1人法人として受託開発で安定収入を得るエンジニアが「自社プロダクトを持ちたい」と相談。DMM亀山会長は、受託からの脱却ではなく、得意分野を活かしてレベニューシェアやストックオプションで報酬モデルを変える共存戦略を提案した。
フリーランスのエンジニアから法人化し、現在は1人で会社を経営しているリツ氏。受託や業務委託で売上を立て、8期目を迎えるところまで事業を継続してきた。AIを活用すればホームページを3分で作れるほどの開発スピードを持ち、「ソロプレナー」として高い能力を発揮している。
しかし、受託を続ける限り「自分が働き続けないといけない」という終わりのなさに課題を感じていた。マネジメントが得意ではないため社員を雇って組織化する道は選ばず、人を増やすつもりもない。それでも「働かなくてもチャリンチャリンと収益が入ってくるモデルを作りたい」という思いから、自社プロダクトの開発を模索しているという。
そんなリツ氏がDMM亀山会長に相談を持ちかけた。
相談の中でリツ氏は、自分自身に強いこだわりのあるプロダクトアイデアがあるわけではないと打ち明ける。友人とアイデアを出し合いながら何かを作ってみる、というスタイルだ。
これに対して亀山会長は率直に切り込む。「アイデアは多分出ないよ。今の段階で何かあるって言ってないんだから」。本当に作りたいものがあれば、受託の合間にコツコツと自分で作り始めているはず、というのが亀山会長の見立てだ。
さらに、無理にアイデアをひねり出してゼロから事業を立ち上げようとしても、営業や対外的なコミュニケーションといった不得意な領域に踏み込まざるを得なくなる。「集団で仕事をするのが苦手なタイプ」であれば、経営者を雇って任せても関係性がうまく機能しない可能性が高いと指摘した。
亀山会長が提案したのは、受託そのものを否定するのではなく「売り方を変える」という発想だった。
通常の受託は、開発費を一括で受け取って納品して終わるショット型のビジネスだ。これを、開発費を最低限に抑える代わりに、売上の一定割合を継続的に受け取るレベニューシェア型に切り替える。あるいはストックオプションや株式を一部もらう形にする。
「コスト出しでストックオプションをもらって、伸びた分でリターンを得る。これが一番分かりやすい」と亀山会長。VC(ベンチャーキャピタル)が入っていて上場を目指している会社であれば、ノーギャラ・低単価で開発を引き受け、上場時に株を売却して大きなリターンを得るという選択肢もある。上場しない会社でも、売上の5〜10%を毎月受け取る契約を組めば、安定的なストック収益が積み上がっていく。
リツ氏も「ダイアリーのストックオプションで一度試してみます」と前向きに反応した。
一方で亀山会長は、契約の組み方にはリスクもあると釘を刺す。
例えば5年契約を結んでいた場合、6年目以降に大型化したタイミングで「システムを変えます」と言われて関係が終わるケースもある。せっかく売上が伸びてきたところで切られてしまえば、本来得られるはずだったリターンを取り逃すことになる。
「どんなビジネスも大体立ち上げ期に売上が出たことがないから、売上の10%もらってもさ、最初は1万しかもらえません。やっと100万もらえるようになったら切られました、という話はある」。
こうした事態を避けるために、契約書の作成段階で弁護士などの専門家に相談することが重要になる。1人法人だからこそ、契約周りは外部の専門家を都度活用すればいい、という現実的なアドバイスだ。
対談の終盤、亀山会長は受託ビジネスとの向き合い方について本質的な指摘をした。
受託系の経営者の多くは「自社サービスへの転換」を志向するが、亀山会長自身もDMMの黎明期にはビデオレンタルの安定収入があったからこそ、新しい事業に投資できたと振り返る。安定収入の源泉として受託があるのは、むしろ経営的に強みになる。
世界的に知られるチームラボも、元々は受託開発をベースに技術を磨き、その延長線上でアート領域に展開した会社だ。「受託自体を脱却する必要はなくて、受託はちゃんと置いておいて、それで新しいことをやる」。万が一新規事業がうまくいかなくても、受託の収益があれば事業を続けられる。
採用面でも、受託と自社プロダクトで必要な人材は本質的に大きくは変わらない。「どんな派手なプロダクトでも、開発はどちらも地道にコツコツやるもの」だからだ。サーバーが止まらないように運用するセキュリティ・エンジニアリングの土台があってこそ、その上に派手なプロダクトが乗る。
亀山会長は「一斉もないスタートアップがVCから資金を集めて派手なことをやる時もあるけど、散る可能性もかなり高い」と指摘する。受託で生活基盤を支えながら新しいビジネスを育てる方が、経営的には硬い選択だ。
「ちゃんと守るものを守って、その上でビジネスを広げる。派手なところに惑わされないでください」というのが亀山会長の結論だった。
リツ氏が抱えていた「受託からの脱却」という二者択一の問いは、「受託の契約形態を変えながら共存させる」という第三の解に置き換わった。得意な技術領域に軸足を置いたまま、レポートラインを成果報酬型に変えていく――これが、1人法人のソロプレナーにとって現実的かつ拡張性のある経営戦略となる。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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