DMM.com会長の亀山敬司氏が、アクティビスト株主・村上世彰氏との対話エピソードを起点に、外部株主やステークホルダーとの付き合い方、客観性を保つための工夫、エクイティ調達のリスクまでを語る。
M&A CAMPの新たな対談企画では、DMM.com会長の亀山敬司氏に「外部株主・ステークホルダーとの付き合い方」をテーマに話を聞いた。
近年、未上場・上場を問わず、株主の存在が経営に与える影響は無視できない。特に上場企業では、アクティビスト(物言う株主)の登場やSNSの浸透により、株主比率に関係なく外部の声が経営判断に影響を及ぼす場面が増えている。
亀山氏は冒頭、率直にこう切り出した。
「周りのスタートアップや経営者からは『パンダ(村上世彰氏)だけには株を持たせたくない』という声をよく聞くよね。でも、上場している以上、誰でも株を買えるわけだから防ぎようがない」
一方で、スタートアップの場合はむしろ村上氏のような人物の意見が役に立つこともあるという。「相談役や社外取締役として迎えるくらいでもいいかもしれない」と、立場によって受け止め方が変わることを示唆した。
インタビュアーが「なぜ村上氏に会いに行ったのか」と問うと、亀山氏は笑いながら答えた。
「言いたい放題じゃない、彼。はっきり言って退治する経営者なんて誰もいないでしょう。上場会社からしたら、誰も彼と会うメリットがないわけだから」
インタビュアーは、自身の結婚式で起きた象徴的なエピソードを紹介した。石川県出身という縁で村上氏に乾杯の挨拶を依頼したところ、上場企業関係者のテーブルは挨拶の間、明らかに「関わりたくない」という雰囲気で静まり返っていたという。
亀山氏自身も、村上氏に会いに行くことを顧問から止められたと明かす。「『会ってはいけません』『合わない方がいいんじゃないですか』って言われたよ。優秀な顧問だね」と笑う。
それでも会いに行ったのは、「マイナスにならない程度に行ってくる」という気軽さと、自社の株主として迎える可能性がほぼないという立場上の余裕があったからだ。
亀山氏は、上場企業経営者が村上氏を一方的に敵視するのではなく、むしろ取り込む発想もあり得ると語る。
「上場会社の社長たちが、逆に彼を引き受けるくらいの器量があってもいいと思うんだよね。Xなどで世間に晒されるからややこしいけど、取締役会の中で意見を言わせるなら、確かにそれもそうだよねという話になることが多い」
さらに踏み込んで、こう続ける。
「俺が一般の株主だったとしたら、彼が社外取締役に入っている会社はある程度評価が上がる気もする。受ける器量があるというか、ちゃんとやっているんだなと思える。ブランディング的にもアリじゃないかな」
スタートアップであれば、顧問からそのまま社外取締役にスライドする形も現実的だという。
亀山氏は、アクティビストやSNSの声が大きくなりすぎることの副作用にも言及した。
「政治で言えば、民主主義か独裁かみたいな話。独裁政権はスピーディーに動かせる。一方、民主主義はポピュリズム的になりやすく、その時々の声を無視できない。だから保守的になり、決済も遅くなる」
企業も同じ構造だ。声が大きくなりすぎると、結果を出してもそれは認められず、失敗だけが攻められる。すると経営者は無難な選択を取りがちになる。
亀山氏自身も、太陽光やFX事業のように成功した投資もあれば、アフリカ事業で数十億円を溶かした失敗もあると振り返る。
「全部が当たるわけじゃない。外れたところだけ突かれたら何もできなくなる。だから、彼の活動には価値もあるけど、一方で会社の活性化を抑制する面もある」
このプレッシャーは、創業者ではない雇われ社長や、その下の部下にまで連鎖していく。1回の失敗で全否定される「減点主義」が現場を萎縮させる構造を、亀山氏は懸念する。
話題はスタートアップのエクイティ調達にも及んだ。亀山氏の指摘は明快だ。
「株主を引き受けた以上は、株主への説明責任や利益還元から逃げられない。投資してもらって、人の金で成功させようとしているわけだから」
スタートアップが上場までたどり着いても、創業者に残る株式は20〜30%程度。100%所有から始まったはずの会社は、ラウンドを重ねるごとに「みんなの会社」へと希薄化していく。
この希薄化は、経営者の意思決定にも影響を及ぼす。
- 役員報酬の決め方が変わる:100%株主なら法人と個人の税負担バランスで決められるが、保有比率が低ければ「給料を多く取る方が得」という発想になりやすい
