カレーハウスCoCo壱番屋創業者・宗次徳二氏と、YouTuber経営者レツゴーなぎら氏の対談。52歳での引退、社会貢献としての寄付、誘惑を断つ生き方など、独自の経営哲学とお金の価値観に迫る。
カレーハウスCoCo壱番屋の創業者・宗次徳二氏のもとを訪ねたのは、YouTubeチャンネル「レッツゴーなぎら」を運営する経営者・なぎら氏。映像制作会社を立ち上げ4期目、シェアハウスなどの不動産事業も手がける31歳だ。
なぎら氏はアフリカ取材などを経て、ある気づきを得たという。
「この3、4年、経営者をなんとなく流れでやってきたんですけど、正直そこに興味はないなと気づいてしまいました。映像を作ったり表現することがすごく好きなので、今のメンバーにマネジメントやお金の管理をどんどん渡している最中なんです」
31歳にしてM&Aやバイアウトを視野に入れ始めたなぎら氏が、52歳で経営の第一線から退いた宗次氏に「経営者の引き際」と「お金の使い方」を問う対談となった。
宗次氏は53歳でCoCo壱番屋の社長を退任した。後継者への打診に対して、迷いはなかったという。
「躊躇なく、10分とちょっと考えさせてくれもなくて、『じゃあ、明日発表しよう』と。次に何しようかというのもゼロ。NPO法人を立ち上げたり、音楽を作ったり、そういう流れですから人それぞれですよね」
会社を譲った1日2日後に、ある社長から「1から育てた会社を、どうしてそんなことができたんですか」と聞かれた宗次氏は、自分でもはっきりした答えがなかったという。
「『言われてみればそうですね』と。それ以来はもう即答ですね。『いや、もうやり尽くしました』と。後悔も一切なくて」
経営者人生を振り返って、宗次氏は自身の生き方を「IBS(行き当たりばったり)人生」と名付けている。喫茶店、CoCo壱番屋、現在の音楽ホール——すべてが偶然と成り行きの結果だという。
「自分の身に何が起こるか、社会がどうなるか、災害がいつやってくるか分からない。だから中期計画なんか必要ないですって。建前としては作りますけどね、金融機関にも。でもCoCo壱は上振れ上振れで来て、その通りには行かなかった」
引退時、宗次氏は数百億の資産の多くを社会貢献に振り向けた。
「自分の分はそんなにないです。嫁さんの分と会社の持株分。それでも社会貢献に使おうと。残り少ないですから、私の分は。嫁さんの分まで『ちょっと貸してくれよ』とは言えないですね」
お金が減っていく怖さもないと宗次氏は言い切る。「それを目的で大放出してきましたから。皆さん、必要とする人に使っていただいた方がよっぽど価値が出る」
社会貢献の原点は、創業2年目にさかのぼる。4号店を出店した直後、年末の給料70万円が払えず、引っ越したばかりの信用金庫に妻が「100万円貸してください」と頭を下げた。
「100万円借りに行って、70万円は社員さんの給料に入れて、残った30万のうち10万円を社協さん(社会福祉協議会)に匿名で寄付した。それが始まりですね。4号店でまだお金がなかった時に、借金を余分に30万した中で10万円を寄付した。それが本当の寄付です」
チャリティーで1000円を入れるのは「寄付ではなく健康だ」と宗次氏は言う。「健康でこんな楽しい商売をさせていただいているという感謝。それ以外ないですよね」
宗次氏のお金の使い方は徹底している。年末ジャンボ宝くじを買う際も、当選後の配布先をすでに決めているという。
「公共団体だとか施設だとか、それに使いたいから当ててくださいって。1発当てようっていう」
人生で一番高額な買い物を尋ねると、喫茶店時代に買った中古のクラウン(100万円・4年落ち)を挙げた。それすら「カレー屋の分際で」と恥ずかしくて、店を回る時はライトバンしか使えなかったという。
高級レストランや高級店にも縁がない。「1度も多分行ったことないです。偶然入ったこともない」
スナック・クラブ・キャバレーに行ったのも人生で一度だけ。それも中学の修学旅行で行った鎌倉のキャバレーだったという(本人談)。
「仕事が面白い。そんな浪費するような体力、お金、時間、私には浪費部分の方が大きいと思って、プラマイのマイナスの方が多いと思ってます」
なぎら氏が経営の原動力を尋ねると、宗次氏は明確に答えた。
「やっぱり売上です。売上と利益。着実に伸びていくから。増収増益を続けていると、結果的にイエスマンばっかりに囲まれて仕事ができます。余計なこと言われると腹が立つけど、イエスマンが大山の大将」
不動産業から始まり、喫茶店、CoCo壱番屋、現在の音楽ホールまで、すべて自分の意思で投資判断をしてきた。
「赤字経営では、その店を利用しないお客様、地域の人は何のメリットもないですから。インフラは同じように使って、税金ぐらい払える商売してくださいよっていうことですね」
日本企業の約65%が赤字とされる現状について、宗次氏は強い疑問を呈する。「信じられませんよね。利益が出ないと人も採用できないし、定着してもらうような福利厚生も出してあげられない」
宗次氏は「友人ゼロ」を公言している。交際費もゼロ。
「私みたいに友人ゼロという状況に置くと、誘惑がない。誘惑が多いからね、社会は」
唯一の「後悔」はゴルフだという。
「100以上は打つんです。タイガー(・ウッズ)と打つ、と。下手なゴルフは誰も喜んでくれない。創業経営者がやるスポーツじゃない、時間・体力・お金を浪費してね、と私は今でも思ってます」
朝3時55分にタイムカードを押し、365日まちの掃除をする生活。「前向きじゃない人がやることで前向きになれる可能性がある」と早起き掃除を勧める。
宗次氏の徹底した質素さには、幼少期の壮絶な体験が背景にある。
「15歳まで名古屋市内で6畳間のアパートで、ロウソクで生活してました。電気代を払えない。唯一の家具は、ただでもらえるりんご箱1つ。それを除けてせんべい布団を引いて寝てました。家賃2000円も払わないから、半年か1年で点々と転居させられた」
なぎら氏も都内最安値クラスの家賃2万円のアパート(世田谷・6畳)に住んでいるというが、宗次氏は「1LDKぐらいに住んでくださいよ」と苦笑した。
対談の終盤、なぎら氏は自身のエネルギーがいつまで続くのかと問うた。
「31歳でこんなに健康体で、エネルギーに溢れていて、やりたいことが常に出てくる。今のうちにやった方がいいですか」
宗次氏の答えはシンプルだった。
「消えるものは当然見つかると思いますから、その時はチェンジしてね。今もエネルギー旺盛ですよね。関わる人を大事にすることです」
「裏の部分は誰にも分からない、本人にしか」と語る宗次氏は、軽々しく他人を尊敬すると口にしない。立派な経歴の経営者は多くいるが、実態を知らずに尊敬とは言えないという信念がある。
接客へのこだわりも一貫している。音楽ホールの運営でも、9割以上のコンサートで自ら出迎えと見送りを行う。
「接客だけはもう一番にしたい。一番にならないから、ずっとこだわりついている」
「お金の使い方には性格と人間性が出る」——なぎら氏が対談を通じて得た気づきだ。困っている人、必要としている人がいるからこそ寄付するという宗次氏の哲学は、CoCo壱番屋を一代で築き上げた経営者の本質を物語っていた。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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