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総合>ビジネス動画>エクイティは後戻りができない──スタートアップが資金調達で押さえるべきシリーズA・Bの勘所

エクイティは後戻りができない──スタートアップが資金調達で押さえるべきシリーズA・Bの勘所

2024/1/29
M&A CAMPチャンネル
M&A CAMPチャンネル運営局

公認会計士としてEYで監査・M&Aに従事し、スタートアップ2社でファイナンスやIRを担ってきた中辻氏に、シリーズA・Bにおけるエクイティファイナンスの注意点を聞いた。資本政策の初手から株主間契約、出口戦略までを解説する。

スタートアップが成長していく上で避けて通れないのが、エクイティ(株式)による資金調達だ。しかし「一度入れた株主とは最後まで付き合う覚悟が必要」と語るのは、公認会計士として大手会計事務所でM&A業務に携わり、スタートアップ2社でファイナンス・IRを担当してきた中辻氏。2026年4月に独立し、スタートアップコンサルと海外案件を主軸に活動を始める。本記事では、シリーズA前後とシリーズB前後それぞれのフェーズで、経営者が押さえておくべきポイントを聞いた。


「打てる玉は限られている」──エクイティ調達は最後まで付き合う覚悟から


まず中辻氏が経営者に必ず確認するのは、何かしらの出口(イグジット)を設ける覚悟があるかどうかだという。


「エクイティで一度外部の株主を入れると、その方々にきちんとリターンを用意してあげないといけない。そこまでの覚悟があるかをまずお聞きしています」


そしてもう一つ、初回ラウンドで陥りやすい落とし穴が、持ち株の放出比率だ。初めての調達で6〜7割を外部に放出してしまうケースはかなり危ういと中辻氏は警鐘を鳴らす。


「エクイティって打てる玉が限られているんです。一度渡してしまうと戻せないので、初めの資本政策が本当に大事になります」


初めて資金調達に臨む経営者は知識が乏しく、いわば「武器のない状態で戦いに行く」状況になりがちだ。それでいて最初のラウンドが資本構成に最も大きな影響を与えるため、ここに難しさがあるという。


株主間契約に潜む「買戻条項」と拒否権の罠


近年は優先株式での調達が主流であり、それ自体は問題ないと中辻氏は言う。ただし、契約条項には注意が必要だ。


「拒否権や買戻条項が入っているケースは多いです。例えば取締役の地位を離れた場合に株を売らなければいけない、その場合の売却価格はいくらか、といった条項が含まれていることもあります」


つまり、シリーズAで結んだ契約次第では「取締役を外れたら株を手放さなければいけない」という事態すら起こり得る。しかも、シリーズAの株主間契約はその後のシリーズB、Cにも基本的に引き継がれる。


「Aで作ったフォーマットをBで全く違うものに変えるとなったら、Aの投資家にとって有利だった条件が急になくなることになるので、説明が必要になります。最初の株主間契約や契約書は本当に大事です」


こうした論点は弁護士に相談するのが基本だが、弁護士は「あるべき論」を語るだけのこともある。実務面で最終意思決定するのは経営者自身であり、受ける側にも一定のリテラシーが求められると中辻氏は強調する。前職の経営者やCFO経験のある知人、外部アドバイザーなど複数の知見者に当たることが望ましい。


シリーズBで問われる「実績」と出口バリュエーション


シリーズAとシリーズBでは、投資家から見られるポイントが大きく変わる。


「Aの時はまだ将来を見てくれている割合が大きいのですが、Bになると過去のトラックレコードを見られる比率が高くなります。同時にIPOが近づいてくるので、出口のバリュエーションを投資家側も意識し始めるんです」


投資家は出口から逆算して「今このバリュエーションでないと割に合わない」という議論をしてくる。経営者側は時価総額を高く付けて放出株数を抑えたいと考えがちだが、それは将来の自分に高い目標を課すことでもある。


「4年後の答え合わせになる世界なので、本当に難しいんです。もしかしたら安売りしていたかもしれないし、逆に高すぎたかもしれない」


調達直後こそ次の調達活動を始めるべき


シリーズBで成功している経営者に共通するのは「信頼」だと中辻氏は語る。投資家と常時コミュニケーションを取り、信頼を積み上げていくことが重要だ。


象徴的なエピソードとして紹介されたのが、調達が終わった当日に次の投資家候補に会いに行く経営者の存在だ。


「教科書的には完全に正しい行動だと思います。調達直後はIR効果もあって会社が一番油に乗っているタイミング。そのときこそ次の調達活動をすべきなんです。なかなかできないことですが、信頼を獲得できますし、流れにも乗っていけます」


「利益が出ていないとバリュエーションがつきづらい」現在の市況


最後に、現在の調達環境についても語られた。1〜2年前のバブル的な高バリュエーションが続いた時代から、市況は明確に変わったという。


「投資対効果をきちんと見極めて、ガンガン投資して売上だけ伸ばせばいい、というフェーズではなくなってきています。特にスタートアップは利益が出ていないとバリュエーションがつきづらい世界観になっています」


2年前のような相場が当分戻ってくる感覚はないと中辻氏は言う。地に足をつけて利益を出しながら成長していくのが、現在の王道だ。


まとめ:エクイティ調達は「返す覚悟」から始まる


エクイティファイナンスは無償で資金を受け取れるものではなく、株主に対してより大きなリターンで返す覚悟が前提になる。融資以上に、株主と経営陣の信頼関係が問われる資金調達だ。


- そもそもエクイティを使うべきかをまず見極める

- シリーズAでは資本政策と株主間契約の初期設計を慎重に行う

- シリーズBではトラックレコードと出口バリュエーションを意識する

- 調達直後こそ次の調達活動と信頼構築を始める


これから資金調達に臨む経営者、シリーズA・Bを控える経営者にとって、押さえておきたい原則と言える。中辻氏のより詳しい発信はXやnoteでも展開されている。


※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです

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目次

  1. 1.「打てる玉は限られている」──エクイティ調達は最後まで付き合う覚悟から
  2. 2.株主間契約に潜む「買戻条項」と拒否権の罠
  3. 3.シリーズBで問われる「実績」と出口バリュエーション
  4. 4.調達直後こそ次の調達活動を始めるべき
  5. 5.「利益が出ていないとバリュエーションがつきづらい」現在の市況
  6. 6.まとめ:エクイティ調達は「返す覚悟」から始まる
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