幻冬舎・箕輪厚介氏が、ReHacQ高橋弘樹氏の手腕、PIVOTやNewsPicksの最適化問題、メディアが権威化するスピード、文春砲とSNSの増幅装置、田端信太郎氏との向き合い方まで、2025年のビジネスメディア業界を縦横無尽に語り尽くした対談。
ビジネスメディア界を疾走してきた幻冬舎の箕輪厚介氏が、M&A CAMPに登場。ReHacQの強さ、PIVOTやNewsPicksが抱えるコンテンツとビジネスの両立問題、文春砲をめぐるSNSの増幅作用、そして田端信太郎氏との距離感まで、2025年のメディアシーンを率直に語った。経営者・コンテンツ制作者の双方にとって示唆に富む対談を、編集部で再構成してお届けする。
冒頭、対談相手のM&A CAMP側が「今もっとも勢いのあるビジネスメディアはReHacQ」と切り出す。箕輪氏も視聴者として「毎回見ているのはReHacQぐらい」と同意した。
なぜReHacQが抜きん出ているのか。箕輪氏は「単純に高橋さんが優秀ということ」と切り捨てた上で、その本質を「人間ドキュメンタリーをやっている」と表現する。
「『家、ついて行ってイイですか?』の時から、それが企業家だろうが政治家だろうが俺みたいなメディア野郎だろうが、基本ドキュメンタリーをやっている。だからその人の生き様、人間性、弱いところ、普段行っていないところが見れる」
政治家にも同じ手法を持ち込み、「普段何食べてんですか」と急に角度を変えて素顔を引き出す絶妙さ。旅番組のディレクター的なフラットさで、平凡な人物すら面白くしてしまうテクニックがあるという。「そういう能力がずば抜けている人がYouTubeにまだ全然いない。だから飛び抜けて深みがある」。
ReHacQはハイクオリティな照明やセットを持つPIVOT的なつくりとは対照的に、雑にハンガーが置いてあったり、酒が置いてあったりする。これは意図的だと箕輪氏は読み解く。
「綺麗に作ろうと思ったら綺麗に作れる。でもメディアっぽくあえてしない方が生感があっていい」
西野亮廣氏の言葉を引きながら、「距離の近さというクオリティ」を作っているのがReHacQだと指摘した。さらに高橋氏自身が酒を飲まず、ロケから帰ってきてもそのまま収録、編集と「永遠に働ける」エネルギー量を持っていることも、強さの源泉だと言う。
話題は組織論に及ぶ。箕輪氏は「カリスマ型か仕組み型か」というフレームでメディア企業を整理する。
幻冬舎のような「お前の好きなように生きて結果を出せ」というカリスマ型と、ダイヤモンド社のように営業も編集もインセンティブの仕組みがしっかりしていて、ヒットを出していない若手でも一定成果を出せる仕組み型。
「俺は仕組み型なんて言ったらもう死んでしまう。何のために生きているか分からなくなる」と笑いつつ、「仕組み型の方が解放できる人もいる」と両者を肯定した。本人の特性に合うかどうかが本質だという。
箕輪氏は自身が手掛けたNewsPicks Booksを引き合いに、属人的なメディアがスケールを取りに行ったときに起こる現象を率直に語った。
「俺自身が面白いと思っていなかったり、なんならほとんど関わっていない本を、嘘はついていないんだけど『箕輪が編集しました』みたいな形で世に出していた。それで売れるんですよ、数字は変わらず」
だが時間差で必ずバレる。実際、自身の熱量が下がるにつれ読者の熱量も下がっていった。「属人的であるがゆえにとんがりができてコンテンツは力を持つ。でもそれを下げてスケールを取ろうとすると熱は下がる」というジレンマだ。
これは「ビジネス論理」であって、視聴者からすれば「知らんがな」という話。スケールや持続性を口実にしても、視聴者は都合よく汲み取ってはくれない。
対談相手は、自身が運営するキャリアチャンネルで2億円規模の資金調達を予定していると明かす。経営者向けの熱量はあるが、就活生の感覚は分からなくなっている自覚があるという。これに対し箕輪氏はこう返した。
「金儲けするためにやっているんだから、そんな懸念は生まれるに決まっている。面白いものを作り続けるかと別に反するもんじゃない。なんならお互い両輪だけど、ビジネスとしてちゃんとやろうと思ったんだから、その『面白い』ということはもう一回考え直さないと」
本当に面白さを追求するなら、ビジネスを置いて、市場が小さくとも年齢に合った熱狂できるテーマをやり続けるべき。3000再生でも全員が「このチャンネル面白い」と言う状態を作れる。だが事業として選ばなかったのなら、そこは割り切る必要があるという辛口の助言だった。
令和の虎やノンタイトル、サラバ箕輪のような熱狂を生むコンテンツの共通点について、箕輪氏は明確に言語化する。
「全員が当事者だと強い。サラバの動画はディレクターも、笹さんも、サラバの2人も自分たちが作っている。人生の作品みたいな感覚で、面白いことしかやらないと決めてやっている」
ダウンタウンの『ガキの使い』も、面白かった時期は松本人志氏のクレジットが最初に入っていた。本気でやるし、滑った時の恥ずかしさも誰かが背負う。雑誌でも編集長がバーンと立っていれば面白いが、二代目以降に色がなくなるのはよくあるパターンだ。
そしてこう続けた。「一番ダメなのは『こんな感じかな』と当てに行って作っているコンテンツ」。引き継いだ後に「箕輪さんはこういう感じだったな」と踏襲する作り方では絶対にうまくいかない。「外からでもずっと『俺ならこうする』と思っていたやつが作った方がいい」。
