カレーハウスCoCo壱番屋創業者・宗次徳二氏の1日に密着。朝3時台起床、街の清掃を18年継続、花壇整備に約3000万円を投じる「引退後の経営者」の素顔と、商売にも通じる掃除と感謝の哲学に迫る。
カレーハウスCoCo壱番屋(ココイチ)の創業者として知られる宗次徳二氏。引退後の現在も、毎朝3時台に起床し、自身が設立したコンサートホール周辺の清掃と花壇の手入れを続けている。
取材当日、宗次氏が起床したのは午前3時33分。「早く目が覚めるとラッキー」と笑い、3時半すぎには事務所に到着。タイムカードに打刻してから、清掃と花壇作業に取りかかる。
清掃と花の管理を始めたのは18年前。最初は自社オフィス周辺から始まり、雑草の生える中央分離帯を抜き、寂しいので花を植え——と少しずつ範囲を広げていったという。現在、花の購入費用だけで年間200万円超、累計で約3000万円を私費で投じている。
「自分のためじゃなく、感謝の気持ちで地域のため、人のためにっていうのがやっぱりいい。自分のためだと『今日はやめとこう』で終わっちゃうけど、人のためや社会のためだと頑張れる」
宗次氏が掲げる「掃除の心得」には、こうある。
- 本気ですること、時間を惜しむこと
- キビキビ・ハキハキ
- 挨拶は必ず笑顔でする
- 単独で行動する
- 必要な会話以外は無言でする
- 最も重要なのは継続する勇気
「群れない。3〜4人でやるとめちゃくちゃになる」と宗次氏。実際、清掃に参加する人の多くは経営者や金融機関勤務者で、土日も地下鉄で通ってくる三菱UFJ銀行勤務の参加者もいる。
宗次氏のもとには、業績不振の店舗経営者から相談が寄せられることもある。そんなとき宗次氏が伝えるのは「割引やお得なセットを作る前に、まず自らが掃除をやりなさい」という助言だ。実際にそれだけで売上が持ち直すケースもあるという。
「心を込めるというのは、目の前のところに集中すること。何事もそう」
清掃中に飲むのは、スーパーで売っている1本108円のコーヒー。それを冷凍庫で凍らせて使う。「自分にはせこいんです」と宗次氏は笑う。元喫茶店経営者でありながら「いいコーヒーを飲みたいとは思わない」。
一方で、地域の花壇には惜しげもなく寄付する。
「10万円これ使ってくださいって言うと、自分が使うより30万円の価値になる。そう思うことが多い」
自分自身への支出は徹底して質素に、人や社会への支出は惜しまない——この使い分けが宗次氏のスタンスだ。
事務所には、宗次氏が支援する奨学生のファイルが壁一面に並ぶ。現在も多数の奨学生を支援し、月70名以上から手書きの近況報告が届く。大会で優勝した際にはお祝いを贈ることもある。
メールが打てない超アナログ派の宗次氏は、SNS(X)の投稿は中村氏に代行を依頼。やり取りはほぼすべて手紙で行う。
また、自身が運営するクラシック専門コンサートホールでは、開演前後にエントランスで来場者を出迎え・見送りする。1時間近く立ち続けることもある。
「経営者が言うのと、スタッフがやるのとでは違う部分がある」
以前は支配人に任せていたが、最近また自ら出迎えに立つようになった。「楽しくなった」と笑う。チケットは1公演6,000円程度で、平日昼間に200名規模が来場することもある。
23歳で不動産業を始め、25歳で喫茶店、26歳でカレーハウスCoCo壱番屋を開業した宗次氏。創業以来、業績は右肩上がりで一度も下がったことがないという。
「私は朝礼会で『なぜ業績が悪いんだ』と詰めるような社長ではなかった。イエスマンばかりで、こちら側がもう本人が思う以上のことをしてあげられる。設備投資も惜しげもなくできる」
議論よりも即断即決。失敗は山ほどあったが、大枠で外さなかったことが全国展開、上場、子会社展開につながった。株主総会も30回以上開催してきたが、紛糾したことは一度もないという。
宗次氏は事務所のあるビルの上階に居住しており、通勤時間はエレベーターのみ。
「通勤に1時間かかるなんて、現実に時間を捨てているのと同じ。馬齢を重ねる毒。私はエレベーターで上がって、部屋に入って冷蔵庫を開けて発泡酒を飲む」
友人ゼロ、誘惑の電話一切なし——それを「こんないいことはない」と宗次氏は語る。やるべきことに集中するための環境設計が徹底されている。
1987年から始めたお客様アンケートも宗次氏らしい思想で運用されてきた。
「7〜8割で『普通』が2割。お叱りはなかなかない。お叱りをいただくと『待ってました、神様です』。ヒントはそこにある」
お客様アンケートを「お褒めの言葉を集めるためのもの」にしてしまっては意味がない——その姿勢が、CoCo壱番屋の成長を支えてきた基礎にある。
取材の最後、宗次氏は若手経営者にこう語った。
「1日を、何か目的・目標を持っていかないともったいない。過ぎた時間・日数は取り戻しが効かない。将来のことを考えながら、楽しい思いを張り巡らせながら、今日その連続。今年の目標を追いかけて、達成したらまた次の目標を立てる。振り返ったら右肩上がりの人生になっていく」
朝3時台に起き、街を掃除し、花を植え、奨学生を支え、ホールに立ち続ける——「100%楽しみながらやっている、嫌なことは何もやっていない」と語る宗次氏の1日には、引退後も変わらぬ経営者としての美学が貫かれていた。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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