「住んだ日数分だけの家賃でいい」という日本初のリレントモデルで急成長する不動産テック企業ユニット。シリーズDで70億円のバリュエーションをつけた近藤氏が、DMM亀山会長に15年で運用総額1兆円という野望をプレゼン。ロマンと利益の狭間で交わされた熱い議論を再構成する。
株式会社ユニット代表の近藤氏(30歳)は、創業6年目で運用総額800億円規模まで成長させた不動産スタートアップを率いている。21歳で起業し、最初の不動産事業を1億円調達後に7000万円で事業売却。25歳から始めた現在の事業で、業界に新しい波を起こしている。
同社が手掛けるのは、SaaSや不動産テックといった言葉では収まらない、物件運営そのものを行う珍しいスタートアップだ。コア技術は「リレント」と呼ばれるビジネスモデル特許で、家賃を「月額固定」ではなく「住んだ日数分だけ」支払う仕組みを実現している。
例えば月のうち10日しか帰らない単身赴任のビジネスマンは、10日分の家賃だけ支払えばよい。部屋には鍵付きロッカーが備え付けられ、家具家電もすべて完備。ホテルライクな暮らし方ができる住まいとして、現在全国で約130棟、1500室規模を運営している。
アセットは一切自社保有していない。東急不動産や三井不動産といった大手デベロッパー約30社と協業し、彼らが保有する物件の運営を請け負う形をとる。同時に、自社でスーモのようなオンラインプラットフォームを保有し、入居希望者の集客まで一気通貫で行う、OMO(Online Merges with Offline)型のモデルだ。
ユーザー層は、普段は大阪在住で東京に出張する単身赴任者や、海外在住で年に数カ月だけ日本に滞在する外国人ビジネスマンが中心。会員数は約8万人に達し、その6割が国内ビジネスマン、15%が外国人の長期滞在者となっている。経営者のセカンドハウス需要も少なくない。
物件ごとに最低利用日数(おおむね10〜15日)が設定されており、利用者がアプリで「リレント申請」を行うと、空いている期間が自動でAirbnbやBooking.comに在庫として出品される仕組みだ。清掃員のマッチングもUber Eatsのような独自アプリで自動化されており、清掃・宿泊・賃貸という3種類の利用者を同時に回す複雑なオペレーションを、テクノロジーで成立させている。
ビジネスモデルの肝は、ユニットエコノミクスにある。例えば相場月10万円の物件は、家具家電・光熱費込みで18万円程度として貸し出される。ここに民泊運用による上乗せが加わり、合計売上は約25万円——通常賃貸の2.5倍規模になる。
清掃費等を控除しても、固定家賃モデルなら5〜7万円が直接利益として残り、オーナーとのレベニューシェアモデルでも2〜3万円のストック収入が積み上がる。Airbnbの損益分岐点は稼働率20〜30%だが、東京の平均稼働率は80%に達するため、分岐点超過分はそのまま収益として上乗せされる。
130棟のうち100棟が東京、残りも札幌・京都・大阪・福岡・名古屋・沖縄といった大都市圏に集中。稼働率の高いエリアでこそ成立するモデルだ。
シード、シリーズA、B、C、Dと毎年資金調達を重ね、バリュエーションは3億円から6億、12億、25億、そして現在の70億円まで階段状に伸びてきた。直近では香港の投資家と100億円規模の不動産ファンドも組成している。
近藤氏が掲げる目標は「15年で運用総額1兆円」。アパホテルが50年かけて築いた規模を、15年で達成しようという野心的なビジョンだ。アパホテルのように物件を自社保有する道では時間がかかりすぎるため、テクノロジーを活用して「全部やる」戦略をとっている。
具体的には、(1)大手デベロッパーとの協業による直営運営、(2)2026年2月から開始したOS事業(他社向けにオペレーションシステムを提供するB2B2C型サービス、すでに大手7社と契約)、(3)自社ファンドによる物件取得——この3軸を同時に展開する構想だ。
プレゼンを受けたDMM亀山会長は、近藤氏の戦略に率直な疑問を投げかけた。「3方向から集めて1兆円を作ろうとしているが、利益率を最大化したいなら他社にシステム提供せず、直接自分たちで不動産を抑えにいったほうが、10年後の利益は大きいのではないか」。
亀山会長の論点は明快だ。OS事業は確かに事業規模を勝手に拡大してくれるが、利益率は半分程度に落ちる。一方で、自社ファンドを通じた直営運営は利益率が最も高い。1兆円という規模感そのものは「ロマン」あるいは「見栄」であり、実質的な利益額を最大化する戦い方を選ぶべきではないか、という指摘である。
「ロマンと言うなら見栄だよ」と亀山会長。これに対し近藤氏は「2050年の暮らしの多様化はチャンスで、シェアハウスのような新しい暮らしの文化を作りたい」と応じ、利益よりもロマンを追う姿勢を貫いた。
亀山会長は別の角度からも提案した。「自己資金を入れず、ファンドで100%集めて運営報酬5%を取る形にすれば、リスクを取らずに規模を最大化できる」。仮にIRRが30%出れば、5%の運営報酬を払っても投資家には十分なリターンが残る計算だ。
これに対し近藤氏は、香港ファンドと組成中のスキームのIRRが極めて高いことを明かし、「4桁前半(数千万〜1億円規模)の資産を持つ富裕層からのエクイティ出資をターゲットにしている」と回答。不動産クラウドファンディングのセキュリティトークンとは別の、エクイティ投資家層を開拓している段階だという。
近藤氏自身が想定する出口は2通り。1つはOS事業に振り切り「不動産業界の新しい稼ぎ方を支えるシステム企業」として上場するシナリオ。もう1つは、自社運用ファンドを抱えながら、大手不動産グループの傘下に入りM&Aによってイグジットするシナリオである。
亀山会長の最終的なバリューアップ評価は「100億円」。「知らんけど」と言いながらも、ロマンチストの経営者が描く1兆円の世界に一定の評価を与えた回となった。
※本記事はYouTube動画を元に編集部で再構成したものです


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