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総合>ビジネス動画>22社を短期間で買収したエフコード工藤社長が語る、失敗しないM&Aの方法と経営哲学

22社を短期間で買収したエフコード工藤社長が語る、失敗しないM&Aの方法と経営哲学

2026/1/25
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上場後わずか4年弱で22社のM&Aを実現した株式会社エフコード代表・工藤勉氏。元外交官志望の学生起業家から、22社を傘下に収めるホールディングス経営者へと至る軌跡と、高値掴みを避け創業者が残り続けるM&A戦略の本質を語る。

外交官志望から学生起業家へ、180度の方向転換


株式会社エフコード代表取締役の工藤勉氏は、1983年に愛媛県で生まれた。大学に入学するまでは外務省に入って外交官になることを志していたという。日本だけでなく世界中に貢献する官僚に憧れていたが、東京大学法学部に入学後、OBである現役官僚たちと話す機会を得て進路を再考することになる。


大学2年頃まで「プラプラしていた」と振り返る工藤氏は、起業した先輩に誘われてビジネスの世界に足を踏み入れる。1社目の経営に1年ほど携わった後、2006年3月、まだ大学在学中に株式会社エフコードを創業した。学生起業ではあったが、就職を選ぶ意識はほとんどなく、結果的に大学はフェードアウトする形となった。


リーマンショックを経て7年で生まれた自社プロダクト


1社目の事業は、インターネットを活用して全国の自動車学校に生徒を紹介するモデルだった。この経験からインターネットの可能性を強く感じた工藤氏は、エフコードを「インターネットを利活用したコンサルティングビジネス」として立ち上げる。不動産業や人材業など大手企業のインターネットマーケティングを支援する形でスタートした。


創業当初の目論見は、コンサルティングで3年ほど資金を貯めて自社プロダクトを開発するというものだった。しかし2008年のリーマンショックで売掛債権の回収が困難になり、東日本大震災では企業の広告費が止まるなど、計画は思うように進まなかった。


最初の自社プロダクトをリリースできたのは創業から7年後の2013年。利益剰余金として5〜6千万円ほどを積み上げ、銀行からの借入と合わせて約5千万〜1億円弱を投じての立ち上げだった。


「ソリッドベンチャー」として歩んだ7年と上場への180度転換


エフコードは創業から数年は売上数億円規模で着実に伸ばすスタイルを貫いた。営業キャッシュフローを確実に出し、銀行とも取引しながら、株式は経営陣で全て保有。資金調達やIPOは全く意識していなかったという。


転機となったのは海外展開の構想だった。国内も着実に伸び、海外進出も進めていたが、自分たちの人生の中で200カ国に展開することは現実的に間に合わないという問いが浮上した。「1段2段3段上げるには、オーガニックグロースだけじゃなくてM&Aの利活用しかないのではないか」――この発想から、社会的信用と多額の資金調達のために上場を目指すという180度の方針転換を決断。2018年から上場準備を開始した。


銀行借入中心のM&Aファイナンス戦略


エフコードはこれまで実施したM&Aのほぼ全てを銀行借入で実行している。ただし全額借入だけでは投資家から財務安全性への懸念を持たれるリスクがあるため、純資産を補う目的で2回ほどエクイティファイナンスも実施している。借入額に比べれば小さい額だが、より大きなM&A機会に銀行からスムーズに融資を受けられるようにするためのバランス調整だ。


上場前にもプロダクト強化のためわずかに調達したが、コンサルティングとSaaSの利益が出ていたため、エクイティでの大型調達はほぼ行わなかった。「IPOはあくまで通過点で、そこからM&Aファイナンスとして市場から多額の資金を得て成長速度を上げていく」という戦略だったため、上場前のエクイティ調達は最小限に留めたのだ。


4年弱で22社、2ヶ月に1回のペースでグループイン


上場後の工藤氏の経営は、宣言通りM&Aの連続だった。上場から約4年弱で累計22件のM&Aを実施。1年間に5〜6件、ほぼ2ヶ月に1回のペースでドメスティックな会社をグループに迎え入れている。


最初の1年間で実施した5件は、すべてエフコードと同業のマーケティングSaaS企業だった。コントローラブルなサイズ感で、自社の事業領域として手慣れた分野から始めるという慎重さがそこにはあった。1件あたりは数億円規模で、最悪うまくいかなくても自社事業で取り返せる範囲に収めていたという。この5件を通じて、ソーシング、デューデリジェンス(買収先の調査)、PMI(買収後の統合)、バリューアップの手応えを掴んでいった。


