慶應大生から起業し、上場企業Fコードへ会社を売却した若手起業家3名が集結。売却金額の使い道、PMIの実態、ロックアップ中の働き方、そして「100億」を目指す理由まで、リアルな本音を語り合った座談会。
今回のM&A CAMPでは、株式会社Fコードへ事業を売却し、グループにジョインした3名の若手起業家にお集まりいただいた。三者三様の背景を持ちながら、いずれも20代から30代前半という若さで会社を売却した彼らが、M&Aに至る経緯から売却後のリアルな心境まで率直に語ってくれた。
登壇者は以下の3名。
- 小林氏(株式会社リアラス・エンプレイス):インフルエンサー支援/女性キャリア支援のリアラスを3.5億円、店舗支援のエンプレイスを数億円規模でFコードに売却
- 森谷和正氏(株式会社A1代表/通称「かず」):M&Aスクールを運営、株式の75%を売却
- 大崎氏(デイトラ):受講生3万人を突破したオンラインスクール「デイトラ」の85%を約10億円で売却
小林氏のM&Aは、極めてシンプルな動機から始まった。「最初から絶対にM&Aするって言って会社を作っていた」。東京デートのInstagramからスタートし、インフルエンサー支援、女性キャリア支援のリアラスへと事業を派生させた。
周囲に「俺はM&Aする」と言い続けていたところ、Fコードの石川氏から声がかかったという。創業からわずか2年でのM&Aだ。社員にも事前に売却方針を伝えていたといい、「俺はM&Aでお金がもらえればいいので、皆さんの給料を高くしている」と説明。結果として、M&A後も誰も辞めなかったという。
一方、森谷氏は半年前までM&Aを一切考えていなかった。個人時代から月2,300万円規模をコンサルで稼いでおり、お金への執着も薄かったという。
決断の決め手は採用と組織づくりだった。「事業を伸ばしていくとなった時に、人がここで安心して働きやすい環境の方がいい」。上場企業であるFコードへのジョインが、事業をさらに伸ばす最善の選択肢と判断した。
株式売却の比率を75%にしたのは、税制面での合理的判断。「来年の税のことも考えて、2段階目の売却時の税負担を踏まえると75%が最も妥当だった」と語る。M&Aの売却益が5億円を超えると約30%の税率になるため、キャピタルゲイン課税の20%との差を踏まえた選択だ。
大崎氏のデイトラは創業6期目、受講生3万人を突破したタイミングでの売却となった。「B2Cの事業としては十分にスケールできた状態」だったが、SNS・SEO・YouTubeを軸としたオーガニック集客一本足からの脱却が課題だった。
B2C向けの法人研修や、3万人のリソースを活用した人材紹介・案件紹介など、次のステージに進むためのパートナーとしてFコードを選択した。
3人に共通するのは、売却後もロックアップ期間中(おおむね3.5〜5年)は経営に関わり続ける姿勢だ。小林氏は「Fコードは多分、社長が残らないと買わないというスタンス」と語る。
買い手にとって属人性の高い事業はリスクだが、Fコードはむしろ「社長が残ってくれるなら属人性を評価する」というスタンス。社長が辞めてしまえば事業が回らなくなるリスクがある一方、社長と二人三脚で伸ばせるメリットを重視している。
小林氏自身も「属人的なことはバレていたので、ロックアップを責任持ってやるので買ってくださいという理論で進めた」と明かす。
気になる売却金の使い道についても、三人とも「ほぼ消費しない」という回答で一致した。
小林氏は妻と2回旅行(計2週間×2回、34カ国)に行った以外はほぼ使わず、株式投資に充てている。「先輩から『数億は2秒で溶ける』と言われたので、忠実に守って固く持っている」。エンプレイス副社長の影響でJTを大量に買っているという。
森谷氏も同様で、資産運用は信頼するスタッフに一任。「マインドシェアを使いたくない」と言う。Apple社債など3〜4%利回りの守り重視の運用を検討中だ。
大崎氏はインデックス投資に加えて、自身の事業や横浜の煮干しラーメン店「煮干コーラ」(タベログ3.7)などへの投資にも資金を回している。エンジェル投資にも関心があり、「投資して終わりではなく、関わりながら事業を立ち上げていきたい」と語った。
起業家へのアドバイスとして印象的だったのが、SNS発信の重要性だ。
小林氏は「自分のXとYouTubeを持っていたのは、何においても最強。X一点で全部売却したようなもの」と断言。フォロワー1万人規模の実名Xが、採用にも集客にも効くという。
森谷氏は「副業でもいいから、まず1円を自分の力で稼ぐ経験を早めにすべき」とアドバイス。自身も大学3年時にグアムのアウトレット商品を日本で販売することからキャリアをスタートさせている。
大崎氏が強調したのは組織化のタイミングだ。「初期に伸びている人はみんな超トップダウン組織。ただし2〜3年経つとインフルエンサービジネス化してしまうので、1年半〜2年以内にいかに組織化できるかが勝負」と語る。
M&A後のPMI(統合プロセス)については、3人とも「序盤は忙しい」と口を揃える。Zoomやミーティングがびっしり組まれ、特にバックオフィスの業務フローが大きく変わるという。
ただしFコードの場合、財務やバックオフィスを親会社が巻き取ってくれるため、現場は「攻撃だけやればいい」状態になるという。「お得すぎる」と森谷氏も評価した。
注意点として小林氏が挙げたのは「出社義務の有無」。「数字には見えない部分だが、カルチャーが違う場合は重要」と指摘した。
大崎氏が反省も込めて語ったのは、シナジー設計の重要性だ。「親会社がやっていないマーケットを埋められるか、親会社からの受注が受けられそうかを見た上でジョインする。できればジョイン前から業務上の関係を作っておくと、グループ内で回るお金になりバリューも上がりやすい」。
業務提携から資本業務提携へ進めるルートが、シナジー創出には有効だという示唆だ。
最後に、3人それぞれが今後の展望を語った。
森谷氏は「100億を目指したい。理由は特にないけれど、ハングリーであり続けたい」と宣言。今のピークを将来のピークにしたくないという危機感が原動力だ。
小林氏は「リアラスとエンプレイスのメンバーが好き。彼らと楽しく仕事を続けたい」と仲間との関係性を重視する姿勢を示した。
大崎氏は「デイトラを業界トップブランドに育てたい。地方在住のママさんなど、まだIT・AIの恩恵を受けられていない方々の生活を豊かにしたい」と社会的意義に言及。煮干しラーメン事業も「煮干しといえば煮干コーラ」と言われるブランドに育てる目標を掲げた。
3人に共通するのは、M&Aを「ゴール」ではなく「次のステージへの手段」として捉えている姿勢だ。売却後もハングリーに事業に向き合う若き経営者たちのリアルな声は、これからM&Aを検討する起業家にとって貴重な参考になるだろう。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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