編集者・箕輪厚介氏が、不倫報道後の心境、ビジネス動画メディアの競争激化、ノンタイトルやリアルバリューが象徴する「資本主義のゲーム」への変質、そして自分の軸を持って生きることの意味を語る。M&A CAMPの対談から再構成。
数年前まで、経営者が自ら前に出てサービスを売っていく流れが盛り上がっていた。しかし切り抜き動画ひとつで叩かれる現在、「目立ちたくない」と考える経営者も増えてきた。
この問いに対して箕輪氏はこう答える。「むしろ出たい社長は全体数では異常に増えているのではないか」。スタートアップ界隈やIPOを目指すプレイヤーの間では「SNSで騒ぐと上場できない」「VCが嫌がる」といった空気が確かにある。一方でそれ以外の業界では、経営者は「どうやってバズろうか」しか考えていないほどの勢いだという。
本人自身は、ニューズピックス芸人と呼ばれた人々が当たり障りのない発言にシフトする中でも、SNSと距離を取らずにあえて発信を続けている。
対談相手であるダイアリ社は上場審査の初期段階に入ったところだという。「ガバナンスと呼ばれる、今まで全く重要視してこなかったことが、こんなに求められるのか」と驚いた、と語る。
これに対して箕輪氏は「自由とトレードオフだよ」と即答する。組織を成長させるためにかっこよさを保留する選択もあれば、自分が言いたいことを言い続けるかっこよさもある。どちらが正しいということではなく、価値観次第だという。
対談中、自身の不倫報道(フラッシュ報道)にも触れる。リハック出演時に「お前らが騒ぐな」とぶち切れた一件について、改めて見返すと「気が狂ってるな」と自分でも思ったという。
それでも問いたかったのは、「おかしいのは俺なのか、世の中なのか」という根本的な問いだった。不倫報道を巡る一連の流れ──雑誌が暴き、SNSで世界中にばらまかれ、社会復帰できないところまで叩かれる──そのこと自体への問題提起をしたかった、と語る。
結果的に「自ら燃やしまくって、早く焚き火の木をなくした」という戦略にもなった。本人いわく「自分が矢面に立つことによって、矢を全部自分に集中させたいと思ってぶちまけた」。
「100人いたら99人がこう思うけど、1人はこう思う。その1人の方をコンテンツするのが俺の仕事だ」。
本でもYouTubeでもイベントでも、一貫してこのスタンスを貫きたい、と箕輪氏は言う。極端な話、SNSや影響力を全て失っても、北海道から沖縄まで自分の足で徒歩で説法して回ればいい。5人でも、3人でも、1対1でも、自分の自説を語って相手の家に泊めてもらいながら布教活動をすればいい。そういう覚悟がある、と。
「絶望しかない映画もそれは映画として面白い。だから後悔したという面白さでもいい」。人生を一本の映画として捉えれば、どう転んでも構わないという発想だ。
話題はYouTubeのビジネスメディアへ。ノンタイトル、リアルバリュー、令和の虎など、明らかに次元の違うプレイヤーが参入してきている、と箕輪氏は分析する。
「金の張り方、リスクの取り方、人の巻き込み方が違う。ああいうプレイヤーが本気でYouTubeで業をなそうとしてきたら、立ち打ちできない」。
リアルバリューでは1本1000万〜2000万円の番組を作り、フジテレビにCMを大量投下する。番組内で経営者にキャラクター作りまで指示するなど、徹底したパワーゲームが繰り広げられている。これらに比べると、個人発の世界観チャンネルは「一個の世界観チャンネル」に過ぎない、と。
「もうゲームが変わった。ニューズピックスの時代に残っている人なんて、堀江貴文、田端信太郎くらい。三浦や明学(明石ガクト)も、若者は誰も知らない」。影響力をフックにしたビジネスモデル自体が、戦争の種類を変えてしまったのだ。
スタートアップ界隈の経営者──堀江貴文、令和トラベルの篠塚孝哉氏ら──と食事をすると、皆が口を揃えて「SNSをやらないでよかった」「正しい判断だった」と言うという。
しかし箕輪氏はこう指摘する。本来、影響力を必要とするビジネスはYouTubeを戦い抜かなければならない。にもかかわらず、ホストやヒカル氏のようにビジネスとは無関係な層がコンテンツでも経済的にも成功している。「ビジネスパーソン向けの真面目なおじさん」が出る場所がなくなりつつある。
メルカリ山田進太郎氏や元ZOZO堀江翔氏との会食では、「箕輪さんの方が起業家として有名になっている」とまで言われたという。「現実に即していたニューズピックス時代と違って、今は現実と関係なく『そうなる』」。
騒動を経て改めて気づいたのは、「ちゃんと軸がないと自己肯定感が下がる」ということだった。
そこで決めたのが「ちゃんと書籍編集者として仕事をする」というベース作り。午前中は書籍編集の仕事だけをして、その後ビジネスや収録、夜は飲み──というリズムを作る。「これさえ守れていれば、あと何をしてもオッケー」というルールだ。
この方針に基づき、現在は2社の出版で本を作っている。幻冬舎では「今この瞬間を切り取る」スピード感のある本を、新会社「原稿舎」では1〜2年かけてじっくりとコスパの合わない骨太な本を。AI時代だからこそ、両極を意識した出版活動を続けるという。
顧問業も新たに始めた。ただ1時間株打ちしてお金をもらうのは違うと考え、「自分の感じに共感してくれる人を100社くらい集めて、コミュニティとして力を持たせる」設計にしているという。仕事が繋がる、面白い人に出会える──そんな場として1〜2年かけて育てていきたいと語る。
ニューズピックスレポートで取り上げられた森岡毅氏のジャングリア批判にも話は及ぶ。箕輪氏は「キラキラしたマーケティングを語る感じが、もうむかつかれる時代」と指摘する。
「SNS社会では、持たざる者の方が権力者で、持っている者は迫害される立場。持っているとバレた瞬間に剥奪される」。それでも箕輪氏はその構造に抗いたいという。「だって、誰も成功を目指さなくなる」からだ。
対談の終盤、箕輪氏はこう語る。
「社会的なもの、共同体的なもの、コミュニティ一般的なものはマジで無意味化する。だから自分と向き合って、自分の心と正直に向き合って、『社会はこう言っているけれど俺はこう思う』と言える人間が価値を持つ。脱社会化した人が本当に価値を出す。どれだけ早く脱社会化できるかだ」。
単なる逆張りではない。プロダクトでも発言でも、社会の要請からあえて外れにいく覚悟を持てるか。それが今後の価値の源泉になる、というのが箕輪氏のメッセージだ。
50歳になったら宗教を作るとも語る箕輪氏。本人いわく「ポジティブな、頑張って目立っていいんだという宗教」。それが法人格である必要はない、とも。
言いたいことを言い続けて死ぬ──その覚悟と、編集者としての確かな軸。両方を持つからこそ、この修羅場の時代を渡り歩いていけるのだろう。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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