CoCo壱番屋創業者・宗次德二氏が、パワポ芸人として知られる豊間根青地氏の事業相談に応える対談。成り行き経営、利益至上主義、笑顔の接客哲学、そして得意・不得意を超えた経営姿勢の本質を語る。
CoCo壱番屋創業者の宗次德二氏のもとに、パワポ芸人として知られる船井総研出身の豊間根青地氏(株式会社スワンキー代表)が事業相談に訪れた。社員16名規模となり、自己資本と融資のみで4年間経営してきた豊間根氏が、これから自分の人格と法人を切り離していくフェーズについて、宗次氏にM&Aを通じてハウス食品グループに参画した経緯と心構えを尋ねるところから対談は始まった。
宗次氏は自身の経営をこう振り返る。
「成り行き経営に近い形で、1からスタート。返済に追われながらも希望だけは持っていて、低い目標ではあったが、1年後にその目標を達成して次なる目標、次なる目標、そういう目標の塗り替えで今日まで来た。振り返ったら右肩上がりに成長ができたな、ということです」
先のことを考える能力は自分にはなかったと宗次氏は語る。あるのは「何としてでも思い描いた目標は必達しよう」という繰り返しだけだった。
50歳で飲食業25年、ちょうど店舗数500を迎えた節目に、宗次氏は会社を公開して開かれた会社にすることを決めた。息子に対しては経営能力のあるなしに関係なく一切タッチさせず、有能な人が経営トップを担い、会社が少しでも長く存続する形を作る。
ハウス食品グループへの参加は10年以上前。店舗数がまだ少ない時から、有能な後継者がいなければハウス食品にやってもらうと夫婦で決めていたという。ハウス食品から51%持ちたいという話が来た時も、宗次氏夫婦はすぐに応じた。
「家庭的で信頼できる会社だった。今もずっと全面的に信頼している」
宗次氏にとって会社とは「自分の子供」「作品」のような存在ではなく、私物化に近い感覚を持たないことが信条だった。一生懸命やればお客様に喜んでいただいて売上が伸び、値下げを考える必要もない──。オーナー経営でありながら私物化しない両立が、豊間根氏にとっては大きな学びとなった。
豊間根氏が「経営における1番のモチベーションは何か」と問うと、宗次氏は即答した。
「日々はお客様に喜んでいただけること。ただし、すべての根源は利益ですよね」
民営会社である以上、営利目的でやっている。それを露骨に前面に出せばダメだが、適正に経営して周りからも信頼を得る、いわゆる三方よしの経営が必要だ。
人材についても宗次氏はリアルに語る。社員にはAランク、Bランク、Cランクがあり、Aランクの人材は10人に2人いてくれた。それで会社が伸びた。あとは給料分だけやってくれればいい──そうしたシビアな視点を率直に開示する。
だからこそ「同業ライバルに比べて明らかに10〜20%高い給与を払う」ことを徹底した。仲間や家族の一員として豊かな生活を送ってほしい。そのためにも利益を出すことが絶対条件なのだ。
「コロナがまた来ようが、何か不測の事態が起きようが、内部留保を厚くしておけば慌てなくて済む。それには利益ですよね」
3年以内に34%の若者が転職する時代。CoCo壱番屋では独立支援制度を設け、現場社員のほとんどがそれを条件に採用されている。3年、4年、5年頑張れば自分でも独立して一国一城の主になれる──この明確なキャリアパスが若手の定着を生み、実際に成功事例が次々と出てきているという。
豊間根氏は、起業してから論理的思考は得意だと思っていたが、人との交流の中で意外と苦手な領域を発見することが増えたと打ち明ける。得意領域を伸ばすか、不得意領域も鍛えるか──。
宗次氏の答えはシンプルだった。
「自分は得意・不得意を考えたことがない。人を教えたりリーダーシップもないし、カリスマ性もないから、背中で教える。最初からそのやり方でやりました」
リーダーシップの代わりは「利益」だという。人ではなく利益で引っ張る。うまいことを言って言い含めても、半年、1年、3年と経って成果が出なければ社員の不満になる。利益こそが最も現実的でリアルなマネジメント手段なのだ。
29歳で喫茶店を始めた時から、宗次氏は「お客様第一」「笑顔で溢れた接客第一」を掲げてきた。53歳、800店舗まで自分は接客のここ一番という位置づけでやってきたつもりだという。
腹が立つ店もある。「なんでもう少し笑顔で、お客様の期待に応えるようにスピーディーに、綺麗な盛り付けで提供できないのか」。そんな店には6本300円のあずきバーを差し入れる──そんなユーモラスなエピソードも飛び出した。
味は10人いれば10通りで基準がない。だからこそ「まあまあ美味しいものに、接客でさらに美味しく」が宗次氏のこだわりである。
喫茶店2店舗の時代、出前でカレーが売れたことから「カレーで行こう」と決断。29歳の時に東京の繁盛店11店を見て回り、「東京の有名店、高級店のカレーよりも、名古屋・郊外の自分たちのカレーが一番美味しい」と確信した。
コンサルタントもチェーン理論の知識もないなかで、フランチャイズの本部と加盟店双方が継続的に利益を上げられる仕組みを作れば誰がやってもうまくいく、と考えた。
「店はお客様のためにあり、本部は加盟店様のためにある」
これを早い時期に表題として掲げた。争いやトラブルを起こしてまで拡大し、本部に利益を偏らせる経営はしたくなかった。
宗次氏が大切にする言葉がある。「継栄」──継続して栄えると書く。商標登録までしているこの言葉は、引退後に夫婦10組20人を迎えて始めた創業経営塾の構想時に思いついたものだ。
「経営とは継続して栄えること。あの時よかった、あの時の勢いはすごかった、俺も──と言うのではダメ。よそ見してもいけない」
対談の最後、豊間根氏はこう感想を述べた。
「賢いからこそ、やはり本質が何なんだろうというものを見定めることが必要なんだなと、お話を伺って強く感じました」
成り行き経営、利益至上主義、笑顔の接客、私物化しない法人観、そして「継栄」。宗次德二氏の語る経営哲学は、能力やテクニックではなく、シンプルな原理原則と姿勢の問題に貫かれていた。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
