U-NEXT HOLDINGS代表・宇野康秀氏が、経営の醍醐味、孤独との向き合い方、仲間づくりの哲学、リスクの取り方までを語る。社員との対話形式で明かされる、創業から30年を経た経営者のリアルな思考法。
M&A CAMPでは、U-NEXT HOLDINGS代表の宇野康秀氏に再びインタビューを行った。前回は事業戦略など具体的な話を中心に伺ったが、今回は経営者として目指す姿や、孤独との向き合い方といった内面の部分を深掘りする。後半ではU-NEXT HOLDINGSの社員約30名にも参加してもらい、現場のリアルな質問に宇野氏が答える形式となった。
冒頭、宇野氏は経営の楽しさについてこう語る。「経営者と言っても、楽しみ方はタイプによって違うと思います。私の場合は、自分たちがやりたい事業・やるべき事業を作って、それが広がっていって世の中を変えていく、それを見ているのが楽しい。生きている意義を感じる。その手法としての経営なんです」。
仲間と同じ目標に向かって取り組めることも経営の醍醐味のひとつだという。一方でU-NEXT FILMSなどコンテンツ制作については、「個人としての作品作り」と位置づけ、経営とは別軸の活動と整理している。
宇野氏はトライアスロン日本代表経験者であり、海外登山も嗜む。「やる以上ちゃんと達成したい。途中で逃げ出すのが嫌なんです。登山も登り始めたら頂上まで行きたい。挫折するのが悔しい。意思の問題が大きいので、仕事系においても同じかもしれません」。
ただし子どもの頃から何でも徹底的にやり切るタイプだったわけではないという。「自分で経営者としてやるんだ、経営を通じてどういう事業をやるんだ、というところには自分の信念・強い意思が入り込むので、一旦入り込んだものに対しては絶対完成させるという感じですね」。
「経営者は孤独」とよく言われるが、宇野氏の実感は少し違う。「ありがたいことに社員やその他周りの人たちも普通に付き合ってくれていて、阻害感を感じずに仕事ができています。長い経営人生の中で調子のいい時も厳しい時もありますが、どういう時もいい時も悪い時も一緒に戦おうという形の仲間作りができていた。だから孤独は分からなかったですね」。
その源流は、学生時代に出会った4人で起業した創業期にある。新しいメンバーが加わるたびに、相互に信頼関係を築く努力を重ねてきた。会社が大きくなった現在は、自分と同じ感覚・同じイズムを持つ人だけで固めるのではなく、多様性との「うまい融合・バランス」を意識しているという。
宇野氏は大阪・道頓堀で生まれ育ち、商売をする親戚も多かった。「あそこのお店倒産したわよ」「あの人はくくった」といった話を子どもの頃から見聞きして育ったため、「経営はそんなに楽なことじゃない」というベースが自然と身についていたという。
「本当にひどい場面が来ても、ああこれか、と。俺の人生の中でもこの厳しい局面が来たな、というふうに捉えることができる面もありました。それを楽しんでいる面もあって、ずっと登り調子よりはやっぱりこう苦難があって、それを乗り越えたみたいな、自分の人生ストーリーの中で映画ドラマのようにストーリーを作れるんです」。
性格は基本的にポジティブだが、意思決定では悲観的シナリオも冷静に見立てる。「投資判断では7割方は楽観的に考えますが、残りの悲観的なシナリオは現実的に考えます。悲観的な要素・リスク要素を見つけ出すことについては自分は長けていると思っています。3割しか見ていなくても、その3割の精度が高ければ、なんとなくうまくいくことの方が多いかなと」。
社員からの「仲間づくりで最も重要視していることは何か」という質問に、宇野氏はこう答えた。「まずビジョンの共有が第一。そしてもうひとつ大事なのは、ちゃんと実績で示していくこと。経営リーダーが『こうなろうぜ』と言い続けても、いつまでもそうならなければ信用を失っていく。細かいことでも『こうなろうぜ』『できました』を繰り返していくと、本当にやる人なんだなという信用性が積み上がっていく」。
そのエピソードとして、創業期に「朝9時の定時に集まろう」と決めた際、宇野氏自身が絶対に遅れないと決めて行動し続けたことで、メンバーが自然と時間を守るようになったという話を披露した。「単純に時間を守ろうという話なんですけど、反復していくと信頼性になっていく。有言実行が大事なような気はします」。
インテリジェンス(現パーソルキャリア)創業当時の採用について、宇野氏は「基本的には口説いていました」と語る。新卒向け説明会は年100回ほど自ら登壇し、面接も自分で行った。
「優秀な学生さんは大手の銀行や商社の内定をもらっている。それを蹴ってインテリジェンスに来いという口説きですから、簡単ではありません。時間をかけて、自分の考え方・絶対成功するという確信を伝える。大企業で偉くなるよりベンチャーで会社自体が大きくなる方が可能性が高い、レールに敷かれた人生に違和感を持っている人の不安をどう潰していくか、という話を真剣にしていました」。
