WebメディアM&Aを経験した正田圭氏と、デコアを譲渡した吉松氏が登壇。AI進化とSNS社会の中で、エリートたちがなぜ「ソロプレナー」を選ぶのか。売却後の幸福、健康マウント、クリエイターエコノミーまで、M&A経験者だからこそ語れる本音の対談。
今回のM&A CAMPでは、数億規模のM&Aを経験した2人の起業家が登壇。Webメディア事業を譲渡した正田圭氏と、デジタルマーケティング会社デコアを4期目で譲渡した吉松氏が、売却後の生き方と、AI時代の新しい起業のかたちについて語り合った。
吉松氏は新卒でサイバーエージェントに入社し、広告事業本部でデジタルマーケティングの営業・プランナーを経験。独立後に創業したデコアを4期目で譲渡している。
「正直、ポットで売却みたいに近いんです。サイバーで学んだことをそのままやっていたら、いい感じになってしまって、売れちゃった」と語る吉松氏。Google広告のPMAXなど自動化の波を見て「来期、再来期を見越したら大丈夫かな」と感じていたタイミングで声がかかったという。
売却後、約1年半のロックアップ期間中は「1年ぐらいずっとぼーっとしていた。活力もなく、事業計画通りに動かしているだけだった」と振り返る。
売却後、吉松氏はまずエルメスなど高級品を買い漁ったという。「1回の会計で230万とか使っちゃう。良くないけどやっちゃうんです」。
しかし、海外旅行などを重ねるうちに気づきが訪れる。「お金を得てもそんなに満たされた感はなくて、使っている時のほうが満たされる。でもそれがだんだん薄くなってきて、もう1発頑張ってみようかなと思えた」。
一方の正田氏は、資産の大半をドル建てで保有しつつ、服はユニクロという質素な生活。投資先は「健康」だという。
「ビタミンDやマグネシウムなど、日本人に不足している栄養素を補うだけで、うつが治る説もある。ホルモンバランスで気分は左右されるので、健康の重要性は今後上がる」と語る。
正田氏は、現代の経営者の悩みを鋭く分析する。
「昨日もM&A売却者のフットサル大会をやったんですが、何十億プレイヤーがいっぱいいる。お金持っているだけでは差別化できない時代になっている」
さらにこう続ける。「人間は社会的動物なので、何者かであり続けるために何らかかまし続けないといけない。でもそのかましの難易度が上がっている。お金マウントから健康マウントへ、需要は変化していく」。
ダンバー数(人間が安定的な社会関係を維持できる人数の認知的上限、約150人)を超えるSNS社会では、承認欲求と人間の脳のキャパシティが「悪魔合体」してしまっているという指摘もあった。
対談の中核となったテーマが「ソロプレナー」だ。社員を雇わず、少人数で事業を立ち上げる新しい起業スタイルである。
正田氏は明確に言い切る。「2025年からスタートアップの時代から、ソロプレナーの時代になってくると思っている」。
その根拠は2つ。一つは、AI進化により1人でできることが圧倒的に増えたこと。もう一つは、2015年から2025年までの従来型スタートアップ・VCモデルの「ゴールデンタイム」が終焉に向かっていることだ。
「上場の100億問題でM&Aに流れる人が増えたが、売り急ぐと買い叩かれる。むしろ持ち続けるという選択肢もある」(吉松氏)
吉松氏も従業員数マウントの時代の終わりを指摘する。「50人で1人売上1000万の会社より、50人で2000万を目指せないとダメ。1000万のまま100人、150人と雇うのがかっこいい時代から完全に変わっている」。
正田氏は、AI時代に最も合理的な働き方として「ソロでクリエイターエコノミーをやること」を挙げる。
「B向けのAI導入支援などクライアントワークも市場は無限にある。ただ、それは下請け的な仕事。長期的にはAIが発達するにつれて企業内に内製化されてしまう」
その上で、田中修治氏や城渡寿氏のような「思想のあるクリエイター」が、テクノロジーを使って集客もコンテンツ制作もできる時代が来ると予見する。
「Yahooの川邊さんもソロプレナーとAIで起業すると言っている。ITの黎明期に流れを掴んだ方々が、皆そちらに向かっている気がする」
ソロプレナーとフリーランスの違いは何か。正田氏の答えは明快だ。
「集客チャネルを持っているか、自分をメディア化できているかどうか」
吉松氏は、集客に悩む若手経営者に対して別の視点を提示する。
「お金を払うことでチームができる。発注先と仲良くなるだけでも、その発注者にクライアントがいっぱいいれば紹介の角度がえげつない。発注したパートナー会社は商流上は上なので、結果を出して良い口コミを作れば大企業の1部門に入り込める」
会場からの質問にも、2人は本音で答えた。海外で歌を歌うために会社を経営している50代の参加者には「分かりやすい文脈を見せた方が応援されやすい」(吉松氏)「明らかにここでやったらテンションが上がるという甲子園のような場所を自分で作ってしまえばいい」(正田氏)とアドバイス。
AIの普及で自分の仕事がなくなることを不安視する研修講師には、「70歳向けにスマホを教える本がベストセラーになる時代。AIの普及はまだまだこれから。日本人の身体的知性を活かしたUI/UXに対応した先生になれば差別化できる」(吉松氏)と回答した。
正田氏は最後にこう締めくくる。
「みんな個人として、ある程度の自由と安心があって、身軽な状態で自己表現したくなる時代になる。大谷翔平やミセスグリーンアップルのように、誰もが自己表現できる世の中になる。それがITとAIでエンパワーされた個人によるクリエイターエコノミーだ」
答え合わせは3〜5年後。M&A経験者2人が示す未来像は、これから起業を考えるすべての人にとって示唆に富むものだった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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