箕輪氏が最近強く感じているのが、メディアが「強者側=権威側」になるスピードの速さだ。
「今のスピードはめちゃめちゃ早い。強者側になった瞬間、ネット世論で一瞬でレッテル貼りされる。『こいつらはオールドメディアだ、既存メディアだ、PIVOTだ』と」
ReHacQですら例外ではなく、高橋氏自身が「ReHacQが強くなりすぎて敵に回る」ことに緊張感を持って向き合っているという。PIVOTについても、財務省のスポンサード企画や文藝春秋とのタッグなど、一つひとつは説明可能でも「雰囲気で権威側だな」と思われてしまう局面が増えていると指摘した。
対処法は単純ではない。AKB48に対する乃木坂46のように、自ら公式ライバルを立ててしまう発想――秋元康的な戦略が、持続のためには必要になるかもしれないという。
対談はメディアの収益構造にも踏み込む。文藝春秋が『週刊文春』とビジネスメディアを両輪で持ち、不動産事業を持つTBSが直接的な数字に縛られないコンテンツを作れる――こうした「収益の余白」がコンテンツの幅を生む。
一方、PIVOTのようにVCマネーが入りエグジットが前提となれば、KPIは売上・利益に収斂し、フォーマットは最適化されていく。「ピボットの社長解剖や明石さんの回は、社内KPI的にはたぶん怒られた。3〜4ヶ月密着して人件費も編集も大変、5万再生10万再生も行っていない」と推測。だがそれをやり続けて「実は創業の時からこの3〜4年で1本マジの骨太のドキュメンタリーを作っていました」と言えれば「あっぱれ」だという。
メディアは「やるべきこと・面白さ・お金・世間の空気」という四角形をどう配分するかの勝負。これはPIVOTもYouTubeメディアも、あらゆるメディアに共通する構造だ。
かつて文春は権力を撃つ存在として箕輪氏も支持していた。だがSNSの増幅力が強くなりすぎた今、「文春が強者になってしまった」と語る。
「文春が少しでも書いたら、SNSでそいつを袋叩きにして引きずり下ろす。罪と罰のバランスがおかしくないかという声がどんどん大きくなった」
紙に載って終わり、3〜4手吊りで終わりだった時代と違い、今はSNSで永遠に繰り返される。デジタルタトゥーとして残り、社会復帰すらできなくなる。中居正広氏の事例を引きつつ、フジテレビの組織的問題と個別案件は分けて議論すべきだとも指摘した。
それでも文春という存在自体は社会に必要だと箕輪氏は言う。政治家のスキャンダル取材を一次情報で取りに行く週刊誌は他にない。芸能人の不倫がエントリーで、政治家の不正が本丸という構造ゆえに権力者は文春を恐れる。
対談の終盤、話題は田端信太郎氏との関わり方に及ぶ。箕輪氏のスタンスは明快だった。
「Twitterで中途半端に絡むのはダメ、絶対。勝てない。皆さんは仕事をしている、24時間2時間も会議に詰められて、開いたら田端さんは80リツイート80ツイートしている。勝てるわけがない」
では無視するか、向き合うか。箕輪氏は「絡むなら絡みきる、絡まないなら絡まないと最初に決める」ことを勧める。絡むなら、双方を知る共通の知り合いを介して、ヘラヘラ笑える包容力のある人と3人でランチをセッティングするくらいまでやり切る。「日本のスタートアップ界隈なんて、ちゃんと話せばいい。田端さんは警察じゃない」。
ただし注意点もある。「田端さんと田端さんにやられた人たちは、想像以上に分断している。話して解決できるレベルじゃない」。冗談では済まない断絶があるのだという。
田端氏自身については「文章はあらゆる週刊誌の中で一番ちゃんと取材している。社会に必要な要素」と評価。一方で、SNS免疫のない一般層を執拗に攻撃するムーブには反対だとも明言した。
対談は最後、「全メディアで忘年会をやろう」という提案で締めくくられた。ReHacQ、PIVOT、NewsPicks、ブルームバーグ、令和の虎、リアルバリュー、ノンタイトル、R25、個人系の堀江貴文氏や西野亮廣氏まで――勢力図をホワイトボードに書きたいくらいの群雄割拠だ。
「メディアがこんなに儲かって盛り上がっている時代はない。みんなでやいのやいの言いながら多様性を保って、突っ込み合って生きていけばいい」
出てきた新しい波には「面白そう」と最初に言うこと。「俺には合わない」と後で気づいてもいい。だが最初から否定していると「ワコン化」して衰退側に回る。時代に支持されているものは時代の写し鏡であり、それが正しいということだ――と箕輪氏は結論づけた。
本対談から浮かび上がるのは、メディアもビジネスも「両輪」だが、その両輪は構造的に綱引きをしているという冷徹な事実だ。属人的な熱量はとんがったコンテンツを生むがスケールしない。仕組み化すれば持続するが熱は下がる。資金調達やエグジットを選んだ瞬間、最適化の重力が働き始める。
それでも箕輪氏は、「面白いと思えるものを作り続けること」「当事者として人生の作品をやること」「中途半端を捨てて振り切ること」を一貫して説いた。これはメディア運営者だけでなく、自社のブランドやコンテンツに向き合うすべての経営者に通じる視点だろう。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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