学生時代に創業したブランディングエンジニア(現2ストーンズホールディングス)を10年で急成長させた高原氏。ピボットによる組織崩壊から第二創業、ホールディングス経営、M&Aで重視するポイントまで、若手経営者に向けた経営論を語った。
2ストーンズホールディングス代表の高原氏は平成3年生まれ、長野県出身。2013年に共同創業者の川端氏とともにブランディングエンジニアを設立し、現在ちょうど創業10周年を迎えた。創業時から一貫してITエンジニア領域の事業を展開し、現在は企業とITフリーランスエンジニアをつなぐマッチング事業が柱となっている。
そのキャリアの起点は中高生時代にさかのぼる。父親がカメラマンで自宅にMacがあった環境からプログラミングに触れ、ブラウザゲームを自作して友人と遊ぶうちに「Webで人を呼べる」と気づいた。掲示板サービスを立ち上げて月間100〜200万PVを集めるまでになり、収益化のためアフィリエイトに踏み出したのは中学1年生のときだったという。
大学時代も海外ファンドが手がける漫画アプリ事業でエンジニアとして働いたり、資格検定事業に関わったりと、当時としては当たり前だった「インターン費を払って働く」スタイルでビジネスの基礎を磨いていった。
意外にも、高原氏は元々就職するつもりだった。組織をどうドライブしていくかが分からず、それを学ぶために就職という選択肢を真剣に検討していたという。
創業メンバーは高原氏、川端氏、CTO、CFOの4人。全員が一度は就職を決めかけていたが、すでに売上は1億円弱に達していた。「就職して学ぶか、いま起業して伸ばすか」で意見が割れ、3ヶ月にわたる議論の末、最終的に高原氏と川端氏、そしてもう1人のメンバーの3人で起業を決断。残る1人は就職組として別の道を歩んだ。
会社が本格的に動き出したのは2014〜2015年頃。しかしその後、ブランディングエンジニアは大きなピボットを経験する。当初の受託開発事業を捨て、エンジニアの価値向上というビジョンの「ど真ん中」の事業へ舵を切ったのだ。
結果、組織には激震が走った。インターン中心の30人規模だった組織は、最終的に高原氏、川端氏、そして高校時代から共に活動していた1人の3人にまで縮小。CTOも離脱した。
「ベンチャーショックのように一気に流れが起きて、本当に最後3人になった」と高原氏は振り返る。売上もゼロにリセットされ、2期目の後半には半年ほど月商0円が続いた時期もあった。それでも3期目から新事業が軌道に乗り、創業から11期連続で増収を実現してきた。
このタイミングでVCからの初の資金調達を実施。創業時から決めていたIPOへの道筋もこのときから本格化していく。
3人になった会社で、まず取り組んだのは仲間集めだった。最初の取締役となる新事業責任者は、オフィスを貸してくれていた知人経由で偶然出会った人物。しかも以前、まったく同じ事業を経験していたという奇跡的な巡り合わせだった。
そこから初期メンバー7〜8人が揃い、30人規模になるまでは主にリファラル採用で広げていった。高原氏と川端氏は「優秀そうな人がいたらとりあえず飯に行く」を習慣化し、目的のないランチやお茶を日々の予定に組み込んでいたという。
口説き文句はシンプルだった。「創業メンバーになりましょう」。実際、ピボット後を「第二創業」と本気で位置づけており、ストックオプションの設計も含めて創業メンバーとして扱っていた。
初期は3段ベッドが6つ並ぶ部屋で230人がほぼ住み込みで働き、月に1回しか帰宅しないような生活を送っていた時期もある。「同じ釜の飯どころかパオロも一緒に使う」生活の中で、「争いごとも本質的なものしか起きない」状態が組織文化の土台になったという。仕事も遊びも全力で行う「ワークハードプレイハード」の風土が、自然と根づいていった。
短期間で急成長した最大の要因について、高原氏は「ドンピシャの要因はない」と前置きしつつ、「当たり前のことをいかにやり切るか」を挙げる。
遅刻しない、連絡をすぐ返す──そうした当たり前の行動を全員が徹底し、意思決定においては「楽な短期意思決定は絶対にしない」を貫く。創業から一貫してこの方針を続けてきたことが、気づけば高い場所へ登っていた要因だと語る。
役員間の関係性についてもユニークな表現で説明する。「同じ方向を向いて進軍するというよりも、エンジンを組んでお互い背中を向けて違うところに攻撃し合っているイメージ」。攻めと守りを固定せず、お互いに信頼し合って360度の戦いができる関係を理想としている。
