麻婆豆腐ラーメン店「するかすらんか」を運営する25歳経営者が、ココイチ創業者・宗次徳二氏に事業相談。ドーナツ・つけ麺の連続失敗、立地戦略、仲間との向き合い方、結婚のタイミングまで、経営の本質を問う対談。
株式会社やるかやらんかを経営する25歳の経営者は、近畿大学2年生のときに友人とともに麻婆豆腐ラーメン店を立ち上げた。コロナ禍で大学に通えなくなったことをきっかけに、知人の大家から「家賃1年無料でいいから何かやってみたら」と声をかけられ、麻婆豆腐づくりが得意な友人と奈良で店をスタートさせたのが原点だ。
奈良店は1年半ほどで軌道に乗り、メディア出演も重ねて成長。続いて出店した大阪・心斎橋店も商業施設立地でインバウンド需要を取り込み、ブランドの主力店に育った。3店舗目として家賃100万円規模の物件に3000万円を投じて勝負に出た一方、昨年はドーナツ業態と京橋でのつけ麺業態に挑戦したものの、いずれも撤退に追い込まれている。
「リサーチに、僕がやりたいブランドや商品がちょっと合っていなかった」と振り返る彼に、ココイチ創業者・宗次徳二氏はどう向き合うのか。本記事は両者の対談を再構成したものだ。
ドーナツは北新地、つけ麺は京橋という「住人や夜の客層が中心」のエリアで失敗した経験から、25歳経営者は「商品と立地の相性をどう見極めればよいか」と問う。
これに対して宗次氏は、市場調査をしたことが一度もないと明かす。
「何人どういう人が住んでいて、何台車が通って、何人が通行するか。目的を持ったお客様には何の関係もない」
小規模店舗(20〜30席)であれば、地域全体に受け入れられる必要はなく、わずかな顧客が繰り返し訪れてくれれば繁盛していく――というのが宗次氏の持論だ。麻婆豆腐ラーメンというメニューについても「麺の上に乗せるだけだから、スープにそこまでこだわらなくてもいい。当たらないわけがない」と評価する。
出店戦略について宗次氏は、自身の経験から具体的な数字を挙げて助言した。
「2店舗、3店舗くらいまでが一番大変。もう休めない。無休で動かないといけない。3店舗を超えると片腕が育ってくるから、そこから先は意思さえあれば5店、10店、20店、30店と行ける」
10店舗規模になれば毎日全店を巡回し、顧客一人ひとりに「ありがとうございます」と声をかけ、社員の働きぶりを確認できるようになる。「楽しい」と語る宗次氏は、ココイチで自分が指示を出して閉店した1店舗を除き、創業以来「失敗店舗ゼロ」を貫いてきた。
その秘訣は改善ノウハウではなく、感謝の気持ちでお客様を迎え、明るい店で熱々の商品を提供する、その繰り返しだという。
宗次氏が最も強く釘を刺したのが、業態を広げることへの戒めだった。
やるかやらんかが運営する「するかすらんか」は、辛さを選べる麻婆豆腐ラーメン店。スープを6時間前から仕込む必要がなく、注文後にフライパンで作るオペレーションも学生経営に向いていた。だが3店舗目以降、ドーナツやつけ麺といった他業態に手を伸ばし、結果として失敗した。
「20店、30店のチェーン店にしてからでもいいようなことを、もったいないですよね」
宗次氏自身、ココイチ時代にカフェテリア形式の食堂や肉の量り売りといった新業態を検討したことがあるという。だが結局やらなかった。「ココイチの勢いがあったし、全現場の全社員が『やがて自分の番が来る』という思いで働いてくれていた。本当にそれが良かった」。
ラーメンは毎日食べるものではない。週1回、10日に1回、月に1回――それでも30席の店なら超繁盛店になるには2〜3年かかる。だからこそ「特化してやっていい」というのが宗次氏の答えだ。
宗次氏は、新心斎橋店の営業時間(11時〜15時/18時〜21時、ラストオーダー20時半)にも切り込んだ。家賃100万円のエリアで売上800万円ならFL比率は厳しい。客単価を上げ、満席率を高める余地はまだ大きい。
「他の余計なことをしていなかったら、12時まででも開けられる」
さらに、雨だから早く閉めよう、暇だから早じまいしよう――という発想で経営すると夜は伸びない。「なく笑顔で、9時であろうが10時、11時だろうが、こちらで決める必要はない。ようこそという気持ちがあれば」と説いた。
25歳経営者は、サークル仲間や旧友とともに会社を運営している。資本金は100%自身が保有し、料理長を務める共同創業者は役員として一緒にやってきた。だが事業拡大に伴う負荷が増す中で、「友達でありビジネスパートナーである」という関係性のすり合わせが難しいと打ち明ける。
宗次氏の答えは明快だった。
「会社の成長でしょ。この会社は絶対明日が明るい、家族も喜んでくれる――その見方があれば、全てを解決する」
ココイチでも創業期からの仲間役員5人は誰一人辞めず、店頭公開時には1人あたり20万株前後を持ってもらった。一生懸命現場を大事にして経営する姿が「あまりにかっこいい」状態をつくれれば、仲間は離れない。逆に経営者が遊びや誘惑に流されれば、その求心力は失われる。
「経営がうまくいくことに勝るものはない。皆が幸せになり、お客様も喜んでくれる」
対談の終盤、25歳経営者は結婚のタイミングについても問うた。宗次氏は「ふさわしい人が現れた、その時でいい」と即答する。年齢で決める必要はない、と。
宗次氏自身、25歳で喫茶店、29歳でカレーハウスCoCo壱番屋を創業した。当時から友人付き合いを一切持たず、二次会の予定が入ってもすべて断り、現場でアルバイトや社員と話し、お客様に「いらっしゃいませ」と声をかけることを優先してきた。
夫人とは「五分五分」のつもりで経営してきたが、300店舗を達成した際に「あんた2割でしょう」と言われたという。それ以来、夫人の貢献を8割、9割と認めるようになった。子どもは30歳のとき、夫人が「1人くらい産んでおかないと後悔する」と決断。哺乳瓶を斜めに口に突っ込みながら、店の現場で育てたエピソードも紹介された。
「飲食の場合、女性の力は絶対に大きい」。一緒に伸ばしたいと思える相手であるかどうか――それが宗次氏の見極め基準である。
対談を通じて宗次氏が一貫して伝えたのは、「経営に勝る楽しさはない」というメッセージだった。
77歳になった今も、振り返れば「我慢ではなく、経営が面白いから経営を趣味にしてここまで来た」と語る。麻婆豆腐ラーメンというユニークな業態でパイオニアになれる可能性を秘めた25歳経営者には、まず「するかすらんか」を超繁盛店に育て、店舗網を広げる――そこに集中することが期待されている。
「多角化を考えるのは、20店、30店になってからでも遅くない」。それが、ココイチを国内外1500店舗以上のチェーンに育てた創業者の結論である。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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