芸能活動を休止し、お茶事業で起業した小島瑠璃子氏。抹茶を避けた「ほうじ茶専門店」構想を、DMM亀山敬司会長にぶつけた事業相談の全貌。鳥の目より虫の目、コツコツ30%成長、リスク最小化の実験など、創業初期に必要な現実的アドバイスが凝縮された対談。
15歳から芸能活動を続けてきた小島瑠璃子氏は、28歳で活動を一時休止。中国留学、結婚、出産、シングルマザー化を経て、現在「経営と腰を据えて向き合うフェーズ」に入ったと語る。
芸能界に不満があったわけではない。むしろ「新卒で入った会社」のような感謝の対象だ。社会人としての所作、コミュニケーション、ブラック体制への耐性も、すべて芸能の現場で培われたという。一方で、15歳の頃から「いつか経営をやりたい」という想いを持ち続けていた。母にもその夢を打ち明けていたほどだった。
芸能活動も並行しつつ、本格的に事業の世界へと舵を切る。今回はその第一弾として「お茶事業」の構想をDMM亀山敬司会長にぶつけた。
小島氏が選んだテーマは「抹茶を除外したお茶」。世界中で抹茶ブームが続く中、あえて逆張りのポジションを取る発想だ。
理由は大きく3つあるという。
1つ目は、抹茶の海外需要が爆発的に伸びる一方で、本来の製法(碾茶を経て粉砕する正法)を経ていない代替品が出回り始めていること。2つ目は、碾茶を作る機械が中国・ベトナムへ大量輸出され、海外でも一定品質の抹茶生産が可能になりつつあること。そして3つ目は、農家が煎茶の畑を抹茶畑へ転換しているため、抹茶以外のお茶の供給量が減り、後継者不足の問題と相まって品質維持が難しくなっている現状だ。
小島氏はこれらの課題感から「抹茶以外のお茶の単価を底上げしたい」と考え、コンセプトを「ほうじ茶」に絞り込んだ。スターバックスにある唯一の和テイストラテが抹茶ラテとほうじ茶ラテであることを根拠に、抹茶の次にグローバルで勝負できるのはほうじ茶だと判断したという。
出店構想は、表参道や中目黒、青山といった都心エリアに、5坪未満のテイクアウト専門店を出すというもの。ターゲットは20代後半から40歳前後の女性。グルテンフリーのスティック型バーをセット販売する計画だ。
プランを聞いた亀山氏のリアクションは率直だった。
「逆張りに何の価値もない。俺だったらトレンドで言うと今、抹茶が流行ってるんだから抹茶に行く」
世界中が抹茶を求めている以上、需要が確実にある市場に乗らない手はない、というのが亀山氏の論理だ。逆張りが成功する根拠よりも、順張りで成功する根拠のほうがはるかに高い。少なくともグローバル展開を見据えるなら、まず日本で売れないと話にならない。そして1店舗目を出すなら「そのエリアで何が売れるか」だけで十分判断できる。
「世界の供給がどう、海外のトレンドがどう、と語っても、最初に必要なのは半径1キロ圏内のマーケティングだ」と亀山氏は指摘する。鳥の目で世界を俯瞰する前に、虫の目で近所を隅々まで観察すべきだという主張だ。
仮に抹茶を扱うとしたら自分はどうするか。亀山氏はその場で具体的な戦略を語り始めた。
まず、需要に対して供給が追いつかない今のうちに、できるだけ早く抹茶を作る。供給が肩を並べる前に営業ルートを構築し、A・B・Cといった品質ランクで複数ラインを用意する。「メイドインジャパン」というブランドを前面に押し出し、世界中のバイヤーに卸す。
ポイントは「最初は利益を乗せず、販路を広げることに徹する」点だ。安さで取引先を増やし、ロットがまとまれば農家と直接契約に切り替える。供給量が増え価格競争になれば、今度は買い手としての立場を強くし、産地から一括で仕入れて世界に流す商社的なポジションへと移行する。
「どんどん上流に登っていく」という構造を、亀山氏は淡々と描いてみせた。
小島氏が「亀山さんは創業初期、どうやって事業テーマを決めていたのか」と尋ねると、亀山氏は若き日のエピソードを語り始めた。
30代の知人から雀荘経営を学び、ビリヤードバーに手を出し、ビデオレンタル店に出会う。店の前に1日張り込み、入店客数と平均借り受け本数を観察し、「これは儲かる」と判断して参入した。
