ChatGPTをはじめとする生成AIが急速に注目を集める中、なぜAI企業の評価額は急騰しているのか。AI企業を経営する津本氏に、生成AIが持つ本質的な価値、企業導入のポイント、そして経営者が今すぐ身につけるべきAIとの付き合い方を聞いた。
ChatGPTの登場以降、生成AIをめぐる動きが加速している。OpenAIには一時4兆円規模の時価総額がつき、関連銘柄の評価も急騰した。なぜこれほどまでに注目され、企業価値が高まっているのか。そして、明日から自社の経営にどう生かせるのか。AI企業・株式会社スニフアウトを経営する津本氏と、同社でマーケティングを担当する社会人2年目のフリーランス・くみ氏に話を聞いた。
生成AIが注目される理由について、津本氏は「2つの意味で優秀なポイントがある」と語る。
1つ目は、純粋に賢いという点だ。最新のGPT-4モデルは、アメリカの司法試験で上位10%程度の成績を叩き出すレベルにある。本来であれば月100万円以上かかるような優秀な人材に相当する知能を、月数千円で誰もが利用できる状態になっている。さらに生成AIはプレトレインドモデルと呼ばれ、ネット上のあらゆる情報をすでに学習している。人間が数十年かけて学ぶ量をはるかに超える知識を備えており、これは「人間の知能拡張」に相当するという。
2つ目は、人が思考する業務まで代替できる点だ。これまでDXの文脈でITによる自動化が進められてきたが、「人がちょっと考えてやらなければいけない」タスクは自動化が難しかった。GPTはあたかも思考したかのような回答を出力できるため、これまで自動化できなかった領域まで踏み込める可能性が見えてきている。
つまり現在のAI企業に集まっているお金は、すでに利益が出ているからではなく、この「可能性」に対するベットの色が濃い。一方、津本氏の会社のように、現時点でも顧客企業に対する支援を通じてキャッシュインできるビジネスモデルを取っているケースもある。
スニフアウトでは、企業に対して生成AIの活用支援を行っている。津本氏によれば、現在のChatGPTでも使い方を理解すれば業務効率は劇的に改善する。
例えばリサーチ業務では、検索を自動で行い、フォーマットの整った書類にまで仕上げ、図解する一連の流れをプロンプトで自動化できる。「今までドラフト作成に3〜4時間かけていた作業が3分で終わる」といった事例も実際に起きているという。
エンジニアリングでも変化は顕著だ。生成AIはネット上の優秀なプログラムを学習しているため、初心者が書いてもある程度のクオリティのコードが出力される。これまで3時間かかっていた作業が1時間に短縮されるケースもリアリティを帯びてきている。同じ成果報酬で時間を短縮できれば、エンジニアの実質的な人月単価は跳ね上がる。
MicrosoftはOpenAIの株主であり、Office 365にChatGPT相当の機能を組み込むなど、サービスへの統合を積極的に進めている。指示を出せばExcelシートの作成までこなせる機能はすでに実装されており、5年以内に「人として動けてしまうモデル」が登場する可能性も十分にあるという。
この流れは、採用や組織のあり方にも変化を迫る。
プレイヤーレイヤーの人材を雇いたいが、1人月分のフルタイムは必要ない――こうしたケースで、これまでの選択肢はフリーランスや業務委託だった。津本氏は、ここに「AIを雇う」という選択肢が加わるはずだと指摘する。AIの方が早く、安いケースも多い。唯一の障壁は、AIへの指示の出し方が下手だとAIもうまく機能しないという点だ。
ハルシネーション(AIが事実と異なる情報を生成する現象)への懸念もあるが、Webブラウジング機能と組み合わせ、参照URLを明示させる設定にすればリファレンスチェックが可能になり、抑制できる。一方で、ハルシネーションを抑え込みすぎるとシミュレーションのような能力まで削がれてしまうため、用途に応じた使い分けが必要だという。
社員数が多いほど偉いという価値観も揺らぐ。津本氏の知人には、1人で会社を立ち上げ、AIで「従業員5〜6人いる状態」を作り出している経営者もいるという。従業員数は本質的には売上や利益に比例するとは限らない。本質的な価値にフォーカスせざるを得ない世界が来る。
