「仕事の人間として27歳まで全力投球、その後10年は家庭に振り切る」という極端な人生計画を相談した女性起業家に対し、DMM亀山会長が語った経営と人生のリアル。属人性を排した事業づくり、ファイア生活の落とし穴、パートナー選びの本質まで、計画通りにいかない人生をどう設計するかのヒントが詰まった対話。
本記事は、DMM.com会長・亀山敬司氏が若手女性起業家からの人生相談に答える対話形式の企画。今回のテーマは「経営とプライベートの両立」だ。
相談者はこう切り出した。
「自分の人生の中で、会社を頑張る時期と、プライベートを頑張る時期を分けたいとずっと思っています。3年から5年のスパンで会社を作っては売り、休んで、また頑張る気持ちになったら次の会社をやる、というサイクルを考えています」
背景にあるのは、似た事業領域や少し先を行く女性起業家たちを見てきた中での実感だという。仕事で成功してもプライベートを両立させるのは難しそうで、「企業で成功することが自分の人生の幸せと一致するのか」と疑問を持ち始めたのだ。
外で成長を求めながら、家に帰って誰かと歩幅を合わせて安定を作る——この2つの能力を同時期に持つのは難しい。だからこそ「27歳までは仕事に100%、28歳から10年は家庭、その後また仕事に10年」と、人生のフェーズを分けたいと考えているという。
この計画に対し、亀山氏はまず売却の現実から指摘する。
「27歳で売却するというけど、それがうまくいくかは難しい。仮に1000万円の利益が出ているとして、2000万円で買おうという人がいたら売る?売らないよね。1億なら悩む。2億なら売る。だいたい10倍あたりが迷いどころ」
通常のM&Aでは利益の5年〜10年分が相場。下限で見れば「1000万円の利益が5000万円で売れる」というイメージだ。
しかし問題はここからだった。亀山氏は核心を突く。
「1000万円の利益が出ているのに、なぜ総代理店がつかないのか。それは、君が今みたいに頑張っているほど、『君が抜ける』前提の会社では値段がつかないから」
相談者が現場で奔走している間は利益が出ても、本人が抜けた瞬間に1000万円が赤字に転落する可能性がある。つまりそれは事業の利益ではなく、本人の「労働対価」に過ぎない、という指摘だ。
「君並みの仕事をする人を探したら『1500万円ください』と言われる。利益はゼロになる」
相談者は「現場から離れて片手間で経営する状況が想像できない。これをやめないと、ここから離れられないと思い込んでいるかもしれない」と認めた。
亀山氏はファイアの本質をこう語る。
「本当にファイアしたい時は、自分が抜けても回る組織を作ること。『私がいなくても実質この子がやっているので心配ありません。彼女に500万円払えば1000万円の利益が残ります』と言える状態にする。そうすれば10倍で買い手がつくかもしれない」
「人に頼っているビジネスはダメ。誰がやっても回る、というのが売却モデルなんだ」
相談者は「亀山さんも両立されてきましたよね?」と問いかける。
「俺は両立してきたつもり。安定的に領土を守って、家族と一緒にいよう、という感じでバランスを取ってきた。君みたいに気合い入れてやってないから」
ゆるふわで大きくなった、と笑う亀山氏。もちろん頑張ってはいたが、「遊びの部分を逆に減らしすぎない」「家族との時間は守る」というスタンスを貫いてきた。
「家族があったから経営にプラスだったかというと、経営上は必要なかったかもしれない。でも人生においては必要だったと思う。会社経営なんて極論AIでもできる時代。誰も愛さずに金だけ稼ぐ人生もありだけど、それを優先して子供を諦めた経営者も多い」
相談者は「会社をやっている限り、ゆるやかな緊張がずっとある。今この瞬間も誰かの給料が発生している。本当の意味で自由になれない」と漏らす。
それに対し亀山氏は自身の若い頃の体験を語った。
「20歳ぐらいの頃、露店で100万円ほど貯めてアメリカから南米までずっと旅した。途中でアルバイトはしたけど基本は消費。半年もすると、もう仕事したくてしょうがなくなる」
「消費だけの人生は、人間相当きつい。社会のために何もしていない、創造的なものを生み出していない、という感覚にぶつかる。今ファイアと言っている人たちも、1年もすれば『戻りたい』となるはず」
そのうえで亀山氏は、相談者の計画にも修正を提案する。
「27歳で売却して10年遊んでから戻ろうとしても、37歳になった時にはスキルが通用しなくなっている可能性もある。人間、そんな単純に『今日からファイア、明日から仕事』と切り替えられるものでもない」
話題はパートナー選びにも及んだ。亀山氏の出会いは「カフェでアルバイトしていた子と偶然」だったという。
仕事のフェーズが変わるスピードに、パートナーがついてこられるかについてはこう語る。
「俺は仕事はしてきたけど、家での態度はあまり変わっていない。生活が派手になることもなかった。家内は俺がいくら持っているかもよくわかっていない。子供たちもニュースで盗難額を見て『お父さんそんなに持ってたんだ』と驚くくらい」
つまり、仕事や財産を家庭に持ち込まなかったこと。亀山氏自身が変わらなかったことが、結果的に家庭の安定につながっているという見立てだ。
対話の終盤、亀山氏はこう締めくくった。
「予定はふわっとあっていい。でもそれまでにいい人と出会って恋をしちゃってもいい。仕事が今まで100だったのが8割になっても、まあいいかと思える方向にどんどん変わっていっていい」
「いきなり『誰もいらない、私はずっと彼といる』となるかもしれない。それが楽しければいい」
相談者の「人生プラン」は、売却・結婚・恋愛と外的要因の変数が多すぎる。一方、事業の方が変数は少ない——そんな気づきを得て、対話は「まずは仕事を頑張り、困ったらまた相談」という形で締めくくられた。
計画通りにいかないのが経営であり、人生でもある。極端な切り分けではなく、ゆるやかな緊張感を保ちながら、出会いと変化を受け入れていく。それが亀山流の両立術なのかもしれない。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