高値掴みと経営者離脱を防ぐ二つの基本方針


工藤氏は「上場企業のM&Aは7〜8割が失敗する」と言われる原因を、自社内の分析として「高値掴み」と「売却直後の創業者離脱・モチベーション低下」の2つに大別している。エフコードはこの2つを構造的に避ける設計をM&A方針の中核に据えている。


定量面では、成長している黒字企業のみをグループインの対象とすることで、高値掴みのリスクを抑える。定性面では、その会社の経営者が素晴らしい人物か、そしてその経営者が一定期間グループの中に残って一緒に経営をしてくれるかを最重視している。


「法的にロックアップしても意味がない」と工藤氏は語る。優秀で意欲の高い起業家を3年間法的に縛っても、本人にやる気がなければ形だけの出社になってしまう。重要なのは、本人が自発的にグループ内で活躍したくなる環境とインセンティブの設計だという。


自発的に残りたくなるインセンティブ設計


エフコードがグループインの際に設計するインセンティブは、複層的な構造を持つ。M&A時に業績連動の経済的インセンティブを取り決めるアーンアウト的な仕組みに加え、二段階譲渡やスイングバイIPO(グループ内で再上場を目指す)のオプション、株式交換やストックオプションといったエフコードのエクイティを通じたインセンティブも組み合わせる。


単体で頑張った場合のインセンティブと、その結果としてエフコードの企業価値が伸びた際のさらなるインセンティブ。この二層構造により、創業者が「義務として残る」のではなく「より大きなチャンスを掴むために残る」状態を作る。


加えてPMIの過程では、起業家が苦手としがちなコーポレート系機能をホールディング会社が巻き取り、販路や各種リソースを供給することで、スタンドアロン時代より成長させやすい環境を整える。これらの取り組みの結果、グループインしたオーナーから新たなM&A候補先の紹介を受けるケースも非常に多いという。


月40件のソーシングと、社長自らが向き合う「人間対人間」の信頼構築


エフコードには月平均で約40件のM&A打診が寄せられている(開示数値)。その中から相性の良い案件を厳選しているが、選考プロセスでは社長自らが極力初期段階で売り手オーナーと対面することを徹底している。


工藤氏は自社のCFOチームについて、公認会計士や大手監査法人を経てベンチャーを渡り歩いた経験豊富なメンバーが揃い、プライベートエクイティファンド出身のM&A責任者も擁すると説明する。デューデリジェンスやファイナンス、バリュエーションといった専門的なエグゼキューションはこのチームに任せ、自身は「売却候補先のオーナーと仲良くなるべく努力する」役割に徹しているという。


初回面談で極力本人と会い、事業DDのプロセス中にも顔を合わせ、最終条件のすり合わせ段階でも対話する。最低でも2〜3回は対面で時間を取り、食事や酒の場も含めて互いの人間性を理解する。グループイン後にやりやすくなることもやりにくくなることもオープンに伝えるのが工藤氏のスタイルだ。


バイアウト後のオーナーが新たな案件を運ぶ好循環


エフコードでは、バイアウト後にグループ内で活躍するオーナーが増えてきており、彼らから他の起業家にエフコードの内情がリアルに伝わる構造が生まれている。「上場企業だからコンプライアンスは厳しいが、ここはいい」といった本音での評価は、エフコード本体が発信する情報よりも説得力を持つ。


工藤氏は、グループインした15〜20人規模のアントレプレナーたちから、AI、SNS、オンラインスクールビジネスの構造など、最新のテクノロジーやビジネスモデルを学ばせてもらっていると語る。22件のM&Aのうち、グループイン後に深刻な失敗となったケースはほとんどないという。黒字成長企業を選び、創業者がしっかり残る形で迎え入れる方針が、結果としてダウンサイドリスクを大きく抑えている。


IPOは万人のための選択肢ではない


35歳前後の経営者に向けて、工藤氏は「必ずしもIPOを目指す必要はない」と提言する。M&Aという選択肢がある中で、グロース市場の現状を踏まえると、IPOがM&Aを超える大きなリターンを期待できるとは限らない。