- 経費の使い方が変わる:オーナー会社なら自分の財布から出すのと同じだが、保有比率が低ければ会社の経費にしたくなるインセンティブが働く
さらに、資金調達や株価維持のために「実態よりも会社を良く見せる」プレッシャーも生まれる。
「100の価値だと思っても、200の価値があると思って欲しいわけだから、お化粧しなきゃいけない。風呂敷を広げやすい状態になる」
対照的な経営スタイルとして、同じ石川県出身のアパホテルが話題に上った。アパホテルは不動産をすべて自社で保有し、ホテルとして運用するスタイルで、賃貸用物件を一度売却して赤字を補填した時期はあったものの、基本的に売却せずに保有し続ける戦略を貫いてきた。
「バブル崩壊時にしんどい時期もあったけど、復活している。長くやる中で補填できる場所をちゃんと用意していたから乗り切れたんだろうね。バランス的にすごいと思う」
スタートアップ的な急成長モデルとは対極の、長期保有型の経営スタイルだ。
亀山氏は、経営者の最終的な評価軸について次のように語る。
「経営者というのは結局、最終的には結果として会社を潰さないで継続できているかどうかが大事な話になる。結果が出れば先見の明と言われるし、失敗すれば暴走と言われる。なんだかんだ言っても結果が大事になる」
亀山氏のように、株主からの圧力が事実上ない立場では、暴走しやすく客観性を失いやすい環境にもなる。どう客観性を保つのかという問いに、亀山氏はこう答えた。
「とにかく、耳の痛いことを言ってくれる人間をなるべく用意する。常に置いておきたいという努力はしてきたかな」
社内で苦言を呈してくれる人間を、意識的に手元に置く。
「『何かやらしてくれよ』と思っても、『資金的に無理です』と言われたら『分かりました』となるし、『この対談に行きたい』と言っても『ダメです、やめてください』、『このコメントを消しましょう』と言われることもある。葛藤しつつも、そこは『分かりました、謝るのは私たちですからね』と受け入れる」
スタートアップで多用されるストックオプションについても、亀山氏の見方は冷静だ。
DMMのビデオレンタル時代、社員に株を出すと提案しても誰も受け取らなかったという。「『金くれ』と言われたよ。当時持っていれば今頃……と振る舞うけど、当時持たないのも気持ちはよく分かる」
亀山氏が経営陣以外に対して採用してきたのは、利益連動型のペイだ。「『利益を出したら利益の10%を出すよ』というやり方の方が、通常の評価としては機能する」
ただし、インセンティブ設計には落とし穴もある。
- インセンティブを強くしすぎると、目先の利益に走りやすい
- 成長フェーズではむしろ昇給で対応する方がよい
- インセンティブを明確にルール化すると、それを破れなくなる
- 「この人にもう全部委ねる」という覚悟がない限り、株式やインセンティブを安易に約束すべきではない
「ルールにするのは、本当に自分の中で『ここはもう委ねる』と覚悟を決めない限り、なかなかできない」
インタビューの後半、亀山氏は村上世彰氏との関わりについて改めてこう振り返った。
「俺が同じ立場だったらやっぱりウザいよね。毎回メシしてきて。俺なんかツッコミどころ満載だから、社員から『いやいや、ダメじゃないですか』と言われて『すいません』と返しているくらい。痛いところを突かれるなというのは確かにある。言っていることは正しい」
それでも、外的な無駄なプレッシャーを作らないことの大切さを、インタビュアーも実感したという。「Twitterだけで絡まれたら絶対嫌だなと思う。だから無理に株主を増やすことが最適な選択肢ではない」と振り返った。
VCから資金を入れる以上は、リスクを取ってもらっている以上、リターンで応える責任が生じる。多くの会社は10年以内に上場やバイアウトといった出口を求められる。エクイティ調達は、その覚悟込みでの選択であるべきだという亀山氏のメッセージは、若手起業家にとって示唆に富むものだ。
亀山氏のメッセージはシンプルだ。
「人の金を預かった以上は、ちゃんとリターンを返しましょう。VCも仕事で頑張ってやっているわけだから」
アクティビストやステークホルダーとの関係は、単なる敵対構造ではない。彼らの声には経営を律する正当性がある一方で、過剰な圧力は経営の活力を奪う両刃の剣でもある。経営者に求められるのは、耳の痛い声を意図的に近くに置きながらも、自社の長期的な方向性を見失わないバランス感覚だ。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
