創業10年を迎えた送りバント社が、DMM創業者の亀山敬司氏に「無報酬の社外取締役」と新店舗の資金援助を直談判。お金を貸さない哲学を貫いてきた亀山氏が語る、人間関係とお金の本質とは。
広告会社サイバーエージェント……ではなくサウザンドの子会社として2014年に設立された「送りバント」。10周年を迎えた今、代表の西久保氏と高山氏は、DMM.com創業者である亀山敬司氏のもとを訪れ、ある相談を持ちかけた。
「社外取締役で亀山会長を迎えたいと思っています」
役員2人を含むわずか4人の小さな会社。サブスク型のサービスを持たない受託中心のビジネスモデルで、この先10年を見据えると不安が募る。そこで以前から交流のあった亀山氏に白羽の矢が立った。
社外取締役就任の条件は、報酬なし。半年に1度、温泉地で取締役会と称した親睦会を開く。一見すると亀山氏に何のメリットもないように思えるが、西久保氏は次のように説明する。
「亀山会長が本当に何かあって全くお金がなくなった時に、私と高山、それからサウザンド創業者の岡村さんの3人で合わせて月15万円ぐらいは仕送りします」
さらに高山氏は、個人で営んでいるバーで「タダで飲ませる」というセーフティネットも用意。亀山氏側のメリットは、後ろ盾としての安心感と、いざという時の生活保障という、なんとも逆転した構図である。
話はさらに踏み込んだ依頼へと展開する。高山氏が個人で始めたバーが好調で、送りバントへの問い合わせも生まれるなど事業上のシナジーも出ているという。しかし不動産の都合で移転が必要になり、新店舗の契約に約600万円が必要になった。
そこで提案されたのが、亀山氏に半額の300万円を貸してほしいというもの。見返りとして提示されたのは、チャージ料3,000円の永久無料化だった。
「亀山さんが2人で来られた場合、年間で約22万円分。10年で約44万円分。10年で利回りほぼ100%です」
計算上は損をしない仕組みではあるが、毎日通うわけではない以上、現実的な回収は難しい。それでも西久保氏らは「銀行よりうるさくない人に借りたい」と本音を漏らす。
この依頼に対する亀山氏の答えは明確だった。個人としてお金を貸すことも出資することも、基本的にはしない。
「貸したら人間関係が壊れちゃうから。基本的に返ってこないものだから、あげるつもりみたいな話になる」
過去にも「どうしようもない友達」に貸したことはあるが、それは最初から「あげたつもり」だったという。返済する気のある人ほど申し訳なさで会えなくなり、関係が遠のく。逆に申し訳ないと思わない人間は平気で会いに来る。だからこそ、貸し借りは関係を歪めるというのが亀山氏の持論だ。
会社経営でも同様で、出資をするとしても51%以上の経営権を握る形でないと引き受けないというスタンスを崩さない。
個人での貸付は断られたが、亀山氏は一つの抜け道を示した。
「送りバントから貸してもいいかもね。亀山さんが世話になってくれるんだったら」
つまり社外取締役の件は受ける可能性があり、その立場で会社から会社への貸付という形なら検討の余地があるという含みだ。さらに、提示された条件で「チャージ無料・出資者特典」を打ち出してクラウドファンディングを開けば、共感する人が集まるのではないかというアイデアも飛び出した。
対談の終盤、今後の目標を問われた西久保氏と高山氏の答えは「潰れないように生きていきたい」。これは亀山氏が常々語る価値観と重なるようで、しかし微妙に異なる。
「俺は潰れないように成長を目指したよ。経済的な成長だけが人の幸せじゃないから、音楽を聞いたり映画を見たり、人との繋がりという見えない成長もある」
50以上の事業を抱える亀山氏にとっても、送りバントのような「経済合理性だけで考えれば絶対にやるべきではない事業」を10年続けてきた経験は、特異な位置付けにある。やりたいと言われたからやってみる。その積み重ねが、今回のような独特な相談を生む土壌になっているのかもしれない。
社外取締役の就任、新店舗への融資、人間関係とお金の哲学。一見すると無茶な依頼から始まった対話は、亀山氏の経営観・人生観を引き出す場へと変わっていった。「金は貸さないが、関係は続ける」というスタンスは、長く事業を続けてきた経営者ならではの知恵である。送りバント社のクラウドファンディング案がどう動くのか、続報が気になるところだ。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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