元HKT48・モテクリエイターのゆうこす(菅本裕子)が、ライバーマネジメント事務所321(サニー)の経営者として抱える悩みを、DMM.com亀山敬司会長に相談。数字への苦手意識、経営者としての色の出し方、生配信業界の未来について語り合った対談を再構成。
M&A CAMPのオンラインサロン公開収録に登場したのは、モテクリエイターとして知られるゆうこす(菅本裕子)氏。HKT48を卒業後、YouTuberという言葉も一般的でなかった時代から発信活動を始め、ライブ配信が日本に広がってきたタイミングでこの新しい職業に可能性を感じたという。
「インフルエンサーやYouTuberとライバーは同じように見られがちですが、全く別物。フォロワー数がゼロでも成り立つ仕事だと思いました」
7年前に立ち上げたライバーマネジメント事務所「321(サニー)」は、所属者数1万5,000人を超える規模に拡大。タレント業を続けながら経営者としても活動し、売上規模は20億円台に達している。今回ゆうこす氏が、DMM.com亀山敬司会長に持ち込んだ相談は3つだった。
「すごく数字に弱くて、読めないままで行きたいんですけど、いいでしょうか」
ゆうこす氏の最初の相談はストレートだった。会社のお金まわりは、幼なじみのマネージャーや親戚がトリプルチェックで管理しており、自分は報告を受けてビジョンや方向性を決める役割に徹しているという。株主構成も、ゆうこす氏本人と父親、親友らで固められている。
亀山会長の答えはシンプルだった。
「信用できる人がいて、その人たちが数字に詳しいなら、それでいいんじゃない?」
亀山会長自身も「数字、つまり商売的な数字を見るのは得意だけど、エンジニアはできないし、経営者は何でもできなくていい」と語る。クリエイター出身の経営者にはむしろあるあるの悩みだという。
ただし、釘を刺すことも忘れない。株式の大半をゆうこす氏が保有している以上、最終的な意思決定権限は本人にある。だからこそ、調子が良い時ほど周囲の意見に耳を傾ける必要があると指摘した。
「ミュージシャンでもクリエイターでも、調子いい時は気が大きくなりやすい。そういう時にこそ、お父さんや親戚の人の言うことを聞いて『ここまでにしておこう』とブレーキをかけられるかが大事」
ゆうこす氏は素直に「謙虚に言うことを聞いていきます」と応じた。
話は321の独自ビジネスモデルにも及んだ。一般的なライバー事務所は所属ライバーから数十パーセントの手数料を取るのが通例だが、321はライバーから1円も手数料を取らない仕組みで運営している。
ゆうこす氏が説明した仕組みはこうだ。各ライブ配信アプリ(DeNAなど)と直接交渉し、「事務所が所属ライバーをサポートすることで継続率を高め、長期的にアプリ側にも利益をもたらす」という形で、アプリ側からの上乗せ売上を事務所収益とする構造。
「DMをめっちゃ送って斡旋し、ライバーから何パーセントも引き抜いて、あとはM&Aしますという事務所も多い。利益率は高く見えるけど、それだとライバーが続けたくなる業界にならない」
ライバーが「やめたくなくならない環境作り」に先行投資するために、雑誌制作や球場貸切イベント、アイドルグループ結成などの施策にコストを投じてきた。その結果、現在ライバー1位の地位を維持しているという。
なお亀山会長は対談のなかで、DMMもまもなくライバー事業に「100社目」として参入予定であることを明かした。プラットフォームはTikTokを想定しているという。
2つ目の相談は、ブランディングについて。広告にゆうこす氏自身を出すと「タレントがやってる事務所」と見られがちで、地方の男性層など新規顧客が入りにくい。一方で、ゆうこす氏自身はタレント活動も続けたい。
「もっともっと色を抜きたいけど、私はタレントもやりたい」
亀山会長の提案は明快だった。
「6:4くらいまでなら、ゆうこすを使った方がいい。ただし会社の顔として出る時は、モテキャラを減らして、ちゃんと働いてますという面を全面に出す。多面体で行くしかない」
選挙に出馬した元グラビアタレントが、政治の現場では別キャラで支持を得た例を引き合いに出し、TPOに合わせてキャラクターを切り替える戦略を勧めた。
さらに、ゆうこす氏が「営業に自分が行くだけで契約が決まることがある」とタレント兼業のメリットも明かすと、亀山会長は自身の漫画アイコン化になぞらえて「経営の時はアイコン化する」というアイデアも提示。VTuber的な経営者キャラクターという新しい方向性が話題に上った。
3つ目は業界の未来予測。亀山会長はDMMで26年前にライブチャットを開始した先駆者でもある。
「みんなが応援したいから投げ銭する、お金がもらえなくてもコメントを書きたいという文化は、俺らの時代からすると意外と想像外だった」
そのうえで亀山会長は、業界の進化方向を3つ示した。
ひとつは「スナック化」。YouTuberが何万人を相手にする一方、ライブコマースは5〜10人規模で対話できる、より親密な関係性へ向かう流れ。AKB48が握手会で築いた「身近な存在」の延長線上にある変化だ。
ふたつめはAI化。VTuber/バーチャルライバーが既に普及しつつあるが、亀山会長は「AIが不倫や炎上をしてリアル感を持ってくる」「ヒカルAIみたいなのが出てきて、それでまたフォロワーが増える」レベルまで進化する可能性を示唆した。
三つめがショート動画とライブコマースの融合。「60過ぎのおっちゃんでさえ、長い動画が見られなくなってショートばかり見ている。脳がアドレナリンや報酬を欲しがるように毒されていく」
ゆうこす氏が10万フォロワー時代に韓国買い付けの生配信×EC販売を試したエピソードに対しては、亀山会長は「Amazonでよくない?と言われがちだが、リアルタイムで人から買う体験には不可価値がある」と評価しつつ、TikTok Shopなどの本格普及を待っている段階だと語った。
対談を通じて浮かび上がったのは、ふたつのアプローチの違いだった。
ゆうこす氏の321は、主婦でもおじさんでも若い子でも、ライバーになりたい一人ひとりにチャンスを提供する「ライバーを育てる事務所」。
対する亀山会長のDMMは、AIチームや新規事業チームに権限を与えて挑戦させ、業界そのものを育てるアプローチ。「業界が育った先で、ゆうこすと戦う人間が出てくる。キングダムでいう桓騎みたいな」と笑った。
対談の最後、ゆうこす氏が手書きのフリップに記した今日の学びは「調子に乗らず謙虚に周りの意見を聞く」。
数字が読めなくても、信頼できる仲間と先行投資の哲学があれば、毎月右肩上がりに伸び続ける事業は作れる。一方で権限を握る以上、独走しないためのブレーキを意識的に持つこと。タレント業と経営の両立は、キャラクターを使い分ける「多面体経営」で成立させる──。
元アイドル経営者と業界の先輩のあいだで交わされた、率直で実用的な経営対話だった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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