DMM創業者・亀山敬司氏が語る、家族・教育・コンプレックスとの向き合い方。夫婦が揉めないことを最優先にした子育て論、愛人を持たない理由、そして経営者がコンプレックスをエネルギーに変える先にある「本物の自信」とは。
「僕まだ子供いないんですけど、数年後とかに欲しいなと思って」——そう切り出した若手起業家に対し、DMM.com創業者の亀山敬司会長は「すぐ作ればいい」と笑う。アフリカ行きや一人旅など自由を謳歌したい時期と、家庭を持つタイミング。多くの20代後半の経営者が直面するこのテーマから、対談は家族論・教育論・コンプレックス論へと広がっていった。
亀山会長が娘の教育で最も大切にしたのは、意外にも教育内容そのものではなかった。
東京では「シリーズ(私立進学)の方が良い」という声が周囲から出てくる。奥さんと亀山会長で意見が分かれることもあったという。亀山会長自身は「いろんな人間がごちゃごちゃいる学校の方がいい」という考えだったが、最終的には奥さんの方針を採用した。
「夫婦で揉めてるのが一番良くない。どっちが正解かなんて、はっきり分からないよね」
子供にとってコントロールできない最大のストレスは、親の不仲や喧嘩である。教育論は永遠にぶつかるテーマだからこそ、夫婦の関係性を優先する——これが亀山流の結論だった。
具体的に心がけたことは、極めてシンプルだった。
- 嘘をついたときなど、叱るときはきちんと叱る
- ただし感情的に怒らない
- 謝ったら、抱きしめる
感情的に怒り続けてしまうと、子供は「自分は愛されているのか」と疑問を持つようになる。だからこそ、叱った後のフォローを欠かさない。「愛されているかどうか」が子供にとって最も重要だという信念が貫かれている。
仕事で多忙な経営者ほど陥りがちなのが、子供との時間不足だ。亀山会長はこう語る。
「結局、お金を渡してほったらかしも、お金を渡さないでほったらかしも、どっちもダメ。子供にとっては、いかに時間を使ってくれるかが一番大事な気がする」
夜は仕事で遅くなるため、朝の送りを担当し、土日はとにかく家にいるようにした。年に1回ほどは1ヶ月の旅に出ることもあったが、その分は他で埋める。仕事・家庭・自分のやりたいことのバランスは、誰にとっても永遠の課題である。
話題は経営者の私生活にも及んだ。徳川家康や渋沢栄一など、歴史上の権力者には複数の妻子がいたイメージがある。しかし亀山会長は明言する。
「隠し子もいないし、愛人を持ちたいと思ったこともない。たまに可愛い子に目移りすることはあるかもしれないけど、それは権力者やお金持ちに対する偏見じゃない?」
イーロン・マスク氏のように「自分の遺伝子を多く残したい」と公言する人物もいるが、それは少数派だという見方だ。
対談の後半は、経営者に多いコンプレックスの話題へ。幼少期に親から愛されなかった、いじめられた、馬鹿にされた——そうした経験をエネルギーに頑張り続ける経営者は少なくない。
亀山会長自身も、学生時代は「のけ者」のような扱いを受けたことがあり、勉強もできず、内申点も低かったという。しかし、そこで諦めなかった。
「ここで勝負しても活用がないと思って、大原簿記に行った。1から勝負できる場所に変えた。今ならAIみたいなもので、苦手なところで勝負しようとせず、土俵を変えればいい」
別の場所で自信を持てれば、元のコンプレックスは「大したもんじゃなかった」と思えるようになる。
しかし、ビジネスで成功してもコンプレックスが収まらず、ずっと焦り続けている経営者もいる。その違いは何か。
亀山会長の答えは明快だった。
「自分の裸の状態で戦わない人は、満たされない。お金や肩書きで持てようとすると、もっと早く持てるけど、嘘っぽい持て方になる。お金を使わずに持てたら本物っぽいじゃない」
キャバクラでお金をばら撒けば一時的にモテるかもしれない。しかし本当に欲しいのは「本物」だからこそ、あえて使わない。寄付など別の行動に振り向ける方が、人として尊敬される。亀山会長が一人旅を続け、社長という肩書きを名乗らないのも、この価値観の表れだ。
イーロン・マスクや孫正義と比べて「負けているかも」と思ったとき、別の尺度を持っていれば救われる。
「Tシャツ一枚で道を歩いていても持てたい——それが俺の中のかっこいい像だった」
ビジネスの規模だけで自分を測ると、上には上がいて一生終わらない。だからこそ、自分なりの「かっこいい像」を持ち、それに惹かれてくれる人と出会う。一つの武器だけで戦わない姿勢こそが、コンプレックスから自由になる道なのかもしれない。
亀山会長の家族論・教育論を貫くのは、「愛情を示し、時間を使い、夫婦仲を保つ」というシンプルな原則だった。そして個人としては、肩書きやお金に頼らず「裸の自分」で勝負する姿勢。
小さい頃に受けた愛情は、その後の人生を長く支える。経営者として成功を追い求める前に、まず自分の家族とどう向き合うか——亀山流の答えは、多くの起業家にとって参考になるはずだ。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです
