M&A CAMP運営会社の代表が、DMM亀山会長にエクイティ調達の是非を相談。8000万円規模のVC調達を検討する背景と、亀山会長が示した「まずは手元資金で実験し、再現性を見極めてから調達せよ」という現実的な経営判断のロジックを公開する。
M&A CAMPを運営する筆者が、DMM亀山会長に率直な相談を持ちかけた。これまで銀行借入と利益再投資というスタイルで会社を成長させてきたが、考えが変わり、エクイティでの資金調達に踏み切ろうとしているという話だ。
背景にあるのは、メイン事業である動画コンテンツ制作の手応えである。動画を増やせば直接的な売上にすぐつながるわけではないが、密着動画などを増やしたタイミングから成果報酬型の人材紹介事業がうまく回り始めた。「これはスピードを上げてガッとやりたい」と思った時、現預金約2億円・借入約1億円という財務状況のなかで、借りているお金を使うことに怖さを感じた。そこでエクイティ調達という選択肢が浮上したのだという。
筆者が描いているのは、大口1社に依存するのではなく、1000万〜2000万円規模の小口を5名のエンジェル投資家+1社のVCから集め、合計8000万円ほどを調達するイメージ。放出株式は10%以下、初手は2%程度から始めたいという。「自分は考えが変わりやすいことを自覚しているので、大口1社に縛られたくない」という設計思想だ。
IPOやM&Aは最優先ではない。ただし4年後には現事業で約3億円の利益が見込め、同業のPER水準(20〜30倍)から逆算すれば企業価値60億円規模に到達できる可能性があり、セカンダリーマーケットでの売却含めて投資家にリターンを返せる設計を意識しているという。
これに対する亀山会長の反応は、否定でも全面賛成でもない、極めて実務的なものだった。
「デットなら金さえ返せば文句ない。でもエクイティは会社の一部を切り売りすることだから、責任が生じる。それを引き受ける覚悟があるならいいと思うよ」
さらに亀山会長自身は、自分は調達しない側だと明言する。理由はシンプルで、「株主に対して責任を持つことを下げたかった」から。長期的に正しいと思っていることを、株主の反対意見で止めざるを得ない状況を避けたい、という経営観である。仕事をずっと続けたいタイプの経営者にとって、IPOやエクイティ調達は必ずしも最適解ではないという立場だ。
議論の核心は、調達の是非ではなくタイミングの問題に移っていく。亀山会長の問いはこうだ。
「現預金2億円、借入1億円あるんでしょう? それでまずやってみてからでいいんじゃない?」
動画はいつでも本数を絞れる変動費的な投資である。運転資金として2〜3カ月分を残し、残りを動画制作に投下して、月1000万円〜2000万円ペースで実験する。これでうまく回れば「年間8000万〜1億円必要」という根拠ができるし、回らなければそこで撤退できる。固定費で先行投資するベンチャーと違い、動画制作は止めればすぐ赤字を埋められる構造だからだ。
つまり、調達した資金を有効に使えるかどうかが「まだ実験段階」である以上、先に株を放出するより、自己資金で再現性を確認してから調達した方が合理的だ──という指摘である。
もうひとつ、亀山会長が突いたのは組織の再現性という論点だった。
「自分が作るのと、自分の部下が作るのは生産性がどれくらい違うと思う? 優秀なクリエイターが優秀な監督になれるかは、また別問題だから」
筆者は「インターン生でも作れるフォーマットを設計し、試しに10本作ったら伸びた」と手応えを語る。だが亀山会長は、その先の階層──最初に育った社員が、さらに次の社員に教える段階──までを見据える。育成期間の存在、平均的な再現率(経験的に5割程度)、優秀な人材ほど独立してしまうリスク。「人を増やせば動画も増える」という単純な計算では、組織の歩留まりを過小評価することになりかねない。
だからこそ、まず2〜3カ月で2000万円ずつ投じてみて、組織として再現できることを証明してから本格調達に進む方が、説得力もバリュエーションも上がる、というのが亀山会長の助言だ。
筆者は自身を「赤字が嫌いすぎる」と表現した。動画投資で一時的に債務超過になることに強い抵抗があり、銀行とのやり取りに最適化された結果、利益を出して税金を払って借入枠を確保する思考に凝り固まっていたという。
亀山会長はここでも視点の切り替えを促す。新規事業はそもそもスタートが赤字になるのが普通であり、動画は資産的な性格を持つ投資である。VCは投資段階の赤字を前提に判断するため、銀行的な「黒字至上主義」とは評価軸が違う。実際、Amazonをはじめ赤字上場した企業は珍しくない。LTVが伸びる構造を説明できれば、赤字は問題にならない。
また、税務上は経費処理しつつ、自社の管理会計上は資産として捉えるなど、会計の二面性をうまく使い分ける視点も提示された。「会計は基本。めちゃくちゃ大事」という亀山会長の言葉が印象的だ。
亀山会長は、調達後に起こりがちなシナリオも共有した。市場環境が変われば、VCから「広告を減らして黒字化してほしい」と要請が入ることがある。経営者として伸ばしたいのに、追加投資の意思決定権が事実上VCに移ってしまうケースだ。最終的にM&Aを選択せざるを得なくなり、ダウンラウンドで売却するパターンも珍しくない。
つまり、エクイティ調達は「成長を加速する翼」であると同時に、「未来の選択肢を縛る契約」でもある。だからこそ、覚悟が要るという話に戻ってくる。
議論の終盤、亀山会長は実務面の助言にも踏み込んだ。
- スタートアップが最も弱いのは数字回りと資金繰りである
- 入金日と支払日を数日ずらすだけで、必要運転資金は大きく変わる
- 固定費(社員人件費)と変動費(動画・広告)を切り分け、最悪時にどこまで削れるかを設計しておく
- 万が一に備え、変動費をゼロにすれば持ちこたえられる構造にしておく
筆者の会社にCFOがいないことが話題になり、財務状況を客観的に見てくれる存在の必要性も指摘された。
相談の結論として、筆者は「同時進行」という方針を打ち出した。調達のメドを立てつつ、まずは手元資金で月2000万円規模の動画投資を実験し、再現性が確認できた段階で本格的に調達に進む。万が一実験が失敗しても、変動費はゼロまで絞り込めるため、会社が破綻するリスクは低い。
「ここまでできています」と実績を見せたうえで調達すれば、バリュエーションは10億から15億〜20億へと跳ね上がる可能性がある。同じ5%放出でも、調達額が倍になる計算だ。
亀山会長の最後のメッセージは、覚悟と冷静さの両方を促すものだった。「やるからには責任を背負わないといけないし、戻りにくくなる。でも、いろいろ考えたうえでやるのは全然いいと思う」。エクイティ調達という選択肢を、感情ではなく合理性で選び取るための一夜の対話だった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです。