川端氏とはCEO(高原氏)とCOO(川端氏)として役割分担しているが、中学・高校で別グループにいた人間性の違いが、互いに「自分が考えないことを考えてくれる」信頼につながっていると語る。
ここ3〜4年で時価総額が大きく伸びている要因について、高原氏は「ホールディングス経営をかなりアグレッシブにやっている」点を挙げる。同業の会社にグループインしてもらうだけでなく、新規事業のためのタレント買収的なジョインも積極的に進めている。
M&Aの買い手として見るポイントは、大きく分けて「代表の人間性」と「事業の持続性/ダウンサイドリスク」の2つ。
直近ジョインしたmiraシステムズの代表とは7〜8年前から交流があり、「最終的にエンジニアの価値を上げていく」「業界の負を壊す」というスタンスが完全に一致していたという。エンジニアにとって良いプロダクトと会社をつくるという根本姿勢が共通していれば、2ストーンズが持つアセットを活用してレバレッジをかけていく話もスムーズに進む。事前のスタンスのズレは後々の歪みにつながるため、入口での価値観の確認を非常に重視している。
買収後に創業者が活躍し続けるケースは少ないという課題に対しても、高原氏は明確な考えを持っている。
ロックアップ期間(2〜3年)で抜けるかどうかは結果次第とした上で、入口の段階で「この事業をどこまで伸ばすか」「2ストーンズホールディングスとしてどれだけの資金とアセットを当てて、あなたのイメージの何倍のレバレッジをかけるか」を徹底的にすり合わせる。
事業を進めればズレや読み違えは必ず発生する。重要なのは、それを「いかに早く要素分解して打ち手を打つか」。ところが感情が邪魔をして、認めたくない指標から目をそらしたり、見たくない事実を無視したりすると、徐々にズレが拡大していく。
そこで高原氏が徹底しているのは「経済合理性で解決すべき部分」と「感情で解決すべき部分」を事前に明確に握っておくこと。本来経済合理性で判断すべきことを感情でやったり、その逆をやったりすると、組織は確実にバグるという。
人材業界では売上3億円前後で伸び悩む企業が多いという問いに対して、高原氏は「大枠は時間軸の問題」と答える。
「いま2〜3億の会社も10年経てば7〜8億にはなる。でも10年後7億じゃ嫌ですよね。だったら、いかにその時間軸を早めるかしかない」
その上で重要なのは、施策の中の「ストック性」を意識すること。一瞬で消える施策ではなく、ストック化・アセット化していく施策を選ぶべきだと語る。仮に成長率が20%から30%に上がるだけでも、複利の効果で目標到達までの時間は半分近くに縮まる。だからこそ、20%成長で終わってしまう打ち手より、27%でも翌期も27%を維持できる打ち手のほうが価値が高い。
そして時間軸を早めるためには投資が不可欠であり、資金調達の選択肢として株式放出も「めちゃめちゃアリ」と語る。高原氏自身、過去最大の後悔として「3〜4期目に広告に1億円突っ込むと決めていたのに、心の中でビビってしまい3,000万円までしか踏み込めなかった」エピソードを挙げる。VCからの調達でもそれだけのビビリが出たのだから、銀行借入だけでは赤字を掘る投資すらできなかっただろうと振り返る。
「絶対に成功する確信があるところにしか張らない、をやり続けると、お金は使えなくなる」。当時の自分を「確実性が少しでも欠落すると踏み込めないタイプ」と自己認知したことも、その後の意思決定に活きているという。
最後に、売上1億〜5億規模の若手経営者へのアドバイスとして高原氏が語ったのは、改めて「時間軸の話」だった。
「日本の大企業は何年もやってきて強い。短期勝負ではあの会社には勝てない。時間軸を味方につけているところと戦うなら、こちらも時間軸を味方につけるしかない」
また、SAM(獲得可能市場)の取り方も重要だという。市場を絞れば勝ちやすくなる一方、「小さくまとまってしまうリスク」が極めて高い。
2ストーンズ自身、初期の受託開発で1億の売上を作ってしまったがゆえに、本来ピボットすべきものを大きく悩んだ経験がある。一定の売上があると捨てにくくなる──これをリスクと捉え、長い時間軸で見て早期に意思決定できるか、市場とエリアを変えられるかが鍵だと語る。
2ストーンズホールディングスは現在、ITエンジニア領域(SES、エンジニア派遣、ITコンサルティング)でのグループインに加え、省人化・省力化やDXといった大きなテーマで連携できる企業との対話を積極的に進めている。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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