バーチャルマーケットを運営するヒッキーのCEO・船越氏が、DMM亀山会長に経営相談。70億円調達の裏で続くリアルイベントの赤字、マネタイズの悩みに対し、亀山会長が示した「生き残ること自体が財産」という回答とは。
本記事はM&A CAMPの企画「経営者が亀山さんに事業相談する」の一幕。今回相談に訪れたのは、バーチャル空間でのイベント「バーチャルマーケット」を主催する株式会社ヒッキーのCEO・船越氏。彼女のパートナーも同席し、率直な経営相談が繰り広げられた。
ヒッキーは、バーチャル空間上でインディーズのクリエイターが作品を出展し、ユーザーが買い物を楽しめるイベント「バーチャルマーケット」を主催。1度のイベントで約140万人が訪れる規模に成長している。あまりに人が集まるため、B2B企業が出展し、新しいマーケティング手法として活用される独自のメディア型ビジネスを2018年から展開してきた。
船越氏は語る。「創業2年ぐらいで700億円のバリュエーションがついて、10%放出で70億円調達しました。黒字がきちんと出ていたのと、競合がほぼいなくて独占的に伸びていたからだと思います」
事業がある程度成長し、バブル的な伸びが落ち着いた頃、船越氏はリアルイベントへの挑戦を決断した。だが、これが想定外の事態を招く。
「最初からファンイベントのつもりで開催したら、5万人も集まってしまったんです。東京ドーム満員規模の人が街中の商業ビルに殺到して、捌ききれず事件一歩手前でした」
2回、3回と回数を重ね、チケッティングも導入。直近の冬イベントでは6,500〜7,000枚のチケットが売れたが、単価2,000円では収益化に至らない。会場費、200名規模のボランティアスタッフ運営、コンテンツ制作費など、コストはかさむばかりで赤字が続いた。
一方、デジタル空間のバーチャルマーケットは黒字を維持。さらに周辺店舗14店舗とのコラボメニュー(単価1,000〜1,500円)では8,500人を集客し、こちらは利益が出ているという。
相談を受けた亀山氏のアドバイスは具体的だった。
「単純に言えば、無料の人たちから500円取って、有料スペースのチケットを5,000円に上げる。スポンサーで利益が出ているところには値上げをお願いする。100万円払って1,000万円のリターンが出ているなら、500万円もらってもいい」
さらに、スポンサーの差別化戦略も提案された。「ユーザーが喜ばないスポンサーは高め、盛り上げてくれるスポンサーは安め。そうやって囲い込んでいくユーザーを増やせば、それ自体が財産になる」
船越氏は、B2Bモデルの強さと裏返しの課題を吐露する。
「バーチャルイベントもリアルイベントも、ほとんどB2Bで賄えていて、出展企業のお金で成り立っています。クリエイターの出展物の取引には一切関与していない。デジタル空間はユーザー無料です」
スポンサーには自動車メーカーや化粧品メーカーなど、リアル商品のブランドが多い。バーチャル空間でゲームや謎解き、シューティングといった体験型コンテンツを通じて商品をPRする「メディア」としての役割を果たしている。
しかし、C向けのマネタイズ手段は弱い。クラウドファンディングを試した時期もあったが、成長してくると伸びが鈍化。亀山氏は「ガチャやアイテム販売など、本気で『作って売る』ことに目を向けていないのでは」と指摘した。
話題は資金繰りに及ぶ。船越氏は「リアルイベントで1億円が飛ぶこともある。多生事業はB2Bで伸ばすが、跳ねるような成長が見えない」と苦しさを語る。
ここで亀山氏が放った言葉が印象的だった。
「正直言って、今VRで生き残っているなんて俺からするとすごいと思うよ。Metaでさえ相当撤退している。でも来るとは思うんだよね、そのうち。10年なのか20年なのか5年なのかが厄介なところ。今の段階で成長を続けているのは結構な財産だよ」
そして亀山氏は、調達資金を活用しながら長期戦に備えるべきだと続けた。「あと5年で離陸するかもしれない。今ある資金で、もし10年持つなと思えるなら、料金を上げずに行くのも手。ユーザーが減るリスクのほうが怖いから」
船越氏が最近手応えを感じているのが、リアルイベントでの常設・体験型コンテンツへの展開だ。新規来場者が毎回30%含まれ、数万人ずつ新規顧客が増えている。
「チームラボさんのようなビジュアル特化型ではなく、私たちはテック寄りの体験型。これをB2C展開できないかと考えています」
亀山氏も「体験型なら一度見に行きたい」と興味を示し、追加調達についても示唆した。「バリュエーションを下げたくないなら、前と同じか少し高めで集めておくのも手。長期戦だからこそ、いつ来るか分からない『その時』のために、コミュニティを大きく保ち続けることが大事」
対談の最後、お互いに学びを一言で表すコーナーで、二人の答えは奇しくも同じだった。
船越氏:「生き残る」
亀山氏:「生きる」
「クリエイティブの事業を小さく続けるのは得意でしたが、資金調達をしていつ跳ねるか分からない事業は初めて。今日のお話で、生き残って跳ねるところに刺さるものを持っておくことが大事だと改めて分かりました」と船越氏。
VR・メタバースという、ブームと撤退を繰り返してきた領域で、確実に成長を続けるヒッキー。亀山氏が示した「生き残ること自体が価値」という視点は、長期で勝負する起業家にとって普遍的なメッセージとなった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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