DMM.com会長・亀山敬司氏が語る、仕事と人生のバランス論。M&A戦略から旅の効用、家庭と仕事の向き合い方まで、野心を持ちすぎないことが結果的に成功を呼ぶ理由を語る。
DMM.comはM&Aによって事業を拡大してきた企業として知られる。亀山会長は、買収判断のスタイルについてこう語る。
「うちが買う時、100%買うっていうケースもある。それはさっきの巻き取れるケースだね。買って、もし経営者が抜けたとしても、こことこうくっつけたら例えば同じ業種でうちが2位で1位と2位があったら、買ったら市場が増えるからっていうのは巻き取りやすいからっていうのがあるよね」
一方、経営者の専門知識が不可欠で、まだ成長中の事業については「2段階エグジット」という手法を採る。
「最初は50%強買いましょうと。3年間の間にここまで数字行ったら、残りはこれだけの金額で買うよみたいなパターン。3年後に売って終わるパターンもあれば、全部うまくいかなくて終わって、買った分の損害だけで済むパターンもある」
企業家側がDMMに売却するメリットは意思決定の速さだという。「ダメなものはその日にダメっていうから。検討しますっていうよりも、どっちかというとそれが多いかな」と亀山氏は語る。
DMMは非上場企業であるが、亀山氏が第一線を退いた後の運営についても話題が及んだ。
「経営的なことは何者かに分けても、それぞれやっていけるので、その責任者を全部引き受けるみたいな感じになるだろう」
株式の扱いについては、すでに具体的な動きを始めている。
「とりあえず今の段階だと持株会を始めた。俺がもう死んでも、いくらかその権利が残るようにしとくぐらいは第一としてやってみた。株を上げて、いつでも社内で売れるようにしているので、社員に還元することはとりあえずスタートしたって感じ」
どこまで規模を広げるか、誰にどれだけ株を持たせるかは、まだ構想中だという。
亀山氏が繰り返し語るのが「旅をして良かった」という言葉だ。なぜそれほど旅を重視するのか。
「仕事なんて所詮人生の何割かでしかない。仕事自体って野望がないとできないんだけど、野望が強すぎても良くないのよ。ちょっと冷めた目で『初戦、仕事』『初戦、金』だと思ってないと、あんまりそこに執着しすぎると正常な判断ができなくなる」
野望が強すぎるあまり、無理な融資を受けて倒産する企業も少なくない。さらに、仮にうまくいったとしても、家庭がボロボロで友達もいない寂しい人生を送るケースもある。
「トータル的に見た時に、まずどういう人生を生きたいかを決めた上で、その上で仕事として何をするかぐらい。あんまガツガツ行き過ぎない方が、結果的に仕事もうまくいくし人生もうまくいく」
ずっと仕事ばかりしていると、自分の立ち位置が分からなくなる。だからこそ、距離を置く時間が必要だと亀山氏は説く。
「日本から離れた方が日本が見えるとか、会社から離れた時に見えるもんがある。1ヶ月間旅してても会社は回ってるから、ちょっとはやっぱりしなきゃいけないんだ、こいつらにとかって思う。何のために稼ぐのか、お金を得た後にお金で何を得たいのか。ちょっと一人にしといた方が、あとあと後悔しない」
結婚後も4年に1回ほどは長期で旅に出てきたという。旅先では「ジャスト亀山として、ありのままの俺がどう見られるか」を体感する。学生たちと出会えば「孤独な親父が旅してる」として声をかけてもらえる。それは自分自身を見つめ直す貴重な機会になる。
会社ではトップとして意見が通っても、家庭ではそうはいかない。教育方針で意見がずれた時、亀山氏はどう対処しているのか。
「ちょっと違うけど揉めるぐらいなら、ベランダ行ってタバコ吸って、子供にとっちゃ夫婦仲いい方がいいよねと思うと、じゃあ俺の方針とちょっと違うけど、そっちの意見聞いとこうみたいな。ちょうど真ん中ぐらいの教育方針になる」
この「ベランダで一服」は、いわば3分間の小さな旅。一旦距離を置いて客観視することで、衝突を避けながら最適解に近づける。
話は次第に、人間の本質的な欲求へと向かう。
「とにかく金だけ増やそう、規模だけでかくしようって思ってると、高い車買えたとか、でっかい別荘作ったって言っても、そこ建てて誰も来なかったら、めっちゃ寂しい別荘になる。結局、尊敬されたい、愛されたい。そのために金がいるとか会社が必要だと思うと、手段としてそれはありなんだろうけど」
亀山氏自身が求めているものを問うと、こう答えた。
「『モテたい』みたいなことを考えてるかな。同性にも異性にもモテたい。会いたいと思う人に会いたいと思われないっていうのは辛い」
犬を飼うのも、社員の面倒を見るのも、本質的には同じだという。
「面倒見て、良くなるとか、喜んでもらえるのは楽しい。人はやっぱり必要とされるってことが満たされるとこがあるんじゃないの」
最後に、会社を成長させたいと願う若手経営者へのアドバイスを求めると、亀山氏は短くこう答えた。
「何のために成長させたいか。まず旅に行ってきな」
仕事を「初戦、仕事」と俯瞰できる距離感を持つこと。野心と人生のバランスを取り、人間関係という財産を失わないこと。亀山氏の語る経営論は、数字や戦略の前に、まず自分自身の人生をどう生きたいかを問い直す原点回帰のメッセージだった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
