カレーハウスCoCo壱番屋創業者の宗次徳二氏が、奥様との出会いから結婚、そして夫婦二人三脚で築き上げた経営の歩みを語る。共通の目標を持つことの大切さ、800店舗まで拡大しながらも撤退はわずか2件という事業哲学に迫る。
カレーハウスCoCo壱番屋(ココイチ)の創業者・宗次徳二氏。事業の成功の裏には、奥様との二人三脚の歩みがあった。出会いは、宗次氏が建築の勉強をしようと大手プレハブメーカーの営業職に転じた頃のこと。当時、宗次氏は21歳、奥様は18歳だった。
「気持ちよく仕事をしている姿を見て、『この子いいな』と思ったんです」と宗次氏は振り返る。そこから始まったのは、毎日の猛アタックだった。
営業終わりにビルの1階で奥様を車に乗せて自宅まで送り届ける。土曜の半ドンの後も、休みの日は朝7時台にパジャマ姿の彼女のもとへ押しかける。サラリーマンが夕食を終える7時半〜8時頃には再び夜の営業に戻る生活を続けた。「100%、毎日顔を見ていました」という徹底ぶりだった。
結婚の条件はシンプルだった。「貯金ゼロの状態から、100万円貯めたら結婚しよう」。営業成績の歩合給で同級生の2〜3倍の給料を得ていた宗次氏は、半年で100万円を貯め、給料袋ごと奥様に渡してプロポーズを叶えた。当時の大卒初任給が4〜5万円という時代の100万円である。
宗次氏が語る、夫婦で経営をうまく続けるコツは「共通の目標を持つこと」。
「素人経営で始めましたが、最初から目標がありました。1年とかの短期で達成して、商売の面白さを夫婦で共有できたんです」
結婚後、宗次夫妻が始めたのは喫茶店だった。当初は不動産業を営み、25坪の土地に17.5坪の建売住宅を4棟建てて売る商売を続ける予定だったが、社交的な奥様の「喫茶店でもやろうよ」の一言で方向転換。その日のうちに物件を紹介してもらい、出店が決まった。
「1件の店で満足して、町の喫茶店として繁盛すればいい――そんな思いはなかった」と宗次氏。ちょうど1年後に2号店、3年半後にはココイチへと繋がっていく。
「やっていると、もっと売上を伸ばしたい、出前をやろうか、2件3件出そうかと、自然に拡大思考になっていく。1人でも多くのお客様を笑顔でお迎えしたいという思いが、夫婦で共通していました」
宗次氏が29歳でココイチを立ち上げ、翌30歳で長男が誕生した。
「このまま経営がうまくいって店が増えても、子供を産むことができるのに子供がいないと将来後悔する。それは嫌だね、ということで『1人だけ作っておこうか』と話したら、すぐにできて翌年生まれたんです」
仕事と子育ての両立については「最低限はやっていた」と語る。事業参拝には連れて行けなかったが、公園にはココイチのユニフォーム姿のまま連れて行った。
子育て方針について尋ねると、宗次氏はあっさり答えた。「ないです。まるっきりない」。奥様も「字と名前が書ければいいよ。勉強なんかするな」とスポーツばかりさせていたという。
「私は背中で見せるタイプ。言うのが面倒くさいし、的を得た言い方もできない。人を教育するのが苦手なんです。ただ、接客だけは尽くしたいという思いはありました」
親同士の関係が良好だったことが、結果的に子供にも良い影響を与えたと宗次氏は振り返る。「親が仲がいいというのは、結構大事ですよ」
宗次氏が経営者として店舗をスクラップ(撤退)したのは、創業から会長職に至るまでで実質1件だけ。会長時代に奥様の判断で1件追加され、合計2件にとどまる。800店舗まで広げた中で、これは「ゼロに等しい数字」だと言える。
撤退した店舗の店長は、後にハウス食品傘下のココイチ社長となる浜島氏だった。19歳でアルバイトとして入店し、半年間頑張ってくれたが、立地の問題で伸ばせないと判断したという。
その店を閉じる際、宗次氏は自ら現場へ赴いた。
「物理的に最後のお客様もお見送りしたかった。日曜の夜10時前後にホテルで用意した大きな金槌と釘抜き、ユニクロで3900円ぐらいで買ったカッターを持って店に入りました」
翌日、職人が入る7時前にサインポールと看板を自分で外した。
「ちゃんとやれば、絶対に撤退するような店じゃない。立地の誤りで撤退するのは、罪なことだと思っていますから」
800号店達成の直前にスクラップとなった福島森合店も、奥様が社長として判断した撤退だった。
振り返れば、宗次氏の人生と経営は「行き当たりばったり」の連続だった。喫茶店出店も、店舗拡大も、子供を持つことも、その時々の判断と勢いで決めてきた。
しかし、その根底には常に夫婦が共有する明確な目標があった。「お客様を笑顔でお迎えしたい」というシンプルで強い思い。それを夫婦で同じ方向を向いて追求し続けたことが、ココイチを世界的なカレーチェーンへと押し上げた原動力だった。
良いパートナーとはどう見つけるのか――その問いに対する宗次氏の答えは「偶然の出会い」だが、その出会いを掴み取るための行動と、出会った後にゼロから二人で始めるという覚悟こそが、最高のパートナーシップを作る秘訣なのかもしれない。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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