大切なのは「自分たちで意思決定権を握れる状態をキープすること」。営業キャッシュフローを稼ぎ続け、資本構成を自分たちで決められる状態であれば、IPOしたい時期が来ればIPOを目指せばよいし、バイアウトが最適と思えばそれを選べばよい。「IPOは社会をパブリックカンパニーにするということ。腹をくくってするべきもの」であり、限られた一部の経営者には適していても全員にとって最適ではないという考え方だ。


この哲学は、ベンチャーファイナンスについても同様だという。後戻りできない意思決定をする前に、本当にそれをしないとできない未来があるのかを問い直し、まずは営業キャッシュフローを稼ぎ続けることが最も大切だと工藤氏は強調する。


「ソリッドベンチャー」の唯一のリスクは飽きること


手堅く着実に成長するスタイルを「ソリッドベンチャー」と呼ぶならば、エフコードはまさにその典型と言える。エクイティ依存の高成長スタートアップを横目に焦りを感じることはなかったかという問いに対し、工藤氏は「ゲームが違う」と捉えていたと答える。自分たちで稼ぎ出している以上、ある意味で自由な経営ができていたからだ。


ただしソリッドベンチャー型の唯一のリスクとして、工藤氏が挙げるのが「着実すぎて飽きてしまうこと」である。これを避けるため、自身の30代は3〜4年スパンで取り組むテーマを意図的に切り替えてきた。リーマンショックと震災を経てコンサルティングを黒字化、2013〜15年でSaaS事業を立ち上げ、2016〜18年で海外展開、2019〜21年で上場準備、2021〜25年でM&A三昧という具合だ。テーマが変われば付き合う人も変わり、新たな学びと出会いが生まれる。「中小企業ではなくソリッドベンチャーであるためには、3〜4年スパンで経営陣が大きな山だと思えるテーマに向き合っていることが必要」と工藤氏は語る。


株価との向き合い方とIR戦略


上場企業として避けて通れない株価への向き合い方について、工藤氏は冷静だ。当初はトランプ関税局面でグロース市場全体が下落するなどの外的要因に衝撃を受けることもあったが、「最後はいいビジネスをやっていい業績を出すことに株価は収斂する」という確信のもと、中長期視点に意識を集中させているという。


IR戦略については「投資家は自分たちのことを知らないという前提」に立つ。プレスリリースやホームページ掲載といった従来の方法に留まらず、SNSやYouTubeを通じてグループ会社の商品導入事例やイベント登壇情報など、あらゆる情報を投資家に届ける努力を続けている。今後はSNSやYouTubeを活用したIRが勝負どころになると見ている。


今後求める起業家像


エフコードはこれからも国内最速での成長とグローバル展開を目指す方針だ。工藤氏が求めるのは「M&A後しばらくはグループでその事業を大きく伸ばしていこう、グループの中で自分の能力を最大限発揮しようと思える起業家」である。「しばらく」とは個別対応で決まるが、平均すると3年程度のケースが多いという。法的拘束ではなく、自発的にグループ内で活躍を目指す形だ。


上場企業グループに入れば、すでにグループインした15〜20人規模のアントレプレナーたちと刺激を与え合い、ソリッドベンチャー単体では得られない経験や人脈を得られる。工藤氏が提示するのは、単独での経営継続とはまた異なる、もう一つの起業家としての成長軸である。


※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです

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目次

  1. 1.外交官志望から学生起業家へ、180度の方向転換
  2. 2.リーマンショックを経て7年で生まれた自社プロダクト
  3. 3.「ソリッドベンチャー」として歩んだ7年と上場への180度転換
  4. 4.銀行借入中心のM&Aファイナンス戦略
  5. 5.4年弱で22社、2ヶ月に1回のペースでグループイン
  6. 6.高値掴みと経営者離脱を防ぐ二つの基本方針
  7. 7.自発的に残りたくなるインセンティブ設計
  8. 8.月40件のソーシングと、社長自らが向き合う「人間対人間」の信頼構築
  9. 9.バイアウト後のオーナーが新たな案件を運ぶ好循環
  10. 10.IPOは万人のための選択肢ではない
  11. 11.「ソリッドベンチャー」の唯一のリスクは飽きること
  12. 12.株価との向き合い方とIR戦略
  13. 13.今後求める起業家像
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