親が反対していると聞けば、親元まで会いに行って説得することもあったという。サイバーエージェントの藤田晋氏をはじめ、インテリジェンス出身で上場企業を率いる経営者は多い。藤田氏は「宇野さんでも社長やれるんだったら、僕もできる気がする」と語っていたという。「会社で寝泊まりして、モゾモゾ起きてくる、泥くさく一生懸命頑張っているお兄ちゃん、というイメージだったんでしょうね」と宇野氏は笑う。
働き方は時代に合わせて変えるべき、と宇野氏は言う。一方で「事業のこと、会社のことに対してどれだけの熱量・時間をかけて考えているかは最大化させないと競争に負ける」とも。
「同じ8時間働いても、寝る直前まで事業のことを考えている人と、終わったら忘れている人とでは全然違う。24時間近く事業のことを考えるという意味では、それは今の時代も必要だと思います」。
組織が大きくなっても、社員に求めることは創業期と大きく変わらないという。年200人以上の新卒採用がある現在も、「会社を頑張って良くすれば自分にとってもいいことなんだ、という自分の頑張りと環境改善が対峙するのではなく一緒だよね、という感覚をどう持ってもらえるかを意識しています」。
後半は社員からの質問に宇野氏が答えるパートとなった。
**リスクの取り方について**、宇野氏は「リスクの及ぶ範囲」と「起こる可能性」を冷静に算定することが重要だと述べる。「失敗したら明日から会社が潰れるならリスクが低くてもやるべきではない。1億円の損失と言っても、信用問題などで想定を超えて広がる可能性もある。一方で、何でもリスクと言えば何もできなくなる。1%のリスクなら起こらないと考える、起きたら運が悪いと開き直る、その判断が必要です」。
**運について**は、「自分は運がいい」と考えるようにしているという。「運の良し悪しは平等に訪れるもの。トランプでもいいカードと悪いカードが来る。短期的に見すぎず、悪いカードの時は『たまたまその時期だ』と捉え、次にいいカードが来た時に戦える準備をする。それが運をコントロールすることだと思います」。
**令和に新社会人として生まれ変わるとしたら**、「世の中が変わっていく姿を想定して、そこに携わっていきたい。AI、インバウンド、世界情勢、エネルギー、社会的課題――今ワクワクするものを探してやるでしょうね。社会が変化するタイミングはチャンスもやりがいもあって楽しい。令和はラッキーな時代、希望に満ちています」。
**メンター**は具体的な人物ではなく、松下幸之助氏など昭和の経営者の本だったという。思い悩むと今でも読み直すそうだ。
**配属で集まった新規事業メンバーをどう引っ張るか**という問いには、「『アメ』なんですよね」と答える。「無理やり配属された人にとって最初はアメがない。だから将来こうなるという未来を語って、それを信じてもらえるかどうかしかない。それでも信じてついてこられないなら、メンバーを変えてもらった方がいいと思います」。
**外国人材事業で顧客に受け入れられない**という相談には、「U-NEXTの映像配信も最初は『広がるわけがない』と言われた」と自身の経験を引き合いに出した。「10年前は『日本に外国人観光客を増やしたら犯罪が増える』と言われていた。実際はインバウンドの経済効果の方が大きかった。最初ネガティブに思われていたことは、実際起こってみればそんなことはなかった、と進んでいくもの。信じて、断られて当たり前と思って、へこたれずに頑張ってください」。
**未経験の困難な仕事への向き合い方**について。「困難な課題がやってくるのはいいこと。成長のチャンスです。会社は莫大な費用をかけてシステム導入する、それは自分にクレイジーなトレーニング機会を作ってくれているということ。ニューヨーク留学費を会社が出してくれるのと同じで、ラッキーだと考えるかどうかは考え方次第です」。
会社としての目標は明確だ。「グループを1兆円企業サイズにして、日本を代表する企業グループとして明確な位置づけにしたい。U-NEXT HOLDINGSは社会の課題解決に対してちゃんと未来を見据えてやっているな、と思われるグループになりたい」。
個人の夢は、と問われると「実はあまりなくて、自分がやりたかったことはやり尽くしたんです」と答えた宇野氏。今は趣味の旅行を楽しんでおり、特に「田舎町のスナックに突撃して、地元の人たちとカラオケする」ことに達成感を覚えるという。「最初は一見さんお断りの空気があるんですけど、どういう曲を入れたら馴染むかなと考えながら歌って、しばらくすると話しかけてもらえる。打ち解ける時の達成感がすごく楽しい」。新規事業で初受注を取る感覚に近いのだそうだ。
最後に、若手ビジネスパーソンと若手経営者へのメッセージを求められた宇野氏はこう締めくくった。
「こういう動画を見ている人は意識が高い人だと思いますが、意識が高いままにしないでほしい。1日も早く実行することが1日も早い成功につながる。ひとつ成功すれば次の目標ができる。それを繰り返していくと、今自分がイメージしている以上に可能性が広がる。高い意識を、意識ではなく行動に変えてください」。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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