1度の倒産・会社清算を経て、たった1店舗から再スタートしたサラダ専門店経営者・水野氏が、ココイチ創業者・宗次徳二氏に「次は店舗拡大か、それとも法人営業か」を相談。月商1,000万円を超え再び成長軌道に乗った今、経営者が踏み出すべき次の一手とは。
愛知県出身、現在52歳の水野氏は、名古屋の大学を卒業後、約20年にわたってテレビの制作会社で働いていた。
転機は2009〜2010年頃。仕事でニューヨークに派遣される機会を得た水野氏は、現地で「サラダの専門店」と出会う。
「こんな素敵なお店があるんだと衝撃を受けました。当時、日本にはまだサラダの専門店がなかったので、自分でもやってみたいなと思ったんです」
帰国後に資金を貯め、2016年に都内でサラダ専門店をオープン。今からちょうど10年前のことだ。
開業後は毎年1店舗ずつ出店を重ね、4店舗体制まで成長。さらに都内の量販店154店舗にサラダを供給する案件をきっかけに、設備投資を行いセントラルキッチンを構築した。
ところが、稼働から半年も経たないうちに新型コロナウイルスのパンデミックが直撃。
「どんなに頑張っても出ていく一方で、資金繰りが悪化しました。あの手この手で資金調達もしましたが、ついに行き詰まり、1年前に会社を清算するという決断をしました」
前社では、エクイティファイナンスで1億円以上、借入で約1億2,000万円を調達していた。それらの重荷を抱えながらの撤退だった。
清算の際、宗次氏にも相談しアドバイスを受けながら、幸いにも1店舗だけ残すことができた。場所は新宿区山吹町。駅から離れた住宅街にある、わずか16坪・家賃30万円弱の店舗だ。
再スタートは、水野氏が1人で1日30〜40個のサラダを作るところから始まった。
そこから1年。現在は1日500〜600個、多い日には700個を製造するまでに成長し、月商は1,000万円を超えるまでに至っている。売上構成は店舗売上が約3割、法人向け売上が約7割という比率に変化した。
商品単価は前社時代の反省から見直した。
「サラダ専門店は1,000円〜1,500円の価格帯が多いのですが、なかなか受け入れてもらえなかった。今回は思い切って1,000円を切る価格、790円からスタートしたところ、一般のお客さまが買ってくださるようになりました」
再生の手応えを掴んだ今、水野氏には次の選択が迫られている。
選択肢は大きく2つ。1つは、もう一度店舗展開にチャレンジする道。もう1つは、店舗を増やさずに法人営業を強化し、ゴーストキッチン的な体制で設備投資を抑える道だ。
「8年間やって自分の至らない点もたくさんあった。会社を清算した経験もあるので、安全にやるなら法人売上を伸ばしていく方がいい。でも、残された時間にも限りがあると考えると、もう一度店舗展開にチャレンジするのも意義があると思っています」
水野氏の相談に対し、ココイチ創業者・宗次徳二氏は冷静かつ率直なアドバイスを返した。
「やるんだったら、また創業期に戻って自分がまず現場で頑張ること。それをやらないと一気に売上を伸ばすのは難しい。ただ、複数店舗を持つということは、人の問題が一番大変です」
宗次氏は、自身の経験を踏まえ、創業初期の店舗展開も「3〜5店舗を一気にやったわけじゃない。1店舗をやりながら失敗し、改善・改良してだんだん出来上がっていくもの。その間に人も徐々に育っていく」と語った。
そのうえで、水野氏に欠けている最大のピースとして「片腕」の不在を指摘する。
「オーナーと同じ熱意を持って店舗に従事してくれる店長クラスの人材をどう確保するか。これは今、人手不足がより深刻ですから。むやみに店を増やすのは大変です。今の状態で、着実にまず増やすということでしょうね」
水野氏のリスタートを支えているのは、無料の求人サイトで採用したネパール人スタッフだ。最初に応募してくれた1名が3か月後に店長に就任すると、そこからネパール人ネットワークが広がり、現在は8〜10人のネパール人スタッフが働く体制になっている。正規雇用も3名いる。
「彼らには将来、独立してほしい。宗次さんが作られた『ブルームシステム』のような社員独立支援の仕組みを、自社でも作っていきたいんです」
ブルームシステムは、ココイチが採用していた社員独立支援制度。社員が一定の業務水準をクリアすればフランチャイズオーナーとして独立できる仕組みで、ココイチの店舗網拡大を支えた制度として知られる。
ただし、外国人スタッフの独立にはビザ要件として資本金3,000万円が必要(以前は500万円)という壁がある。水野氏はホールディングス化やFC契約を組み合わせた独立支援スキームを構想している。
再スタート後の意外な好評メニューが、ネパール人店長の故郷「チトワン地方」に伝わるカレーだ。サラダのサイドメニューとして導入したところ評判となり、現在は「チトワンの情熱カレー」として単品販売・セット販売を行っている。
カレー導入のきっかけは、水野氏自身がココイチでサラダの充実ぶりを体験したこと。逆発想で、サラダ専門店にカレーを取り入れた格好だ。
対談のなかで宗次氏が繰り返し強調したのは、現場主義の徹底だった。
「お客様の生の情報を得るには、もう現場しかない。現場から明日の成功の種が拾える、探し出せる。これを言うんですが、なかなかそこまでやる人はいませんよ」
水野氏も、午前中は自ら配送に回り、お届け先の声を聞いてサラダ以外の商品開発のヒントを集めている。法人売上7割という構成比は、その「現場の声」から生まれてきた。
対談の終盤、水野氏は次のような構想を語った。
月商500万円を目標とする店舗を出すなら、店舗周辺で250万円、法人売上で250万円を作る。法人売上が下支えするからこそ、新規店舗のリスクを抑えられる、という考え方だ。
「法人開拓はしっかりやっていきたい。自分が営業に行くのか、優秀な営業マンを投資として採用するのか。そこも悩みです」
宗次氏は最後に「中年のまっただ中。65くらいまでは中年ですから、これからまだチャンスはいっぱいある」と背中を押した。
1度の倒産・会社清算を経験した経営者の再挑戦は、現場の積み重ねと、堅実な拡大路線の上に始まろうとしている。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


2025/6/18

2026/3/5

2025/10/11

2025/7/10

2025/7/2

2025/6/24