「ドトールが150円のところでオリジナルが130円で似た味のコーヒーを出している。これはどこかで作らせて利益率も高いはずだ」——日常の中で看板の変化や商品配置のロジックを読み解く目線を持ち続けてきたという。「綺麗なビデオ屋ができたら遊びに行こう、と思うか『あ、これ儲かってるな』と思うか。そこで視点が違う」
ブランドの強さで生き残れるのはカップヌードルのような一握りで、カキピーやイカのおつまみのような商品は、いずれコンビニのプライベートブランドに置き換わっていく——その構造を読みながら、亀山氏はビジネスを選んできた。
資金調達の相談に話が移る。小島氏は創業融資2000万円程度でスタートしたいと語る。1店舗800万円程度で2店舗、東京で展開する想定だ。
ここで亀山氏は厳しい現実を突きつける。
「2000万でテイクアウト専門だと、東京でいい場所には出せない。スタバを目指すならむしろ畳敷きで日本ブランドを押し出す店舗のほうがいい。テイクアウトだと、500円のお茶を不便な場所までわざわざ取りに行く理由がない。冷めるし、コンビニで済ませて終わる」
そして率直に告げる。「俺の思いとしては90%失敗する。ぶっちゃけ2000万溶けて終わり」
小島氏が「逆にどうすれば成功確率を上げられますか?」と問うと、亀山氏は「今のプランがそもそもダメ」と切り返した。
では、どうすればいいのか。亀山氏の提案はシンプルだ。
まず、すでに進行中の表参道交差点近くのクレープ屋スペースを2週間借りて、ポップアップで販売してみる。家具屋や既存店舗の一角を間借りする方法もあり得る。「リスクを取らないと実験はできない。自分の思い通りに売れるかどうかをまず試してみればいい」
さらに、固執すべきは「ほうじ茶」ではなく「経営者として成功すること」だと諭す。「諦めない、と言ってお茶と心中するのは目的の取り違え。ダメだと分かったらすぐ畳んで次に行ける形にしておくのが、経営者として次に行く道だ」
抹茶を1種類だけメニューに加えて、ほうじ茶との売れ行きを比較する——そんな小さな実験から始めるべきだと、対話の中で結論が組み上がっていった。
対話は資金調達の構造論にも及ぶ。VCはそもそもスケールしにくい飲食モデルには付きにくい。創業融資を活用するにしても、個人保証を入れた瞬間に「やり直しが効かなくなる」と亀山氏は警告する。
「やるなら、自分だけが沈むなら構わない。でも子供が後で困る、家族が保証で引きずり込まれる——それは絶対に避けるべき。背負っているなら、迷惑をかけない範囲だけで追いかけてみればいい」
シングルマザーとして子供を育てる立場にある小島氏に対して、亀山氏は「芸能を続けながら経営の修練を積む」という選択肢も提示した。それでも家族が背中を押してくれているという小島氏の言葉に、「ならば、やるしかない」という空気が場に流れた。
最後に亀山氏が語ったのは、長期で経営を続けるための姿勢だった。
「うちは特にバンと跳ねた時期はない。100万を130万に、1000万を1300万にしていく、30%成長のコツコツをずっと続けてきただけ」
2〜3年で大きく当てるパターンもあるが、それは100個失敗したうちの1個がたまたま当たるような偶然に過ぎない。9割は外れる。だからこそ、無茶なギャンブルを打たずにコツコツやるしかない。日本経済が0%成長でも、自分が30%成長すればいい——「世間の責任にしてんじゃねえよ」と笑った。
小島氏は最後に色紙へこう書いた。
「事業のタネはすぐそこにある」
世界の抹茶トレンドを語る前に、半径1キロのマーケットを見る。鳥の目より虫の目で。芸能界での成功体験は、ビジネス界の成功確率を保証しない——その厳しさと希望を同時に受け取った1時間半の対談だった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです。


2026/3/5

2025/12/27

2026/3/6

2025/10/11

2025/7/10

2025/7/2