「ChatGPTでは人はいらなくならない」とする論には、「ChatGPTは手を動かせない」という根拠がよく挙げられる。テキスト出力はできても、それをnoteの記事にするにはコピー&ペーストが必要で、フィジカルな作業は人間が担うほかない――という議論だ。
しかし津本氏は、GPTのAPIを使って社内システムに組み込んでしまえば、noteのAPIやSalesforceのAPIへの入力まで自動化できると指摘する。「ChatGPTを裏側に仕込んだ社内システムを作る」のが、新しい生成AI時代のDXの形だ。
動画コンテンツも例外ではない。話者の動画を10分程度AIに学習させれば、テキストを入力するだけで本人が話したかのような動画――口の動き、仕草、声まで再現したもの――を生成できる段階に来ている。
津本氏は、生成AIに対する誤解として「対話形式が強み」と思われがちな点を挙げる。プロンプトを適切に制御すれば、出力形式は自在にコントロールできる。大手企業の決まったフォーマットにも対応可能だ。
つまり、生成AIの本当の価値は「人が思考することに相当する業務をこなせる」点にある。ECサイトのSNS投稿文案のように、毎回ちょっと考える必要があるためにこれまで自動化できなかった作業も、生成AIなら自動化できる。実際にスニフアウトでも、PR記事の執筆や公式Twitterの投稿候補出しに活用しているという。
アイデア出しが苦手だと言われがちなChatGPTも、プロンプト次第で十分に使える。津本氏が紹介したのは「セルフデバッキング」というテクニックだ。GPTに自分のアウトプットへフィードバックを与え、それを5回繰り返させると、最終的に質の高いアウトプットが得られる。M&A CAMPというチャンネル名も、ChatGPTに500個ほど候補を出させて決めたものだという。
孫正義氏も講演で、新規事業の企画会議のブレストをAI同士にさせていると語っている。プロンプトで人物像とシチュエーション、テーマを設定すれば、AI同士の議論をシミュレーションさせることが可能だ。
AI領域では企業のM&Aも活発化している。生成AI領域は技術的にはさまざまなものを作れる一方、まだ歴史が浅く、顧客リストを持たないケースが多い。営業効率やグロースを実現するには大手のパワーが必要であり、画像系などインフラ整備が大変な領域では特に、大手との提携は有効な選択肢になる。
経営者、とりわけマネージャー以上のレイヤーがChatGPTを学ぶインパクトは大きい。指示を出す側だからこそ、AIへの指示出し(プロンプトエンジニアリング)の習熟が成果に直結する。
学習方法はシンプルだ。まずChatGPTを触ってみる。何を打てばいいかわからなければ「とりあえず◯◯やって」というスタンダードプロンプトから始め、出力を見て「こういう条件で」と条件を追加していく。これを繰り返すのがプロンプトエンジニアリングの独学の王道だという。
津本氏が強調するのは、「生成AIなら何でもできると信じ切ること」だ。AI業界で第一線に立つ人々は皆、業務でつまずいたときに「これはきっとAIで自動化できるはずだ」と腹の底から信じてリサーチしている。皆さんが想像している以上に生成AIは何でもできる――これがキャッチアップの最大の秘訣だという。
生成AIは知識量と思考の代替という2つの軸で、これまでの「人が動かなければならない仕事」を急速に塗り替えつつある。社員を増やすという発想そのものが揺らぎ、AIを雇う、AIを社内システムに組み込むという選択肢が現実的になってきた。
採用に踏み切る前に、その業務がAIで代替可能かどうか――。経営者がいま問い直すべきはこの問いかもしれない。津本氏が経営する株式会社スニフアウトでは、生成AIの社内導入やサービスへの組み込みに関する相談を受け付けている。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


2025/4/11

2025/3/6

2024/4/4

2026/2/6

2026/1/25

2025/12/23