全世界的な株価大暴落とトランプ関税の影響下、DMM創業者・亀山敬司氏は何を考えているのか。乱世こそチャンスと捉える経営観、情報収集術、そして「投資より商売」と語る独自の資金観を聞いた。
アメリカをはじめとする全世界の株価が大暴落し、約10%下落するなかで、多くの経営者や投資家が動揺している。日本もアメリカも世界的に下げが広がり、信用取引で痛手を負った人の話も少なくない。
そんな状況についてDMM創業者・亀山敬司会長に問うと、まず返ってきたのは「うちは全く影響なし」という言葉だった。
「うちは内銘柄というか、今回の関税の対象も多分ないと思うんでね。物品らしいから。なので目先は本当に問題ない」
DMMの主力事業のひとつであるFXもプラットフォーム側のビジネスであり、相場が動けば喜ぶユーザーと悲しむユーザーの両方が出るが、あくまで手数料商売。値動きそのものが業績を直撃する構造ではないという。
リーマンショック時もDMMは基本的に成長を続けてきた。今回も自動車メーカーのような輸出産業が苦境に立つ一方、亀山氏の立場からは「むしろそこの求人が減ったらうちに人が増えるかな、と。自分たちの城を強くする話になる」と語る。
株価下落をきっかけに、亀山氏が気にかけているのは「NISAなどで買った途端に下げの波を受けた人たち」ではなく、それを担保に信用取引で深く突っ込んでしまった層だ。
「長期的なものだから10年ぐらいで見たら別にそんな心配いらないと思う。ただ、信用取引でやっちゃダメよみたいな感じかな」
投資信託として10年20年持つつもりなら問題ない。しかし自分でコントロールできない他人の動きに身を委ねたギャンブル的な動き方は避けるべきだ、というのが亀山氏のスタンスである。
話題はマクロな構造論にも及んだ。アメリカが中国に強硬な関税を打ち出し、中国もメンツを大事にする国であるため簡単には折れない。「100%だ、こっちも100%だ」という応酬が続けば、世界経済全体にとっては良くない事態になる。
そのなかで亀山氏は、日本の立ち位置を比較的フラットに評価する。
「よく日本は外交でどっちにつくんだみたいな批判的な言い方をする人もいるけど、俺からするとある意味その行き方がバランス。どこも仲良く、あんまり揉めないで、和の精神でいきましょうという話で、合理的っちゃ合理的」
アメリカとも中国ともうまく取引する現実主義。経済戦争に巻き込まれない国が相対的に得をするポジションを取れる可能性があるという見立てだ。
また、失われた30年と呼ばれる時期も、日本そのものが大きく劣化したわけではなく、周りの国々が伸びた結果として相対的に貧しく見えるようになっただけ、という捉え方も示した。
亀山氏は現在を「乱世」と表現する。
「グローバルからどんどん自国主義になる流れがある。さらにAIというテクノロジーが起こす乱世もある。完全にぐちゃぐちゃ」
アメリカ国内でもエリート層やリベラル層が混乱し、研究者やワクチン体制までが揺らいでいるという話を耳にする。物価も上がり、iPhoneが30万円台に達するという観測もある。亀山氏はそこから連想を広げる。
「昔は中国人が日本のiPhoneショップに並んで持ち帰っていたけど、今度はアメリカ人が日本旅行ついでに爆買いするのかな、なんて」
安定した社会では、真面目にコツコツ信用を積み、安いところで作って高いところに売ればよかった。しかし前提となるルールがバンと変えられる時代では、変化そのものへの対応力が問われる。
コロナ禍でZoomのようなサービスが急成長したように、乱世にはダメージを受ける側と利得を得る側が必ず生まれる。「何も持っていない側にとっては、むしろ乱世のほうが都合がいい」という指摘も、若い起業家へのエールとして受け取れる内容だった。
では、こうした乱世の中で亀山氏自身はどのように情報を取りに行っているのか。
「最近はYouTubeだね。テレビだと大体同じことしか言ってないじゃん。ニュースを1回見たら、あとは事実だけ。それに合わせて専門家たちが色々喋っているのを聞く」
マクロ経済は専門ではないと前置きしつつ、他者の意見を浴び、自分のミクロな経済判断にどう活かすかを考える。テレビよりもYouTubeやXのような分散型メディアのほうが多角的な視点が得られるというわけだ。
亀山氏は若い頃に個人で株式投資もやってみたが、ほとんど勝てなかったと振り返る。
「やってみたけどあんまりうまくないし、大体損したのよ。チャートを読むとかほとんど勉強してないから、えいやで大体負ける。それなら作る側に回ったほうがいいなと」
そこで得た結論が「自分で稼ぐのと投資は全く違うスキル」という気づきだった。30年ほどかけて理解したという。
IT系の上場企業は社長も多く知り合いだが、だからこそ個別株はやらない。インサイダーと疑われるリスクを避けるためでもある。
現在の亀山氏は、個人としても会社としても個別株は買わず、余資金は解約しやすい投資信託に置く方針だ。
かつて500億円規模の損害を支払ったエピソードに触れ、こう語る。
「すぐ払えてよかったんだけど、よく考えたら、それ自体オルカンとか日経に入れときゃよかったなと。そしたら600分、700分ぐらいになっていたかもしれない」
その反省から会社の余資金は一部をオルカン(オールカントリー)などに入れているという。直近では1ヶ月ほど前にオルカンへ預けた100億円相当を別の投資のために引き出したところ、結果として暴落前にうまく抜けるかたちになったという偶然のエピソードも明かした。
M&Aなどで現金がすぐ必要になる場面に備え、1週間以内に解約できる商品が選好される。これは事業会社のキャッシュ運用としては合理的な姿勢だ。
なお、ファンドへ預けて年5〜10%で運用してもらった経験もあるが、預けられる金額に限界があり、規模が大きくなるとパフォーマンスが落ちる構造があるため、現在は積極的にやっていないという。
孫正義氏のように事業家から投資家へ転じる経営者もいる。一方で亀山氏は、商売をやり続けるパターンを選んできた。
「株は預けるだけじゃない。増えたらちょっと嬉しいけど、減ったらむちゃくちゃ悔しい。でもビジネスは、うまくいったら嬉しいし、失敗したら悔しい。同じバランスが取れてる」
手触り感を持って自分たちで知恵を絞り、汗をかく。社員とのやり取り、人との出会いを伴う商売のほうが、亀山氏の性格には合っているし、何より「生きている感じがする」と笑う。
「もし通貨が上がってシンガポールでカチャカチャやってお金だけ増えても、誰とも出会わないとか、社員とのやり取りもないとか──」
暴落も関税もAIも、亀山氏にとっては流れに逆らわず読むべき風だ。風向きの中で自分たちの城を強くしていく。乱世の経営者像が透けて見える対話だった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


2026/5/5

2025/3/29

2024/12/11

2024/11/7

2026/3/31

2026/3/8