剣に突き詰めた結果、たどり着いたのはバラエティ番組や漫画への変わらぬ愛情だった。
「おもろいことを考えれる人、言ってくれる人になりたいなというのが、ぼんやりとした将来像として出てきました」
企業就職よりも「自分で行けるんじゃね」という若さの勢いが勝ち、イケメンの相方を誘ってYouTubeチャンネルを立ち上げた。最後はお笑い芸人の道とYouTubeの2択で迷ったが、「漫才を突き詰めたいなら芸人、他にも色々やりたいならクリエイター」という基準でYouTubeを選択。エンターテイナーとしての出発点となった。
複数チャンネルすべてを当ててきたように見える御松氏だが、実際にはコケたチャンネルも少なくないという。重要なのは「数字が伸びなければリメイクし、コンセプトを作り替える」という姿勢だ。その前提となるのが、圧倒的な投稿量である。
「1チャンネルで週14投稿、毎日2本ぐらい出そうぜ、というのをベースにしています」
メンバーの多くは後輩や同級生で、YouTuberとしての経験はまだ浅い。だからこそ「とりあえずいっぱい出してもらう」ことを最優先にした。御松氏自身は出す前のチェック役に回り、大きく修正することは避けている。
「僕の正解で作っちゃうと僕しか作れなくなっちゃう。数字が落ちたとしても自己責任で、プロデューサーやディレクターが自分で解決していく流れをずっとやってきました」
最初の半年はまったく伸びなかったというが、それぞれのチャンネルにディレクターが育ったあとは強い体制になった。アメンボプラスである程度の収益が出ていたことが、「もう低確率でいいから、いっぱい失敗しろ」と言える原資にもなった。在庫を抱えないコンテンツビジネスならではの戦い方だ。
企業チャンネルの運用に苦戦する声は多いが、御松氏の見立てはシンプルだ。
「作り手側のやりたいこと、伝えたいことが先に乗っかっているチャンネルは、あまり伸びていないイメージがあります。視聴者が何を見たいか、当たり前ですが、みんなが見たい動画を出せば再生回数は取れる。そこを先に考えています」
御松氏のチームではコンサルティング業務は一切行わず、「こんな動画みんな見たいやろ」から企画をスタートする。だからこそ、数字を上げやすいのだという。
コンセプト設計はチャンネルによって異なり、初期は御松氏自身が「居酒屋バイト行こうぜ」「サラリーマン行こうぜ」と作っていたが、現在はプロデューサーやディレクターが企画書を持ち込むケースも多い。サラリーマンチャンネルは、社会人を3〜4年経験して合流した同期が担当しているため、「リアルかつ本音の部分」が描写できているという。物作りのプロではなく素人だからこそ、その人の体験ベースで何が作れるかを考える。これが御松氏のチャンネル設計の核だ。
若年層向けの「悪が今は青春中」は、立ち上げから何度もコンセプトを切り替えて伸ばしたチャンネルだ。
当初は「サッカー部あるある」からスタート。しかしアメンボプラスが野球部ベースであるため、「アドバイスすればするほどアメンボプラス4みたいになり、オリジナリティが出ない」状況に陥った。
そこで「サッカー部といえば女の子にモテたがるやつが多い」という偏見を起点に、「女子を意識するサッカー部」へとピボット。それでも伸び切らなかったため、さらに「普通に女子を意識する男子」へと一般化し、最後に「めちゃくちゃリアルな恋愛ドラマ」へ振り切ったところで一気にブレイクした。
「立ち上げ方に変更が多くあったチャンネルですね」と御松氏自身も振り返る。コンセプトを固定せず、伸び方を見ながら何度でも作り替える柔軟性が、結果的に爆発を生んだ。
複数チャンネルを横展開する際の制作フローも特徴的だ。御松氏は、TikTokでネタを試し、YouTubeショートで跳ねさせ、ロング動画に展開するという3段階の流れを使い分けている。
「ロング動画は面白いかどうかの前に、見たいか見たくないかも結構かかってくる。サムネとタイトルで選択させないと数字が取れない。でもショートは流れてくるから、面白かったらいける。まずショートで賑わせていく中身づくりからやっていけば、そこからロングに移行しやすい」
コンテンツが飽和してきた現在もこの3段階フローは健在で、TikTokで100万再生に届けば「やっぱり受けるな」という手応えが得られるという。
10人ほどのフルコミットメンバーに加え、副業的に手伝うスタッフを擁する制作体制。プロデューサーやディレクターは、もともと未経験者だ。大学の友達、アメンボプラスにエキストラ応募してくれた人など、身内から声をかけてチームを組成してきた。
「友達を遊びに誘う感覚で集めていきました」
台本の作り込み度合いはチャンネルやディレクターに任せている。御松氏が口を出すのは「初期の初期」と「もっと行けるな」というタイミングくらい。失敗が見えても、まずは放置する。演者にも、役者経験者・芸人・大学生と多様な属性がいるため、「全部教えてほしい人」と「ある程度任せてほしい人」を見極める人間関係次第のマネジメントを行っている。
収益の主軸は広告収入だが、御松氏はビジネスモデルそのものをあまり意識していないという。
「ビジネスモデルとか言われるとちょっと嫌な性格で。これからYouTubeやTikTokがどうなるかも分からない。やっぱり面白いものを作り続けられる実力と、周りからの信用が残る」
本や漫画など、動けそうな導線は徐々に広げているものの、軸足はあくまでコンテンツ制作だ。背景には、御松氏が抱く「動画文化論」がある。
「動画は新しいエンタメの文化です。アニメや映画、舞台、劇場と一緒で、まだ始まったばかりの文化。漫画でいうとまだワンピースは出てきていない段階。今後出てくるそのポジションを取りたい」
「YouTuberの時代は終わった」と言われ続けて何年も経つが、結局は面白い動画を出せば生き残れる──その信念は揺らいでいない。
出演者としても現場に立ち続ける御松氏だが、規模拡大に伴って「引けるだけ引きたい」という気持ちもあるという。一方で、アメンボプラスで自身が演じる監督役については「あれはいいもんだと思っている。やり続けたい」と語る。
「監督が大体45〜50歳という設定で、今から20年後ぐらいに僕の監督役は全盛を迎えるはず。だから全然ずっとやりたい」
相方には「若作り頑張って」と言いながら、長期的な視野でキャラクター設計を続けている。
ビジネスとエンタメの両立について、御松氏は「あまり考えずに楽しいことをやる方が、結果的に後からビジネスとして成立する」と語る。
「金額の話で言ったら損はめっちゃしていると思うんですよ。でもやりたいことがやれているし、だからここまで色々作れている。100万円安く住んだとかを『まあいっか』と思えるかどうか」
ストレスの少ない働き方の根底には、「幸せに生きるためにやっているからそうあるべき」という人生観がある。
御松氏は今回、初の単独小説を出版した。テーマは「夢を追っている人、夢を応援している人の人間愛」。ネット活動者を舞台に、収益面のリアルや、いわゆる「底辺YouTuber」と呼ばれる時期に浴びせられる声まで生々しく描いている。
挑戦を続けるエンターテイナーとしての姿勢が、コンテンツ制作にも、執筆にも、そして仲間との関係性にも一貫して流れている。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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